「八海山」の造り手として名高い、八海醸造。その本社がある新潟県魚沼地方は、言わずと知れた豪雪地帯です。冬になれば、人の背丈よりも高く雪が降り積もり、視界を真っ白に覆います。時には災害のきっかけにもなってしまう厄介物ですが、先人たちはこの雪と上手に付き合っていこうと、知恵を出し合ってきました。

その試行錯誤の末にできた文化のひとつが、“天然の冷蔵庫”とも呼ばれる「雪室(ゆきむろ)」です。文字通り雪を利用した食料貯蔵庫で、冷蔵庫のなかった時代より野菜などの食料の保存に活用されてきました。

八海醸造では先日、そんな“雪室”を活用した、とっておきのお酒を新たにリリースしました。

SAKETIMESが八海醸造の真髄に迫る特別連載、第3回では新商品「純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」の魅力を余すところなくご紹介します。

雪国の智恵「雪室」で日本酒を熟成

「純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」は文字通り、雪室の中で熟成させた純米吟醸酒です。八海醸造はこの新たな商品を生み出すために巨大な雪室を作りました。2013年の完成から毎年お酒を貯蔵していき、今年に初めて商品として世に送り出されたのです。

雪室には、食品を雪の中に直接埋めて冷やす「かまくら型」と、もともとある建物の室内に雪を貯蔵することで空間自体を冷やす「氷室型」の2種類があります。八海醸造が建造した「八海山雪室」は後者の氷室型で、庫内に約1000トンもの雪を貯蔵できる大きな施設です。雪と同じ空間に貯蔵タンクを設けることで、お酒を低温熟成させるのです。

hakkaisan_story_003_01「八海山雪室」の外観

hakkaisan_story_003_03「八海山雪室」の内部。人と比べると、雪量の多さが一目瞭然

さらに雪中貯蔵庫の隣には、カフェや酒の直売所、地元魚沼に息づく米・麹・発酵食文化を伝える「千年こうじや」、キッチン雑貨店などが併設されており、雪国の文化を肌で感じながら、魚沼ならではの食との出会いを楽しむことができます。

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雪室で熟成することのメリット

雪室貯蔵の最大の特徴は、その室温です。雪室の庫内は、電気エネルギーを使うことなく年間を通して3〜5℃ほどの温度で安定して推移します。ほかの貯蔵方法と比較すると、温度変化は圧倒的に少ないそうです。日本酒は常温で長期間貯蔵すると香りや味わいが崩れてしまうと敬遠されてきましたが、雪室の安定した低温環境により長期熟成が可能となり、そこでじっくりと寝かせることで特有のまろやかな味わいに仕上がりました。

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熟成のさせ方はもちろん、熟成させる酒の質にも妥協を許しません。常時造っているレギュラー製品を使用するのではなく、雪室貯蔵用にオリジナルの酒を仕込んでいます。長く貯蔵しても味や香りのバランスが崩れないように、最適な米を選定しているとのこと。この新商品の開発を担った製造部・田中勉さんは「ずっと同じものだけを造っていては、会社の成長につながらない。だからこそ、昔の知恵や文化を大事に継承ながら、常に新しいチャレンジをしていく必要があります。今回の雪室貯蔵の酒は、定番シリーズとは一味違った深みを楽しんでいただけるはずです」と、意気込みを語ります。

「純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」の味わいは

満を持してリリースされた「純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」。気になる味を確かめるべく、6月某日に八海醸造の主催で行われた「旬の食材と八海山を味わう会」に参加してきました!

hakkaisan_story_003_06イベント冒頭で挨拶する八海醸造の南雲二郎社長

会場では魚沼の旬をあしらった料理と共に、八海醸造イチオシの酒が振る舞われました。

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hakkaisan_story_003_09ウェルカムドリンクとして振る舞われた泉ビール

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地元・魚沼地方の食材を使った料理も絶品!

この日は八海醸造が新たに開発した3つの新商品がお披露目されました。

ひとつは、“少数精鋭で最高品質の酒を造る”ために2014年に整備された「浩和蔵」で仕込まれた「八海山 純米大吟醸 浩和蔵仕込」。もうひとつは、米を原料に清酒酵母と黄麹を使って三段仕込みで醸造した本格米焼酎をオーク樽で熟成させた焼酎「八海山本格米焼酎 オーク樽貯蔵 風媒花(ふうばいか)」。

そして「純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」です。

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その味はと言うと……まずは一口。生原酒のような重厚感はありながらも、まったくカドのないまろやかな口当たりです。そして、口に含んでから時間差で香りが開き、ゆっくりと鼻に抜けていきます。のどを通る度に、じんわりと存在感を増していく風味――その穏やかで強かな味の変化は、環境変動の少ない雪室貯蔵だからこそ引き出せたのだろうな、と感じました。

 

「純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」は現在、全国の取り扱い店舗にて発売中です。しんしんと積もる雪をモチーフにした純白のビンは、夏の晩酌を涼しげにアレンジしてくれることでしょう。ぜひ一度、ご賞味あれ。

(取材・文/西山武志)

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