飲食激戦区・銀座で、多くの日本酒好きから注目を集めているお店「銀座ナラシバ」。日本酒というと、まだまだ和食との組み合わせが多いイメージですが、ここ銀座ナラシバでは、クリームやバターを使った"フレンチと日本酒のマリアージュ"を提案し続けているんです。
そんなナラシバのラインアップに加えられているのが、茨城県にある創業10年目の若き酒蔵・日立酒造の「Any.」。
前回の記事では、「Any.」が誕生するまでの物語や、銘柄に込められた思いをご紹介しました。今回は「銀座ナラシバ」の店主・高橋秀征さんから、「Any.」の魅力を教えていただきましょう。
"和食には日本酒" "フレンチにはワイン"という先入観を覆す
「やるなら銀座で勝負しなさい」
「銀座ナラシバ」の店主・高橋さんが銀座にお店を出したのは、独立を相談していた人から言われたこの言葉がきっかけだったのだそう。
以来、和食とフレンチ、どちらの造詣も深いシェフが生み出す"和フレンチ"と、それに合わせた日本酒を提供してきました。"和食には日本酒" "フレンチにはワイン"という先入観を覆すような新しい体験ができるお店として、日本酒ファンの間で注目されています。
「フレンチのシェフには、3つのパターンがあると聞いたことがあります。海外でフレンチを勉強した海外の人、海外で勉強した日本人、そして日本で勉強した日本人。うちのシェフは最後のパターンですね。和食に触れる機会も多かったからこそ、ガチガチの正統派ではなく、和のテイストが強いフレンチを提供できるんです」と高橋さん。
メニューは基本的に、完全なおまかせスタイル。全6品のフルコース(税込 12,960円)には前菜が4品、肉と魚のダブルメイン料理が付き、最後には秘密のデザートも。料理に合わせた日本酒が1品ごとに提供され、料理と日本酒のペアリングを楽しむことができます。お酒が苦手な人にも楽しんでもらえるように、料理4品のみのコース(税込 5,180円)も用意されているのだとか。
「4品のコースでも、この料理にお酒を合わせてほしいというご要望があれば、お応えいたします。コース料理の内容は、その時々によって変わるので、来てからのお楽しみですね」
オープン当初は女性のお客さんが多かったようですが、現在は男性のお客さんも増えています。料理のみのコースなど、気軽に選べるバリエーションを増やしたことで、お客さんの幅が大きく広がったため、デートや記念日に利用する方も多いのだとか。
「8名まで入れる個室があるので、接待の席で日本酒好きの方を連れてくる方も多いですね。接待される側の方が気に入ってくださり、その方が別のお客さんを接待するときに利用してくださることもありますよ」と、お店の人気の秘密を教えてくれました。
日本酒選びのポイントは、酸と香り
ひとつひとつの料理にこだわりの日本酒を合わせる「銀座ナラシバ」。"和フレンチ"に寄り添う日本酒はどのように選んでいるのでしょう。
「メインにするのは、基本的に酸のあるお酒ですね。以前は『獺祭』や『八海山』など、誰でも知っているお酒はやめておこうと思っていた時期もありました。その結果、ちょっと奇をてらったようなラインアップになってしまったんです。今も昔も酸があるお酒をチョイスしている事は変わりないのですが、当初はよっぽどお酒が好きな方でないと知らない銘柄ばかりで、日本酒を飲んでいると言うよりも『酸があるお酒』という印象だけが強く残ってしまっていたように感じます。
最近では少し意識が変わりまして、マニアックな銘柄に加えて、『伯楽星』や『澤屋まつもと』など、日本酒ファンの間で人気のあるお酒も置くようにしています。これらの銘柄があることで、日本酒をもっと身近に感じていただきたいと思っています」
「また、吟醸香があまり強くない、純米酒を中心に選ぶようにしています。香りが強く、味覚を疲れさせてしまうお酒は、乾杯にはぴったりですが、ペアリングを考えると難しいことが多いですね」と、お酒選びのこだわりを語ってくれました。
ちなみに、開店当初からずっと扱っているお酒は秋田・新政酒造の「亜麻猫」と「陽乃鳥」だそう。
「これらは間違いないですよね。美味しいのがわかっているので、ついつい出したくなってしまいます。新しい発見も大切にしたいのですが...…このふたつは特別です。悔しいですね(笑)」
クラウドファンディングで出会った「Any.」
そんなナラシバが取り扱っている日本酒のひとつに、クラウドファンディングで出会った「Any.」がありました。
「変わったデザインのボトルに目を惹かれて、おもしろいことをやっているなと思ったのを覚えています。クラウドファンディングのリターンに陶器の升がついていて、それがかわいかったので試しに購入したんです」
クラウドファンディングで日本酒を買うのは、このときが初めてだったのだとか。購入のきっかけは、「いつでも、どこでも、楽しめる」というコンセプトを体現した、どんな場にも溶け込める透明感のあるデザインだったようです。では、お酒そのものの味わいについてはどのように感じたのでしょう。
「甘みの奥に酸味が感じられ、常温に近づくほど生酛らしさが出てきます。アルコール度数が低めなので、生酛特有の味わいが苦手な人でも飲みやすいお酒だと思いました。チーズにもイカの肝和えにも合わせられたので、和洋どちらの料理にも対応できますね。そういう意味では、コンセプト通り、『いつでも、どこでも、楽しめる』お酒でしょう」
高橋さんが「Any.」に対して抱いたイメージは、太陽がさんさんと降り注ぐ中のピクニック。和食よりも、サンドイッチが思い浮かぶのだそう。他にも、「Any.」とペアリングするならどんな料理がおすすめか教えてもらいました。
「合わせる料理はしっかりとした味付けのものが良いと思います。お店で提供したことのある料理で考えると、ロックフォールを混ぜたジャガイモのピューレや、塩のみで味付けをしたカツレツ、根菜類を醤油やお酒、味淋で炊いたごった煮などが良さそうですね。肉の脂にも合いそうなので、フォアグラも良いかもしれません。
もちろん、きどった料理でなくても大丈夫。チェダーなどの固いチーズや、珍味のソフトたらなど、料理がお酒に負けないような、インパクトのあるものがおすすめですね」
目指すのは、自然体で満足できるお酒
日立酒造で「Any.」の営業を担当している加藤さんは、「ナラシバは『Any.』のコンセプトに共感していただいているお店」と話していました。
「『Any.』のコンセプトにも通じる、自然や素を大切にし、普遍的であることの魅力を理解していただいています。『Any.』が目指しているのは、個性の強い嗜好品ではなく、"これでいい"と自然体で満足できるお酒。そんな、日常に寄りそう日本酒を表現していただいているなと思います」
高橋さんも「Any.」の今後の展開に期待を寄せているのだそう。
「『Any.』は料理の味を際立たせることができるお酒。今はしっかりとした味わいがメインですが、食事の前半にも飲める軽快なお酒も造ってほしいですね。期待しています」
「料理のジャンルを問わず、お店こだわりの逸品をより美味しく食べていただけるように『Any.』を飲んでもらえたらうれしいですね」と語る加藤さんの思いは、ナラシバにしっかり届いているようです。
日本酒の奥深い魅力を教えてくれる「銀座ナラシバ」。苦手だと思っていた味わいのお酒が、ペアリングの力で美味しく感じられることも少なくないのだそう。そんな驚きを提供し続けるため、日々新しい挑戦を続けています。和フレンチと日本酒のペアリングで、新しい日本酒体験ができますよ。
(取材・文/ミノシマタカコ)
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