スーパーやコンビニでも手に入る日本酒といえば、紙パックに入ったいわゆる"パック酒"ですよね。気軽に購入できるのはもちろん、価格も瓶詰めのお酒よりリーズナブルなため、毎日の晩酌や大人数が集まる酒席でコスパの良さを発揮。国内の有名酒造メーカーからさまざまなパック酒が発売されています。

ですが、一般的には「日本酒といえば一升瓶」というイメージが根強く、「日本酒は好きだけどパック酒はあまり飲まない」「どのパック酒も同じようなものでは?」と思う人も多いかもしれません。ところが、改めて注目してみると、"パック酒"にもさまざまな個性があることがわかりました。

パック酒はどれも同じ?比較して見えてきた"米と米麹だけ"の純米酒

※すべて900ml。表記はそれぞれの商品の記載内容ママ

上の表は、神奈川県内のスーパーで販売されていたパック酒の中から無作為に5種類を選んで購入し、スペックを一覧にまとめたもの。購入額はいずれも600~700円前後で、大きな差はありません。

ところが原材料に注目してみると、それぞれはっきりとした違いが見えてきました。日本酒づくりに欠かせない米や米麹の他に、醸造アルコール、糖類、酸味料などの副原料を使用している「普通酒」が大半であることがわかります。

しかし、パック酒Aは今回購入したパック酒の中で唯一、米と米麹のみを使用した「純米酒」。一般的に普通酒と比べてコストが高くなる純米酒ですが、パック酒Aは他のB~Eと同じ価格帯で購入することができました。

このパック酒Aの正体は、兵庫県神戸市灘区に蔵を構える沢の鶴株式会社の「米だけの酒」。その名の通り、米と米麹以外に副原料を一切使用しておらず、"パック酒=普通酒"、"純米酒=値段が高い"という概念を覆した商品といえます。

「米だけの酒」とは、どんなお酒なのか?そして、沢の鶴はパック入りの純米酒を展開することにどんな狙いがあるのか?

兵庫県神戸市、多くの酒蔵や酒造メーカーが軒を連ねる灘五郷にある、沢の鶴株式会社の本社を訪ねました。

食中酒として食卓を彩る「米だけの酒」シリーズ

沢の鶴は、今年創業300周年を迎える老舗の酒造メーカー。1717(享保2)年に米屋の副業として創業して以来、純米酒を中心にこだわりの日本酒を造り続けてきました。

看板商品のひとつである「米だけの酒」は、1998年に発売を開始してから、今年で20年目。パック酒とは思えない質の高い日本酒が楽しめると人気に火がつき、現在国内で生産される純米酒の中でも売上トップを誇る大ヒット商品です。すっきりした飲み口のなかに米の旨味がしっかりと感じられるため、夏は冷やして、冬は燗で、一年中楽しむことができるでしょう。

「沢の鶴が造るお酒は食中酒。"飲み飽きせず、食事の味を引き立てるお酒を醸す"ことを絶えず意識しています。特に『米だけの酒』は日常的に楽しめる"ワンランク上のパック酒"を目指して生まれました」

そう話してくれたのは、沢の鶴の取締役・製造部部長の西向賞雄(にしむかいたかお)さん。西向さんは若手社員の頃に「米だけの酒」の開発に携わり、現在は「総杜氏代行」として酒造りの総指揮を執っています。

沢の鶴では他にも、アルコール度数を低めに抑えた「米だけの酒 旨みそのまま10.5」や、季節限定の「米だけの酒 生酛造り生貯蔵」などの商品を展開。「旨みそのまま10.5」は、日本酒が長年抱えてきた、"アルコール度数が高くて飲みづらい"という課題を麹の量を増やすことで解決した画期的な商品です。

「お客様の『アルコール度数の低いものを飲みたい』という声は以前からいただいていたので、開発に踏み切りました。麹を増やしつつも味のバランスは崩さず、旨みを保ったまま10.5度までアルコール度数を下げるのには試行錯誤しましたね」

「米だけの酒」を購入する人の多くが、食や健康への関心が高い主婦層。晩酌のお酒を選ぶとき、原材料が米と米麹だけという点に惹かれる人が多いようです。「どこの米を使っているんですか?」などの、産地に関する問い合わせも少なくありません。

利便性の高いパック酒。コミュニケーションツールとしての役割も

ところで、瓶詰めが一般的な日本酒を紙パックに詰めることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

「一番は利便性の高さです。四合瓶や一升瓶を買って、自宅で飲んだ後、瓶を処理するのはなかなか大変。特別な日のお酒としてたまに飲むなら瓶でもいいのですが、日常的に飲むお酒として考えると、やはり紙パックの方が現代の生活環境にマッチしているのではないでしょうか」

また、品質保持の面でも紙パックが一役買っているのだそう。パックそのものが遮光性に優れているので、品質劣化の心配が少ないのです。

さらに、パック酒にはコミュニケーションツールとして活用できる一面もあるのだとか。

「昔は酒屋で店頭に並んだお酒を見ながら『こんなお酒が飲みたいんだけど』『それなら今日は良いお酒が入りましたよ』と会話をしながら売っていましたが、スーパーやコンビニでそれはできませんよね。瓶の場合、ラベルを貼るスペースが限られているので、情報量も必要最低限になってしまいます。ところが紙パックは4面もあるので、品質、こだわり、おいしさの秘密...など、商品の特徴をわかりやすく伝えることができる。これもパック酒ならではの魅力だと思います」

たしかに、冒頭で購入したA~Eのパック酒すべてに、お酒の特徴やおすすめの飲用温度帯など、メーカーからのメッセージが記載されていました。パック酒を選ぶときは、裏面や側面に書かれている内容もじっくり読んでみると、より身近に感じられるかもしれません。

「おいしい」という体験でパック酒のマイナスイメージを変えていく

利便性や品質保持の観点からも優れたパック酒。しかし一方で、"安かろう悪かろう"の先入観からなかなか手を伸ばしにくいと考える人がいることも事実でしょう。地酒ブームの影響もあってか、大手メーカーが手掛けるパック酒が軽視されがちな現状について、どのように捉えているのでしょうか?

「パック酒を飲んだことがなく、固定観念で『パック酒なんておいしくないに決まっている』と思い込んでいる人は、同業者の中にもいますね。でも、一度でいいからうちのパック酒を飲んでみてと勧めると『あれ、おいしいお酒出してるやん』と反応が変わるんですよ。最初はマイナスイメージでも、実際に飲んでもらえればおいしさは伝わります。『米だけの酒』もそういう体験を通じて人気が出てきたお酒ですから」

パック酒に良いイメージを持っていない人に対し、西向さんが自信を持って「米だけの酒」を勧めることができるのは、商品のおいしさだけでなく、そこに込められた強い思いがあるからでしょう。次回は「米だけの酒」が生まれた経緯やこだわりを探り、その魅力をさらに深堀りしていきます。

(取材・文/芳賀直美)

sponsored by 沢の鶴株式会社