こんにちは。内藤醸造にて清酒『木曽三川』の製造と販売をしております、SAKETIMESライターのしゅんです。
今回は、海外における日本酒市場について調べてみたのでご報告させていただきたいと思います。
以前お伝えさせていただきましたが日本では清酒の消費状況は減少傾向にあります。
しかし海外では和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり日本酒の消費が拡大しているようです。
この記事では日本酒が現在、
1, 海外でどれくらい売れてきているのか
2, またどの国への出荷が多いのか
3, どういった商品が売れているのか
以上3点に焦点を当ててお話をさせていただきたき、最後に私の意見を少しばかり伝えていけたらと思います。
海外でどれくらい日本酒が売れてきているのか
実際に日本酒が海外で人気がでているかを調べるために、直近5年間の海外への移出数量について調べてみました
【輸出数量】
平成22年度13,770kl
平成23年度14,022kl (前年比約2%増加)
平成24年度14,131kl (前年比約1%増加)
平成25年度16,202kl (前年比約15%増加)
平成26年度16,316kl (前年比約1%増加)
(出典:国税庁資料『酒類の輸出統計』)
過去5年において日本酒は徐々にですが毎年輸出数量を伸ばしていることが分かりますね。
特にユネスコ(国連教育科学文化機関)が「和食 日本の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録した平成25年度においては伸び率が高いです。しかしその翌年にも輸出数量の減少がみられないことから、日本酒が海外において一時的なブームで飲まれているわけではないということも期待できそうです。
どの国への出荷が多いのか
輸出数量が毎年増えていることが分かりましたので、次に日本酒がどういった国に出荷をしているのかを調べてみました。
平成26年度において輸出金額の上位からランキング付けをしていくと
1位アメリカ
2位香港
3位韓国
4位中国
5位台湾
6位シンガポール
7位カナダ
8位オーストラリア
9位イギリス
10位タイ
となります。
私が意外だと思ったのは2位の香港と3位の韓国への輸出の多さでした。韓国の人口は約5千万人、香港は人口7百万人ほどです。
13億人以上もいる中国よりも輸出金額が多いことに驚きですよね。
理由としては、香港については日本食が大人気であり高級スーパーでの日本酒の品揃えに関しては日本を超える店舗も中にはあるということ、韓国については普通酒が居酒屋などで手頃な価格で飲むことができ食卓に日本酒が浸透していることなどがあげられるようです。
どういった商品が人気なのか
ここで日本酒の輸出金額の推移を見てみたいと思います。
平成22年度8,500百万(85億円)
平成23年度8,776百万 (87億7千6百万)(前年比約3%増加)
平成24年度8,946百万(89億4千6百万)(前年比約2%増加)
平成25年度10,524百万 (105億2千4百万)(前年比約18%増加)
平成26年度11,507百万 (115億7百万)(前年比約9%増加)
先ほどあげた日本酒の海外への輸出数量と見比べてほしいのですが、輸出金額の伸びが輸出数量よりも大きいことが分かるかと思います。海外ではやはり高級酒としての日本酒を求める傾向があり、値段が高いお酒でも気にせず買う人が多いようです。
銘柄については、各国においてもちろん違いはあるのですが、やはり大手の日本酒が多いようです。しかし最近になり中小の蔵元のお酒についても市場に出回るようになってきており、実際に私の蔵についても少量ながら海外の方へ飲んでいただく機会が出てまいりました。
以上、日本酒ブームと言われる中の海外においての日本酒市場の現状についてお伝えさせていただきました。みなさんはどんな印象を受けられましたでしょうか。海外でも日本酒の人気が高まっているのだなと思われた方も多いかもしれませんね。
地方の蔵人として働く私としても、自分達が醸したお酒が国を超えて飲んでもらう機会が増えたことは大変喜ばしいことです。
しかし、そうだからこそ時折、私は歯がゆい気持ちになることがあります。それは地方蔵人の宿命かもしれませんが、人手と資金についてです。
今、大手の蔵元さんについては実際に海外へお酒を持って商談をしたり、また最近では現地に駐在員を設けたりしているところが増えています。
それを聞くと私は、『自分も、お酒を現地の人に飲んでもらいたい。売り込みがしたい!』といつも思います。しかしどうしても人手や資金の面で難しい部分が出てきます。とてもつらいですし、日本全国には私のような悩みを抱える蔵元は多いかと思います。
そこで皆さんに1つお願いがあります。
それは、自分が飲んでおいしいと思ったお酒をどんどん海外の友人や知りあいに伝えてあげてほしいのです。
そんなことで何が変わるの?とおっしゃる方も多いかもしれませんが、私としてはそれが海外における日本酒売場の発展としてとても大きな一歩だと思うのです。今海外において日本酒を買う人は、どのお酒が美味しいのかという情報について知らない方が大勢のようです。
ですから売り場に並んでいるお酒を見てなんとなく気に入ったお酒を買うといった方も多いようです。しかしそういった方が皆さんの意見をもとにして、このお酒が飲んでみたいと思うようになるとどうなるでしょうか。このお酒を飲みたいという選択肢がお客さんに生まれれば、海外における日本酒売場もより良い方向に発展していくのではないでしょうか。
以上が私の思いとなります。
この先も日本酒がブームではなく海外の食文化として浸透し、そしていつか自分が醸したお酒を世界中の人に飲んでいただけたら造り手としては最高の思いです。
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