季節を問わず、いつ食べても美味しいアイスクリーム。そんなアイスと相性の良い日本酒があります。それは「熟成酒」です。
そもそも「熟成酒」とはどういったお酒なのでしょうか。
アイスクリームに合う日本酒「熟成酒」とは
「熟成酒」に明確な規定は設けられていません。清酒製造業界では、酒造年度内に造られた日本酒を「新酒」というのに対して、前年度に造られたものはすべて「熟成酒」や「古酒」などと呼びます。ちなみに、長期熟成酒研究会では「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を「熟成古酒」と定義しています。市場で出回っている熟成酒は、入手しやすいもので3~5年、高級なものでは10年以上熟成させたものもあります。
清酒は貯蔵されることによって香り成分が変化します。清酒にとって悪い環境、たとえば温度変化の激しい場所や光の当たる場所に置くと、不快感のある劣化臭が生じてしまいます。しかし、計画的に長期貯蔵すれば、心地のよい熟成香になります。
この熟成香の中には、ソトロンという成分が含まれています。ソトロンは、微量でもカラメルのような香りがしますが、濃度によってバニラやハチミツ、黒糖、カレーの香りに変わります。この香り成分があるため、バニラアイスクリームにかけるとほんのりビターなキャラメルのような味わいを感じることができるのです。
アイスクリームにぴったりな熟成酒
ダルマのマークが特徴的な熟成酒(画像左)は、その名もまさに「アイスクリームにかけるお酒」。「達磨正宗」を造る岐阜県・白木恒助商店の商品です。この商品は2種類あり、「ライト」が平成10年醸造の貴醸酒、「ヘビー」は1972年(昭和47年)と1977年(昭和52年)にそれぞれ醸造されたお酒をブレンドしているそうです。
次に紹介するのは「玉川」を造っている京都府・木下酒造の「Time Machine」。この商品は3年間寝かせ、通常4年目に出荷しているとのこと。名前は昔ながらの製法「生酛造り」で造っていることに由来しているそうです。
左側の「Vintage」は、原材料の一部に赤米を使用。右側の「1712」はアルコール分14%程度のお酒です。そして「Time Machine」にはこの2種類だけでなく、さらにもう1種「88」という商品があります。この「88」は原料米が88%精米、アルコール分8.8%と数値がそのまま商品名になっています。
もちろんこれらの商品は、そのまま飲んでも美味しいもの。しかし今回は、あえてデザートとして試しました。
アイスクリーム×日本酒で、ビターな大人スイーツに!
バニラアイスクリームはスーパーで売られているような普通のアイスクリームを用意します。特に高級なものでなくても充分です。そこに、お猪口1杯くらいの熟成酒をかけます。
そして、アイスが少し溶けるのを待ってから一口。
口に入れたときに感じるキャラメルのような香ばしい蜜の香りと甘さ。少しほろ苦い感じもあり、まさに大人のデザートという感じです。
「酒飲みだから甘いものはちょっと」という方や「日本酒はあんまり好きじゃないのよね」という方でも楽しめるのが、古酒とバニラアイスクリームのペアリング。ぜひ、お試しください。
※ 本記事で紹介した楽しみ方について、未成年や妊娠中の方、車を運転する方などの喫食はお控えください。
(文/あらたに菜穂)