大分県宇佐市の8つの酒蔵が一堂に集まる「第3回 宇佐で角打ち 酒蔵まつり」が、5月26日(日)に大分県宇佐市の長洲漁港で開催されました。
イベントの主催は、市内の日本酒蔵と焼酎蔵が集まって立ち上げた団体「JYOKKAS ∞」(以下、ジョッカス)です。各蔵の頭文字をとって名付けられました。
- 【J】常徳屋酒造場 (日本酒・焼酎)
- 【Y】四ッ谷酒造 (焼酎)
- 【O】大分銘醸 (日本酒・焼酎)
- 【K】久保酒蔵 (焼酎)
- 【K】小松酒造場 (日本酒)
- 【A】縣屋酒造 (焼酎)
- 【S】三和酒類 (焼酎)
- 【M】民潮酒舗 (日本酒)
大分県が誇る穀倉地帯「宇佐平野」で栽培される米と麦を使い、それぞれの蔵元のこだわりで造られた日本酒と焼酎。それらの情報発信と酒文化の振興のために活動を行っている団体です。
日本酒と焼酎を一緒に楽しめるイベント
イベントは、12時30分からスタート。9時から12時までは、魚介類の直売などが行われる「長洲浜の市」が開かれていたので、会場は多くの来場者で賑わっていました。なかには、大分市や別府市からのバスツアーでくる方や、北九州方面から電車を乗り継いで来る方も。あわせて、500人ほどの来場者数だったようです。
イベントのシステムは、受付にてスターターセット(おちょこ付き、コイン7枚1,000円)を購入し、各蔵元のブースにてコイン1~3枚を日本酒や焼酎と交換するというもの。追加コインは5枚で500円です。
こちらは開始前にスターターセットを購入するための長蛇の列。みなさん飲む気まんまんです。
13時には8蔵そろっての鏡開き。100人限定のふるまい酒を求めて、多くの方が詰めかけました。今回のふるまい酒は「豊潤 純米吟醸 大分三井」です。
各蔵がブースをつくり、蔵自慢の日本酒や焼酎を提供します。蔵元がひとりひとりとコミュニケーションしながらお酒を注いでいたのが印象的でした。大分銘醸のブースでは日本酒と焼酎が楽しめました。
このイベントのために仕込んでいたという限定酒のなかには、1時間ほどで売り切れてしまったものも!小松酒造場の改元記念純米酒「豊潤 令和元年初搾り」は、イベント当日の午前1時までラベル貼りの作業を行っていたそうです。
会場では、たくさんのグループが酒と料理を楽しんで盛り上がっています。お話を聞くと「たくさんの種類のお酒が飲めてとても楽しい」「焼酎と日本酒の両方が飲めるのがいいですね」という声。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、最終のシャトルバスが16時に出発し、イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。
「宇佐の酒を多くのひとに知ってもらいたい!」
今回のイベントについて、ジョッカスの会長で、四ッ谷酒造5代目の専務・四ッ谷岳昭さんにお話をうかがいました。
─ 「宇佐で角打ち 酒蔵まつり」はどのようにはじまったのですか?
大分県宇佐市は、海も山も平野もある土地柄です。それだけに、同じ市内でありながら地域の特色が強く料理もお酒も違います。そのため、宇佐市全体を体感できる食のイベントはこれまでありませんでした。そこで、魚も、肉も、野菜も、お酒も、宇佐市のすべてを味わえるイベントを作ろうと考えたのです。
地元の方でも、宇佐市に8つの酒蔵があることを知らない方が多いんです。地元の方に来てもらって酒蔵や銘柄の名前を覚えてもらうことで、居酒屋で飲むときや自宅用にお酒を買うときに、宇佐の酒を選んでもらえたらと願っています。お酒の地産地消ですね。
─ これまでに2回開催されてきましたが、今回の手ごたえはいかがでしょうか?
「宇佐で角打ち 酒蔵まつり」というかたちでの開催は3回目なのですが、以前から大分県酒造組合の予算を使い、ホテルなどで屋内イベントを開いていました。たとえば、70人限定で飲み放題といったクローズドなイベントですね。
参加者の満足度は高かったのですが、それゆえに参加者が固定化してしまい、チケットが入手しづらい状況ができてしまったんです。これでは宇佐の酒を広めるのに逆効果になってしまう、と。そこで大分県酒造組合の予算ではなく、自治体から補助を受けて、独自で屋外イベントをやろうと企画しました。
第1回はこの長洲漁港で開催したんですが、なんとイベント当日に台風が直撃!どのくらいの来場が見込めるか不安だったのですが、漁に出られなかった漁師さんがたくさん参加してくださいました。風は強かったのですが雨はやんで、みなさん楽しんでいただけたようでした。
2回目は「宇佐グルメフェスタ」と一緒に開催しました。グルメフェスタの客層が家族連れが中心で、お酒を飲んでもらおうと狙っていた客層と結果的に違っていました。フードも唐揚げやネギ焼きといったおかずがメインで、想定よりはお酒を飲んでいただけなかったんですね。開催場所が駅から遠かったこともあり、参加者は少し予想を下回り、反省点や課題も多く見つけることができました。
そして3回目の今回は、あらためて長洲漁港に会場を戻し、ジョッカスとしての単独開催としました。お酒を中心に、それに寄り添うような宇佐市内各地の料理もそろえました。特に市場での開催なので魚の美味しさは間違いないですね。大分市や別府からのバスツアーも始め、たくさんの方に集まっていただけたのではないでしょうか。
─ これからの展望はいかがでしょうか?
県外からの旅行者が大分を訪れるときは、別府や湯布院に行くことが多いですよね。宇佐市の観光地に宇佐神宮がありますが、参拝するとすぐに次の目的地に行ってしまうんです。このイベントを通して、宇佐神宮以外にも、宇佐市は食と酒が豊かな地域であることをアピールして、もっと立ち寄っていただきたいと思います。
全国各地にさまざまなイベントがあるなかで、その地域でのんびりとお酒を飲めるイベントがあってもいいんじゃないかなと思っています。
イベントは、これからも定期的に長く続けようと考えているので、宇佐市のことが徐々に知られていけばよいと思っています。ぜひ、宇佐に遊びにきてください!
日本酒を嗜む文化が昔からあった大分県
すべてがスタッフの手作りで準備された「宇佐で角打ち 酒蔵まつり」。宇佐ならではの点でいえば、日本酒と焼酎の両方を一緒に味わえる点でしょう。料理や気分に合わせて、どちらもセレクトできるのがいいですね。
大分県にはもともと日本酒を嗜む文化が強かったところに、三和酒類の麦焼酎「いいちこ」が大ヒットし、県内で焼酎を造る蔵が増えたという経緯があるそうです。そのため、日本酒蔵でも焼酎を製造、販売しているところが多くあります。
全体として、蔵ごとのブースに詰めかけるわけでもなく、参加者のみなさんがゆったりとグループや蔵元と話しながらくつろいで飲んでいたのが印象的でした。
蔵数や参加者が多いお酒のイベントだと、早く目的の蔵に行かなきゃ!とせわしなくなってしまうこともありますが、少数の蔵が集まり、ゆっくりとお酒を楽しむイベントもよいものですね。
「宇佐で角打ち 酒蔵まつり」は、来年も開催されるそうなので、大分を訪れるなら、ぜひ予定をあわせて宇佐まで足を延ばしてみてはいかがでしょうか。
(文/鈴木将之)