こんにちは、SAKETIMES編集部、日本酒マスターの山口奈緒子です。
今回は日本酒の飲食店の中でも高級店と言える「方舟 大吟醸 しずく店(以下、方舟 しずくと記載)」の支配人山口直樹さんにインタビューをしてきました。日本酒好きの中では大人気の方舟しずくですが、その何が魅力なのでしょうか?また、山口支配人が思う日本酒の魅力とはどのような点なのでしょうか?ーー今回は、こういった他では語られることのなかった山口支配人の想いと方舟 しずくの魅力をみなさんにお伝えしようと思います。
今回インタビューしたのは、方舟の支配人、山口直樹さん
「方舟(はこぶね)」を運営している株式会社セオリーとは、北陸(富山・石川・福井)・新潟4県の日本酒などの食を含む「文化」を伝える伝道師として飲食店・宿泊施設・ネットショップを経営している会社です。
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その方舟の中でもフラッグシップのような役割を持つ「方舟 しずく」。日本酒好きの中には知っている人も多いのではないでしょうか。
支配人、山口直樹さんにお話をうかがってきました。
今は日本酒業界で活躍している山口支配人ですが、これまで紆余曲折を経て今のお仕事に結びついているそう。
◎山口支配人のプロフィールはこちら。
銀座に位置する日本酒専門店の支配人を務めており、以前には高級フランス料理店、一流店でのバーテンダーも経験。
また、「日本酒学講師」「酒匠(さかしょう)」の他に「調理師免許」「ワインソムリエ」などの資格を保持し、料理知識も含め、飲食のプロフェッショナルとして活躍中。
方舟 しずく店の魅力とは?
◎トレーサビリティ
方舟 しずくといえば、日本酒の品揃え(常時250種類以上ある。)手の込んだ北陸・新潟の郷土料理、個室でゆったりした空間、、、たくさんの魅力があると思います。それらたくさんの魅力の中で一番は『「生産者との繋がり」を大切にしている』んだそう。
最近では食品偽装など、食の産地にクローズアップされる時代ではありますが、食材(日本酒を含む)の生産者からお店でそれをお客様が口にするまでのすべての流通をはっきりさせる、つまり「トレーサビリティ」は絶対にぶらさないということですね。また、『ここがぶれると他の店と同じになってしまう。その点はお酒、料理も同様。』ともおっしゃっており、私たち消費者としてもそのような食への管理がしっかりしたお店は安心できますよね。
また、日本酒の「トレーサビリティ」に関して言えば方舟(全店舗内のどこかで開催)は月に一度、日本酒の生産者を呼び、蔵元の会というイベントが行っています。最近では酒蔵の方が直接、東京に来てイベントに参加したり、試飲即売会をしたりと造り手に会う機会も増えましたが、それでもゆっくりとお話しながら会うことのできる酒蔵の方はごくごく一部です。
そんな中でも、方舟で開催される蔵元の会では、方舟でしか出会うことのできないような北陸・新潟の地元で愛されている酒蔵がメインにすすめられることも多く、それらの点からも生産者から消費者のもとに渡るまでの過程を大事にしている方舟だから成せるイベントですね。
また、蔵元の会ではトレーサビリティの一歩先にも繋げられるそうです。
『蔵元の会経由で、購入や蔵元訪問につながる。』と山口支配人はおっしゃいます。そのつながりがあるから、酒蔵が喜んでくれ、次の蔵元の会を開催へとつながっていきます。
トレーサビリティをしっかりと守ることが、造り手である酒蔵への利益を提供することも可能にしているということなんですね。
◎北陸・新潟の魅力とは?
なぜ方舟は「北陸・新潟」に注目しているのでしょう?
『注目したのは東京で紹介されていなかった』という理由だそうです。おいしいものが多く、料理と日本酒の相性、究極を言えば「文化」が魅力的な地域なのですね。
また、その地域の料理と日本酒の相性の良さは、「土地の香りのするものに、土地の味がするものを合わせる」という科学では説明できない部分ではありますが、山口支配人も実感しているとのこと。
スタッフには北陸・新潟地域出身者も多く、うわっつらの接客ではない文化の伝道師としての想いがお客様に伝わるようです。
来年2015年北陸新幹線の開通により、さらに地域全体がクローズアップされていくでしょう。
◎お客様とスタッフがより向き合うために
山口支配人自ら「日本酒学講師」「酒匠(さかしょう)」「ワインソムリエ」を取得されいることや、スタッフの半数以上が「唎酒師(ききさけし)」を取得してる方舟 しずく。山口支配人はスタッフが資格を取得する意義とは『お客様と向き合うため』だといいます。
お客様の中には、唎酒師、つまり日本酒を良く理解している人に専属に対応して欲しい、との要望があるそうです。
そうなってくると、従業員サイドも唎酒師として店に立つ以上は責任を持ってお客様と向かい合わないといけないので、日本酒やそれにひもづく食の知識などの成長を促すことにも繋がっているといいます。
資格取得後、すべてのスタッフが同じように高い知識を持っているわけではありません。方舟全体でも、店舗ごとでの勉強会は定期開催しており、個別のトレーニングによる成長促進も行っているようです。
資格の取得についても、日本酒やその周辺の知識を高めることによってお客様とより真摯に向き合うためということなのですね。
日本酒のビジネスでの継続性が大事
◎高単価の日本酒専門店「方舟 しずく」の意義とは?
方舟 しずくは一人あたりのお客様単価が15,000円と、比較的高めなのですが、その意義とはどのようなものなのでしょうか?
それは、『方舟全体の価値を高める、ブランディングになっている』と山口支配人。
方舟は飲食業態から宿泊施設、そしてネットショップと、さまざまな事業を展開されていますが、このしずく店で築き上げた価値を、他の事業に派生させていくための店舗として存在しているようです。
これは、株式会社セオリー全体の利益に限らず、協力してくれる「酒蔵」にもメリットがあります。
銀座に店がある、という立地のステータスによって、酒蔵の反応もよく、協力体制になってくれやすいんだとか。たしかに、都心から離れた場所で酒造りをしている側からみれば、自分たちの酒の「ブランディング」も大きな課題です。どこでどのような人たちが自分たちの酒が飲むのかには徹底的にこだわるでしょうし、「銀座」という一等地で提供されるメリットは大きのでしょう。
また、方舟 しずくは先にあげたように一人あたりのお客様単価は15,000円と、高単価なのですが、この金額に関しては『(お客様が)安くて満足するのは当たり前。高い価格でも、リピートしてくれる価格へのすり合わせが大切。』とおっしゃっていました。
最近では、日本酒バルといったような、立ち飲みで気軽にそしてお財布にも優しい、そんな業態が広がっていくだけでは、利益が生まれにくいです。薄利多売、つまり飲食店ですと、回転率を上げたくさんのお客様に利用してもらわなければならないので、継続していくにはかなりの労力がかかります。そのような業態だけでは、日本酒によって生み出せる利益というのは本当に少なくなってしまいます。
今、日本酒はブームが起きているという見方もありますが、このようなブームを継続、なおかつ日本酒文化がさらに発展していくためには日本酒の利益を守りながら、経営していくことが大事なのですね。
◎山口支配人にとって日本酒の魅力とはなんだと思いますか?
このように、日本酒のこれからの発展までも視野に入れて経営をされている山口支配人ですが、山口支配人がここまで心を突き動かされる「日本酒の魅力」とはなんであるか、も質問してみました。
すると、その答えはーー『日本の文化であることが魅力。培われてきたからこそ文化になっていき、それが魅力となっている。そしてそれは更に時代のニーズに合わせて進化していくべきもの。』
文化というものは常に変化していくものです。常に一定のものなんて存在せず、その時代に合わせて変化していくし、変化できないものは淘汰されてしまいます。日本酒がこれからの文化として後世にも、脈々と受け継がれていくためにも、変化をやめてはならないし私たちもその変化を認めなくてはいけない、と山口支配人のお話を聞いていて改めて強く思いました。
山口支配人の今一番おすすめの日本酒とは?
最後の質問として、「山口支配人が今、一番おすすめの日本酒」を聞いて来ました。
この質問をすると『1つを選ぶことは難しいけど、、、』などと悩みながらも教えてくれたのが「Nechi 越淡麗 2008」。
『ストーリー性が高いという点でおすすめ。日本酒の魅力=文化と話したが、新潟県の根知谷という場所には文化がある。造りは徹底的に機械化しつつ、田んぼも自社で買い取り、生育もしている。熟成という観点でも、数年先を見据えて造っている。』とのこと。造りの機械化に関しては『手造りも大切だが、伝承出来ないという点もある。店舗も同様で、自分自身がこだわりを持つことは重要だが、伝承し、次世代に引き継げるような工夫を大事にすること。』とおっしゃっていましたが、私も手造りと機械化、どちらのメリットもあり、これも日本酒がそれぞれの時代にあわせた文化として変化していく1つの例なのではないかと思います。
ちなみに、私もこのお酒を飲んだことがありますが、一言でいうと本当に「奥深い」。
このお酒のことを何も知らずに飲んでしまったら「うんうん、とってもおいしいお酒」として私の心には深く刻まれなかったかもしれませんが、このお酒1本が造られるストーリーを知ってから飲んだ私は、そのお酒の奥深さに感動しました。味わいにストーリーが反映されているのです。山口支配人が言う、「ストーリー性の高さ」にとても共感できました。
山口支配人は最後に、『多くの蔵元がテロワール(背景・環境)を大切にするような流れになっている。これまでは「米から作った工業製品」として海外へ輸出し、現地でもそのような認識をされていた。しかしこれからは、「様々な製造背景、文脈、環境、ストーリーを併せ持つつまり農業製品」として海外に進出させたいので、地元のものを使った、テロワールを大切にした製品である必要がある。』とも語っていました。日本酒が世界で注目されてきている今、他のお酒と比較したときの日本酒の特性をもっともっとアピールしていく必要がある中で「農業製品」への変化はとても重要なことだと思います。
方舟 しずく はこんな人におすすめ
こんな魅力たっぷりの「方舟 しずく」、普段使いのお店というよりは、記念日、誕生日、結婚を控えた両家の顔合わせ、ここぞというときに利用されることが多いようです。また、これから忘年会の季節。方舟 しずく店のお客様には「忘年会はここじゃなくちゃ!」という方も多いとのこと。「行きたい!」と思った方は早めのご予約をおすすめします!
◎方舟 大吟醸 しずく
TEL | 03-6274-6920 |
場所 | 東京都中央区銀座8-8-8 GINZA888ビル6F |
最寄り | 地下鉄 銀座駅 A2番出口 徒歩5分 地下鉄 新橋駅 1番出口 徒歩3分 JR 新橋駅 銀座口 徒歩4分 |
営業時間 | 【ランチ】 [月~土] 11:30~15:00 (L.O.14:00) [日・祝] 11:30~17:00 (L.O.16:00)【ディナー】 [月~金] 17:00~23:00 (L.O.22:00) [ 土 ] 17:00~22:00 (L.O.21:00) [日・祝] 17:00~21:00 (L.O.20:00) |
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