「酒」という言葉には、たくさんの異名があります。ひとつひとつの由来を調べてみると、お酒がどのように楽しまれてきたのか、どのように扱われてきたのか、その歴史や文化がわかることもあります。

今回は、いくつもある「酒」の異名の中で、SAKETIMES編集部が気になった3つを紹介します。

さまざまな「酒」の異名

竹葉(ちくよう)

「竹葉(ちくよう)」という異名は、中国の故事に由来しています。日本では「竹の葉」とも呼ばれ、その字面から「ささ」とも言うようになったのだとか。

石川県の能登地方にある数馬酒造は「竹葉」という日本酒を造っていますが、お酒の異名が「竹葉」であることが由来のひとつだそうです。ちなみに、この銘柄は「ちくは」と読みます。

般若湯(はんにゃとう)

もともとは、僧侶の隠語として使われていました。禅宗の寺院の入口には『不許葷酒入山酒』という文言が書いてあるそうで、これは「ニンニクやニラなどの強い臭いの食材を食べた者や酒臭い者は入ってはいけない」という意味。寺院では、表向きはお酒を飲むことが戒められていました。

しかし、「薬として嗜むのは良い」「決して酒として飲むのでない」という意識から、「智恵の湧く湯」という意味を持つ「般若湯(はんにゃとう)」と呼ばれるようになったそうです。お酒を「般若湯」と呼ぶことは、どうしてもお酒を飲みたい僧侶にとっての自己弁護のようなものだったのでしょう。

御神酒(おみき)

本来は神前に供える「神酒(みき)」の丁寧語として使われていた言葉です。現在でも、神社などに供えるお酒を「御神酒(おみき)」などと言います。いつの頃か、それがお酒を指す洒落言葉に転じたようです。

「御神酒」をお酒の意味で使っていることわざには、「御神酒あらがぬ神はない」というものがあります。

これは「神様でさえお酒を召し上がるのだから、人間がお酒を飲むのは当然である」という意味。お酒好きがお酒を飲む時の言い訳として使っていたのでしょう。

日本酒

今回は3つの異名を紹介しましたが、他にもたくさんの異名があります。それは、私たちの生活とお酒が切っても切り離せないものだったからかもしれません。

お酒の歴史的・文化的な側面に目を向けると、ただ酔うためだけの飲み物ではなく、より情趣のあるものとして楽しめるのではないでしょうか。

(文:SAKETIMES編集部)