こんにちは!SAKETIMESライターの永木三月です。

 普段は「美食」をテーマにした活動をしています。現在はお店や製品のレビューを紹介している他、定期的に「おいしいもの味覚鑑賞会」という名前で、食べ比べをテーマにした会の開催も行っています。

前回は「煎り酒を作ってみた!」を書かせていただきました。
こちらでは、日本酒と絡めて、さまざまなおいしい情報を発信していけたらと思っています。よろしくお願いします!

はじめに――「おいしい日本酒」とは?

皆さんはおいしい日本酒をどうやって探していますか?

辛口、甘口、吟醸酒、純米酒など、自分の好みにあったお酒をいつも選ぶという人もいれば、そういう好みはなく、いろいろな情報を考慮してとにかくおいしいものを選ぶという人もいると思います。

僕自身はといえば、あまり好き嫌いがないので、もっぱら後者のタイプです。

情報といっても、友人の口コミからネットの情報までさまざまです。そんな中で僕は「◯◯コンテストで金賞」というような触れ込みを頼りにすることがよくあります。日本酒を知らない人よりは、詳しい人の方がおいしいものを知っているはずだと考えるからです。

しかしおいしいお酒に出会えるとは限りません。そういうときに、自分の味覚の方がおかしいのだろうか、と思ってしまったり、お酒のおいしさはどんな風に決まっているのだろうか、と考えてしまうことがあります。

こういう話題は日本酒に限った話ではありませんが、日本酒のおいしさを語る上で欠かせない存在の1つは、「全国新酒鑑評会」という大会です。

この大会の成り立ちを見ながら、日本酒の「おいしさ」について考えてみましょう!

全国新酒鑑評会の歴史

もともと日本の品評会の始まりは「清酒品評会」として、1907年(明治40年)に発足したものだといいますが、その4年後、品評よりも技術向上などに重きを置いた「鑑評会」が始まり、これが現在の新酒鑑評会の元になっています。
全国の酒造業者と国とが結びついて開催した会とあって、先に始まった「清酒品評会」は、まさに「おいしい」日本酒を決める権威のある大会でした。
そのため、この会で賞を受けるなどして評価されることは、酒造家として超一流の証であるとされ、売り上げにも大きな影響力を持ったと言われます。
しかしこの大会は昭和25年を最後に行われなくなり、現在では新酒鑑評会だけが、酒の品評を行う場所として残っています。

 

プロの「おいしさ」、アマの「おいしさ」

醸造に関する世界的な権威である坂口謹一郎の著作『日本の酒』によれば、清酒品評会には、おいしい日本酒を決める上で、問題を抱えていたと言います。それは、品評を行う酒造業者が、酒造に使われる技術の高さばかりを評価するようになり、庶民の味覚とどんどん離れて行ってしまったことです。一番わかりやすい例として「吟醸酒」の話があります。今でこそ簡単に手に入る吟醸酒ですが、当時吟醸酒といえば、作るのが難しい貴重なものだったそうです。そのせいもあって、当時の品評会でも吟醸酒ばかりが高く評価されていました。しかしそれは必ずしも庶民の味覚と一致したものではありませんでした。酒蔵の方でも、品評会向けに吟醸酒を作り、庶民向けに普通のお酒を造るというような、本末転倒な事態まで起こったと言います。また、今でこそ辛口と甘口はそれぞれの個性があるものと認められていますが、当時はそうした考え方がなく、甘口のものばかりが高く評価される向きがあったという話もあります。もちろん技術を基準に品評することは、その上下を示しやすいというメリットもありますし、全国の酒造がその高い技術を身につけるよう努力することに役立ったはずです。

しかし、それを重要視しすぎるあまり、日本酒が飲み手から離れて行ってしまった時代がありました。そういった過去の反省点はこれから日本酒初心者や海外の方に日本酒を広めていくときの大きなヒントになるのではないでしょうか。もちろん現在鑑評会の評価は、消費者の目線も大切にしながら、日本酒のおいしさ、魅力を考える上での重要な指標の1つとして捉えられています。

最後に

いかがでしたでしょうか?

今や日本酒は世界中でさまざまな味覚の人々に評価され、楽しまれています。以前、ワインの大会IWCの日本酒部門に関しての記事を書きましたが、この場合で言えば、海外のワインのプロフェッショナルがその年のおいしい日本酒を選定しています。そうして選ばれた日本酒は、おそらく日本酒のプロがおいしいという日本酒とは少し違った傾向を持ったものとなるでしょう。

このようにしてさまざまな文化で日本酒の味が親しまれて行くことは、私たちがもっと日本酒を楽しむこととも繫がっているのではないでしょうか?

みなさんの、さらに豊かな日本酒ライフに貢献できれば幸いです!

「おもしろそう」「おいしそう」、そう思ったら、シェアしてもらえると嬉しいです!

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