東日本大震災の被害から復活

1896年(明治29年)創業の赤武酒造は、岩手県大槌町で地元に愛される銘柄「浜娘」を醸してきました。しかし、2011年(平成23年)3月、東日本大震災による津波で、会社の事務所と6棟あった蔵が完全に流失。5代目の古舘秀峰さんは他蔵の施設を借りながら、「浜娘」をファンに届けたい一心で酒造りを継続。そして2013年夏、盛岡市北飯岡に「復活蔵」を建設しました。自社の蔵での酒造りが、いよいよ始まったのです。

赤武 純米吟醸 結の香を花をバックに取っている写真

2014年には、東京農業大学を卒業し、酒類総合研究所などで研修を受けた6代目の龍之介さんが杜氏として蔵へ戻り、新しい銘柄「AKABU」を立ち上げました。「復活蔵」では、やる気のある若手を社員として採用しています。未経験者や女性でも働きやすくなるように、新しい設備を積極的に導入しました。

20代で醸した「AKABU

龍之介さんを中心に20代の若手で醸す「AKABU」は、若さあふれる瑞々しい味わいで評判を呼び、わずか数年で注目のブランドに成長しました。

赤武 純米吟醸 結の香のラベルの写真

2018年3月に岩手県新酒鑑評会で1位を、同年5月には「インターナショナルワインチャレンジ」のSAKE部門で「純米大吟醸 結の香(ゆいのか)」がゴールドメダルを獲得しました。若者たちの挑戦は、たった数年で長足の進歩を遂げているのです。

岩手県が開発した酒米「結の香」

今回紹介するのは、岩手県産米「結の香」を使った純米吟醸酒。「結の香」は、岩手県農業研究センターが酒米の王様・山田錦に匹敵し、かつ県の気候風土に適した酒米を造るため、2002年(平成14年)から研究に着手した新しい品種。父は山田錦、母が華想いです。

2013年3月19日に「純米大吟醸 結の香」が県内の6蔵から一斉に蔵出しされ、同酒米がデビューしました。岩手県はこの酒米に、酒処としてのアピールへの期待をかけています。米の粒が破砕しにくい点、雑味となるタンパク質の含有量が少ない点から、大吟醸酒を醸すのに向いているのだそう。

赤武 純米吟醸 結の香の裏rベルの写真

今回の純米吟醸酒は、爽やかなイチゴやメロンを思わせるフルーティーな香りが感じられ、口に含むと、雑味をまったく感じない澄んだ米の旨味と穏やかな酸味があります。ビロードのような舌触りと、透き通るような喉越しが印象的です。

しっかりとした味わいが感じられるものの、透明感があるため、印象はあっさり。ジャパニーズモダンを感じるおしゃれなラベルで、和食よりはちょっと贅沢な洋食のディナーシーンに合わせると良いでしょう。冷やしてワイングラスで飲むのがベストですが、常温やぬる燗でも美味しくいただけますよ。

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます