名水の街にある家族4人の小さな酒蔵
名水の街・愛媛県・西条市にある、家族4人経営の小さな石鎚酒造。西日本最高峰「石鎚山」から流れ、市内至るところに湧き出る「うちぬき」と呼ばれる湧水を仕込み水として使用しています。同蔵が醸すこだわりのお酒の数々は全国的に高く評価され、中でも「純米吟醸 雄町」は2016年度の「SAKE COMPETITION」の純米吟醸部門で金賞(8位)を受賞しています。そのほか純米大吟醸も金賞、そして銀賞2点と実力を証明しています。
小仕込み、槽搾りで繊細な食中酒に定評
石鎚酒造の創業は、大正9年(1920年)。現蔵元の越智英明氏の祖父・恒次郎氏が当地に蔵を構えました。創業から「手造り」にこだわり、平成11酒造年度(11BY)から杜氏・蔵人が不在となり、家族4人中心の酒造りとなりました。現蔵元が釜屋(甑回り)を担当、長男・浩専務が酒母・もろみの管理、「武勇」を醸す茨城県の「株式会社 武勇」で働いていた、次男・稔製造部長が原料処理、麹造りを担当、専務の奥様・弥生さんが酵母培養や分析を担当しています。
目標とするお酒は「食中に生きる酒」で、きめ細やかな酒質を目指しています。1回で仕込む米の総量は500㎏~1000㎏の小仕込み。さらに全量を「槽搾り」か「袋吊り斗瓶取り」でゆっくりと搾ります。「槽搾り」は幾層にも積まれた醪自身の重みで酒と酒粕に分離されます。「ヤブタ」と呼ばれる自動圧搾機と比較して、綺麗できめ細やかな味わいになると言われています。
完成度の高い「SAKE COMPETITION」金賞受賞酒
本品は、備前雄町を50%まで磨き、酒質が最も安定している搾りの中間部分「中汲み」を槽で搾った一品。金賞受賞酒は「袋吊り」です。穏やかな吟醸香、口に含むと雄町らしい甘味、酸味、ふくらみを感じます。
雄町は熟成に向いている酒米で、秋口から味が乗ってくるとも言われますが、このお酒も、9月に出荷されているので、味乗りがしっかりしています。ポッチャリした雄町のふくらみをが感じますが、そこは石鎚、味は出過ぎずにバランスよく抑制されています。雑味も感じず綺麗で柔らかい味わい。しかし、食中酒としての切れ味はしっかりしているので、呑み飽きはしません。優しさ、力強さ、繊細さ、そして最後の切れ味と高いレベルでまとまっています。
石鎚の中ではしっかりした味わいなので、焼肉や焼き鳥などに合いそうです。また、白身魚のお刺身やブリの照り焼き、マグロの赤身まで幅広く合わせることができるでしょう。愛媛名物なら「じゃこ天」などは最高かも。洗練されているのに素朴さも同居し、気取らずに味わえる一品。お燗にすると、雄町のふくらみをより感じることができ、チャーミングな味わいになりますよ。