大学生とコラボし誕生した日本酒!酒席から大プロジェクトに

東の麓酒造の創業は1896年(明治29年)。江戸時代に米沢藩宮内地区の領主より特権を授かっていた在郷商人が営んでいた酒造部門を、遠藤家6代目・遠藤栄次が引き継ぐ形で始まりました。現在の生産石高は約500石と小さな蔵で、代表銘柄名は「東の麓」です。

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そんな小さな酒蔵・東の麓酒造が、大学生とタッグを組み、一躍話題となったブランドが「つや姫 なんどでも」です。2012年(平成24年)3月に発売しました。

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一度見たら忘れないインパクトを持つデザインは、東北芸術工科大学の学生たちとコラボレーションにより作られました。

新藤栄一製造部長が同大学の教授と呑んだ時に「うちのラベルをデザインしてくれないか」と持ちかけたのがきっかけです。結果、グラフィックデザイン学科と企画構想学科の学生18人のプロジェクトチームが立ち上がりました。

最初はラベルデザインだけでしたが、味のコンセプト、ネーミング、PRすべてを学生が企画することになったそうです。蔵から出した条件は「お米は『つや姫』を使うこと」だけでした。

20歳になったばかりの日本酒の知識の全くない学生達から、常識に捉われない自由な意見が出されました。会議で煮詰める中で、つや姫の冷めても美味しいという長所を生かし、「何℃でも美味しい」という学生が出したコンセプトが決まり、摂氏の「℃」と温度帯バーを模したラベルが完成したのです。蔵も、コンセプトに合ったお酒を造り上げました。

初年度は600㎏タンク1本分、27BYはその倍で一升瓶換算約1500本という少量生産です。初年度から学生や若い人が買いやすいように、県内のスーパーやコンビニで発売され、好評を得ました。

お米の旨みを幅広い温度帯で楽しめる純米吟醸

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「純米吟醸酒 つや姫なんどでも」は、山形県がブランド米として売り出している飯米のつや姫を58%まで磨いています。

「まず県が売り出しているので、PRしやすく宣伝費が安いこと。また、たんぱく質が少ない優秀なお米で、酒米ほどではないが、酒造りにも向いています」

と語るのは、先述の新藤製造部長。上立ち香は非常に穏やかな吟醸香。口に含むと飯米由来なのか米の旨み甘味が目立ちます。スッキリしているのですが、旨みが強い。含み香も蒸米のホクホク感を感じます。

「飯米を削ると米が溶けやすいので、味がですぎないよう吸水は硬めに保つよう気をつかいました。米の甘味を味わってもらえると思います」

と新藤製造部長が言うように、お燗(熱燗)にすると旨みが膨らみ、複雑味が増し、眠っていた酸が控えめながらバランスよく絡んできます。コンセプト通り、冷やから熱燗まで、高いポテンシャルを維持しています。幅広いおつまみに合わせられ、呑み飽きしない食中酒と言えるでしょう。

女性の意見を取り入れ小瓶で販売

東北芸術工科大学は女性の学生が7割を占めているので、女性のアイデアが集約されて造られたお酒でもあります。日本酒には珍しく300ml(税別500円)、500ml(同800円)という小瓶で販売しているのも、女子学生の意見で、「バッグに入る量じゃないと買わない」というのが大多数だったからです。

2013年度からは一升瓶も販売していますので、女性以外も初心者やスッキリタイプが好きな人には最高の晩酌酒になるでしょう。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2015」で金賞を受賞。これからも活躍が楽しみな銘柄です。

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