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SAKEがフランス人を惑わせる!? パリの"なんちゃって日本食レストラン"の実態

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日本食ブームと言われて久しいフランス。街のあちこちでも日本食人気の高さを感じます。現地スーパーのお惣菜コーナーをのぞいてみると、サンドイッチやサラダと一緒にお寿司が並んでいます。

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調味料コーナーには醤油やワサビが置いてあります。

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-日本食と言ったら何を思い浮かべますか?
フランス人に聞いてみると、返ってくるのは十中八九、
-SUSHI!
という回答。

フランス人の生活に"SUSHI"という言葉はずいぶんと浸透しているようです。ということは、SAKE(日本酒)の認知度も高まっているのではないでしょうか。そんな期待を抱きつつ、フランス人に聞いてみること数十回。

-SAKEを知っていますか?
-知ってるよ、アルコールが強くてまずい飲み物だろ?

毎度のことながら、残念な回答ばかりです。

フランス人のイメージするSAKEとは

フランスでは、SAKEについて間違った認識を持っている人が多いように感じられました。彼らにとってのSAKEのイメージは、以下の通り。

  • 食後酒
  • アルコール度数が強い(40度以上)
  • 強烈な香りがする
  • 後味が悪い

日本人の持つSAKEのイメージとは、かけ離れています。それでは、なぜフランス人は、SAKEに対して間違ったイメージを持っているのでしょうか。

現在、パリには1,000店以上もの日本食レストランが存在し、「石を投げれば日本食レストランに当たる」と言えそうな状態。しかしながら、その多くが日本人以外のオーナーによって経営され、さらに日本食の解釈を間違えた”なんちゃって日本食レストラン”です。どの店も、似たり寄ったりの店名と外観、貼り出されたメニューには、寿司と焼鳥ばかり。これが典型的な”なんちゃって日本食レストラン”です。

しかし、多くのフランス人は、これがスタンダードな日本食レストランだと思っています。では、実際にはどのような料理が提供されているのでしょう?

なんちゃって日本食レストランの実態

黒を基調とした店内に、怪しげな照明。メニューはやはり、寿司と焼き鳥です。

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人気のランチメニューを注文してみました。前菜はコールスローサラダと、味覇(ウェイパー)が香るミソスープ。

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続いて、ボリュームのある握り寿司。

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サーモンが大好きなフランス人。食べるのはサーモン寿司だけという人も珍しくありません。メインディッシュは焼鳥。日本のスーパーのお惣菜売り場で見かける焼鳥と、遜色ありませんでした。フランス産の鶏肉に甘辛いタレが絡んで、なかなかの美味しさです。

しかしながら、寿司とともに提供された「白米」には驚きを隠せませんでした。フランスでは、「米」は「野菜」に分類されることが多く"なんちゃって日本食レストラン"では、寿司を含むすべてのメニューに白米が付いてくることがしばしばです。

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白米には、甘口醤油(水飴と醤油を混ぜた甘いソース)を、たっぷりかけていただきます。

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日本人としては馴染みのないスタイルでしたが、こうしたレストランのおかげでSUSHIが広まったのも事実です。フランス人が満足しているのなら、一概に否定もできません。

問題は、日本食レストラン総数の90%以上を占める"なんちゃって日本食レストラン"が提供しているSAKEにあります。

なんちゃって日本食レストランが提供するSAKEは…

"なんちゃって日本食レストラン"ではたいてい、食後酒としてSAKEが無料で提供されますが、それは日本酒ではなく、白酒(パイチュウ)と呼ばれる中国の蒸留酒です。これこそがフランス人に誤った認識を与えた原因です。

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吟醸香が強く、アルコール40度を超えるお酒です。

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フランス人は、食事の際に 「食前酒→食中酒→食後酒」 という順番に、それぞれ別の飲み物をたしなむのが一般的です。

  • 食前酒: シャンパンやカクテル、ビール
  • 食中酒: ワインなどの醸造酒
  • 食後酒: ウイスキーやコニャック、アルコール度数の高い蒸留酒

といった具合です。

通常であれば、醸造酒であるSAKE(日本酒)は食中酒になりますが、しかしながら"なんちゃって日本食レストラン"で扱うSAKE(パイチュウ)は蒸留酒。したがって、食後酒として提供されます。

本場の日本酒を知らないフランス人は、こうして提供される食後酒のパイチュウをSAKEだと思い込んできました。

フランスで日本酒を広めるために

前述した背景により、フランスで日本酒を広めるためには、まず誤解を解く必要があると感じます。

-SAKEの試飲はいかがでしょうか?
-SAKE?あの強くて臭い飲み物ね、結構よ

と、SAKEと聞いただけで顔をしかめて立ち去る人もたくさんいます。

-本当のSAKEは強くないし、飲みやすいんですよ!

と伝えようにも聞く耳を持たず、一筋縄でいかないのが現状です。

そんな状況ではありますが、フランスをはじめヨーロッパ各国には、本物のSAKEを広めようと尽力している方がたくさんいます。日本食料品店、日本食レストラン、日本酒メーカーに酒サムライ、そうした方々の努力が実り、現在ではSAKEについて正しい知識を持つ人が少しずつ増えてきています。

いつか、本物のSAKEがフランス人の生活に溶け込む日が来ることを願っています。

(文/SAKERINA)

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SAKERINA

フランス在住ライター。酒好きが高じて、学生時代に唎酒師を取得。「日本酒文化をヨーロッパに広めたい」という密かな想いを胸に日々、フランス語と格闘中。欧州のリアル日本酒事情や、日本酒に関わる人々の姿など、海外ならではの情報をお届けします。