オーストラリア・シドニーの住宅街に忽然と現れる、静かな佇まいの焼き鳥居酒屋「Toriciya (トリシヤ)」。25年も前からこの場所にお店を構え、シドニー在住の食通なら一度は耳にしたことのある大人気のお店です。このトリシヤは、食事が美味しいというだけでなく、ある"珍しい仕組み"で長年ファンに愛され続けてきたのだとか。 現地に足を運び、その秘密を探ってきました。
シドニーの「Izakaya」先駆者
今でこそ、市内を歩けば「Izakaya」を看板に掲げた飲食店を何軒も目にするようになったシドニー。しかし25年前、お店を探すどころか「Izakaya」という言葉すら聞いたことのない人がほとんどの時代に、トリシヤはオープンしました。
「日本食をちびちび食べながら、お酒をいっしょに楽しんでもらえる場をつくりたい」という前オーナーの思いから誕生した、焼き鳥を中心とするこの居酒屋。オープン以来、食通を中心に愛され、常連客でにぎわうお店になっています。前オーナーは「Sakenet」という日本酒のネット販売も手掛けている日本人。オーストラリア全土に日本酒を提供しながら、居酒屋を通してお客さんと接していたんですね。
店内には80年代の日本を思わせるレトロな装飾が施され、気取らず親しみあふれる雰囲気。オーナーの念願通り、肴をつまみながら一杯飲むのにピッタリなお店です。
好きなお酒をボトルキープ
ここトリシヤで最初に飲むお酒として人気なのが鳥取・千代むすび酒造の「千代むすび」(AU$23/180ml)です。フレッシュで軽快なため飲みやすく、どんな料理とも相性抜群。お客さんのなかには、気に入ってしまって2杯目以降ずっと飲み続ける方もいるそうですよ。
新潟・越後伝衛門の「伝衛門」(AU$16/180ml)も人気とのこと。
なかには、1800mlの一升瓶をオーダーしてボトルキープをするお客さんもいるそうで、店内の奥にはボトルキープされたお酒がずらりと並んでいました。
「え?!日本酒をボトルキープ?!」と思った方もいるかもしれません。
日本酒は開栓後からの品質変化が、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒よりも早いため、ボトルキープにはあまり向かないという考え方が一般的。飲食店で日本酒をオーダーするとき、グラスではなく一升瓶を選ぶ人が多いオーストラリアならではのサービスでしょう。
とはいっても、オーストラリア人はアルコール耐性が強く、一度にたくさんの量を楽しめる人が多いのだとか。数回の来店ですぐに飲み干してしまうからこそできる、"珍しい仕組み"なのかもしれませんね。
シドニーでは幻の味?!塩で食べる焼き鳥
トリシヤ名物の焼き鳥は、1本AU$3~AU$4でオーダーすることができます。シドニーにある他の居酒屋で提供される焼き鳥は、ローカライズされた照り焼きソース味が主流なのに対し、ここトリシヤでは"塩"でいただけるのがうれしいですね。
お漬物(AU$6)もあっさりとしていて、素材を活かした優しい味わいでした。
さらにトリシヤでは、トロとウニのお寿司が美味しいと大人気。お店を予約するときに、これらのお寿司もいっしょに予約しないと売り切れてしまうほどだそう。
ネタはわざわざ築地から仕入れているそうで、「シドニーで水揚げされるトロやウニとは、トロけ具合や味がまったく違う!」と、スタッフが強く推してくれました。
オーストラリアに数多くある居酒屋や日本食料理店では、ローカライズされた少し変わった味の料理が提供されることも少なくありません。しかしトリシヤの料理は、まさに日本の味そのもの。前オーナーが日本酒のネット販売を手掛けていたこともあり、オーナーが代わった今でも日本酒の品ぞろえは充実していました。
最寄りのノースシドニー駅からタクシーで10分という、シドニーの中心地からやや離れた立地にもかかわらず、常連をはじめたくさんのお客さんでにぎわっているトリシヤ。オーストラリアで本物の焼き鳥と日本酒が恋しくなったら、ぜひ訪れてくださいね。
(取材・文/古川理恵)
◎Toriciya(トリシヤ)
住所 : 18 Cammeray Road, Cammeray, NSW 2062, Australia
営業時間 : 火 –日6:00pm – 10:00pm