こんにちは、SAKETIMES編集部、酒匠の山口奈緒子です。
カナダで日本酒の製造をしている『YK3 Sake Producer(以下、YK3と表記)』。
『Yu 悠(以下、Yuと表記)』というお酒を造っており、カナダでの日本酒文化の普及に力を注いでいます。前編に引き続き、YK3のオーナー小林友紀さんと、製造責任者の春日井敬明さんにお話をお伺いしながら、『Yu』の味わいをお伝えしたいと思います。(※『YK3』や『Yu』への想いについては【前編】をご覧ください。)
1. 「Yu 悠」は香ばしい香りが特徴のお酒
『Yu』シリーズは「junmai sake(純米酒)」「junmai nigori sake(純米にごり酒)」「junmai all koji sake(全量麹(こうじ)仕込み)」の3種類です。
今回、記事を書かせていただくということで、特別に「junmai sake(純米酒)」「junmai all koji sake(全量麹仕込み)」をわけていただきました。
◎junmai sake
淡い黄金色で、みたらし団子のような甘く香ばしい香りがします。味わいにも香ばしい甘味が感じられます。
口に入れたとたんに一気に広がっていき、少し経つと味わいが淡く消えていきます。ボリュームがあり、香ばしさが特徴的なお酒なので、バーベキューで焼いた野菜やお肉を酸味が聞いたBBQソースで食べると良いでしょう。
香ばしさについて、春日井さんにお聞きしたところ「活性炭での濾過を行っていないからこその味わい」なんだそうです。通常、日本酒の製造工程では、活性炭での濾過によって、余分な雑味や香りを除いています。
日本で造られたお酒の無濾過(活性炭での濾過が行われていないこと)のお酒は飲んだことがありますが、それでもYuのような香ばしく芳醇な味わいは、なかなかありません。
◎junmai all koji sake
こちらは「all koji」つまり、「全量麹仕込み」という意味です。
日本酒は通常、酒母に麹米(こうじまい)という「麹菌」を付けたお米と、蒸したお米=掛米(かけまい)を掛けあわせて造ります。このとき、麹米:掛米の割合は約2:8くらいです。全量麹仕込みの場合は、ほぼ10割=ほぼ全量、麹米を使って仕込まれるのです。
通常のお酒と比べたときの全量麹仕込みの特徴は、濃厚な甘味と酸味です。
『Yu』の「junmai all koji sake」も、とろりとした甘味や酸味が際立っています。冷やしすぎた状態で飲んでしまうと、酸味だけが強く感じられてしまいます。常温くらいの温度で飲むと舌によく馴染み、味わいが広がっていきますよ。
脂の乗ったサーモンのステーキなどが食べたくなります。
◎カナダ人にも受け入れられやすい味わい
『Yu』は、現地のカナダ人の反応はどうなのでしょう。
小林さんによると『伝統的な日本酒の作り方を固守しつつ、カナダの人々に受け入れやすい香り、味をうまく表現できていることにより、とても受け入れはよいと感じている』とのこと。
日本人が普段考える日本酒の味わいよりも少し芳醇で、いわゆる日本で造られた日本酒とはちょっと違う味わいと感じるかもしれませんが、これも個性と考えれば面白い味わいです。日本に比べると味の濃い食事が多いカナダであるからこそ、『Yu』のようにしっかりとした味わいのお酒が好まれるのでしょう。
2. どこで買えるか?
『Yu』はカナダ国内では、醸造所のあるBC州以外でもアルバータ州の、政府直営のリカーストアや私営のリカーストアなどで販売しているそう。州政府直営のリカーストアとは、カナダでは酒類はアルバータ州を除いて100%州政府による流通管理をされています。そのため、『Yu』は政府の流通を経由して販売されています。
では、日本での販売はしているのかどうかお聞きしたところ、『現在は個人輸入でのみ、輸出を行っている。』とのこと。流通の手段は確保しているそうで、日本に送ったケースも既にあるそうです。しかし、カナダのBC州(ブリティッシュコロンビア州)での定価以下で売ることができないため、日本のお客様には送料とあわせると少し値が高くなってしまうんだとか。小林さんは『近い将来、日本に業者を通して輸出をし、日本の酒屋やレストランなどでも購入できるようにしたいと望んでいます。』と語ってくださいました。
3. まとめ
日本にいると、「日本酒」と呼んでいるので、どうしても日本だけのものというイメージが先行してしまいます。しかし、『Yu』のように海外で造られ、そしてその場所で受け入れられている酒もあることを、ぜひみなさんに知ってほしいなと思います。そして、幅広い日本酒可能性について考えてみませんか。
今後、『Yu』が日本でも安定的に手に入るようになるといいですね。そしたら、ぜひ手にとっていただきたいです。
前編はこちら>>カナダ産日本酒『Yu悠』【前編】- カナダならではのこだわりとは?
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