イギリスのロンドンで毎年開催される世界的なワインコンテスト「International Wine Challenge」(インターナショナル・ワイン・チャレンジ/以下「IWC」)。

SAKE部門の最高賞「チャンピオン・サケ」の審査結果が7月に発表され、兵庫県南あわじ市にある都美人酒造の「都美人 太陽」が選ばれました。

都美人酒造「都美人 太陽」

都美人酒造「都美人 太陽」

2024年のSAKE部門のNo.1に輝いた「都美人 太陽」をはじめ、各カテゴリーのトップにあたる「トロフィー」の受賞酒を楽しめるイベント「プレミアム日本酒試飲会」が、11月2日(土)に都内で開催されます。

今回は、この「プレミアム日本酒試飲会」で提供されるトロフィー受賞酒を、SAKETIMES編集部が試飲しました。各受賞酒の特徴や個性を紹介します。

世界中の専門家が審査するコンテスト

「IWC」は、世界でもっとも影響力があると言われているワインコンテスト。ワインの専門家を中心に世界中のプロフェッショナルがロンドンに集まり、複数回のブラインドテイスティングを通して、厳正な審査を行います。

「IWC 2024」の審査会の様子

「IWC 2024」の審査会の様子

2007年に設立されたSAKE部門は、「普通酒」「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「本醸造酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」「スパークリング」「古酒」「熟成酒」の10カテゴリーに分けられ、各カテゴリーのなかでもっとも優れた出品酒に「トロフィー」の栄誉が与えられます。

2023年から、「古酒」は「Amber Style(古酒)」と「Aged Style(熟成酒)」に分けて審査されていましたが、2024年から、「熟成酒」もトロフィーが選出されることになりました。「IWC」が定めるそれぞれのエントリー条件は、以下となっています。

  • 古酒:黄色から琥珀色に着色している。貯蔵期間(上槽から出荷まで)は3年以上。貯蔵方法(容器、温度)は問わない。自然な熟成タイプ。
  • 熟成酒:酸化熟成が進みにくいように貯蔵温度や貯蔵方法を工夫し、蔵内で1年以上熟成させてから出荷。色合いも変化していないクリアに近いタイプ。

また、近年は、各カテゴリーのトロフィーには及ばなかったものの、トロフィーに準ずる品質の出品酒に与えられる地域別のトロフィー「リージョナル・トロフィー」も設けられています。

今回は、各カテゴリーのトロフィー受賞酒を試飲しました。

  • 普通酒:RICH 山廃 香住鶴(香住鶴/兵庫県)
  • 純米酒:恵那山 純米(はざま酒造/岐阜県)
  • 純米吟醸酒:都美人 太陽(都美人酒造/兵庫県)
  • 純米大吟醸酒:東光 純米大吟醸袋吊り 十八(小嶋総本店/山形県)
  • 本醸造酒:愛宕の松 県内本醸造(新澤醸造店/宮城県)
  • 吟醸酒:渓流 150周年吟醸(遠藤酒造場/長野県)
  • 大吟醸酒:宮の雪 大吟醸(宮﨑本店/三重県)
  • スパークリング:出羽桜 AWA SAKE(出羽桜酒造/山形県)
  • 古酒:華鳩 貴醸酒8年貯蔵(榎酒造/広島県)
  • 熟成酒:NIIZAWA KIZASHI 2019(新澤醸造店/宮城県)

世界が認めたトロフィー受賞酒の味わいとは?

普通酒:RICH 山廃 香住鶴(香住鶴/兵庫県)

RICH 山廃 香住鶴(香住鶴/兵庫県)

原料米はすべて兵庫県産とし、さらにすべての日本酒を「生酛」か「山廃」で醸している香住鶴。「RICH 山廃 香住鶴」は、兵庫県産の酒米・山田錦と但馬産の食用米を精米歩合68%まで磨いた普通酒。但馬杜氏が継承してきた伝統の山廃仕込みによる、豊かな味わいが特徴です。

テイスティングコメント

穀物のような香りと乳製品のような酸味が、香ばしいクッキーや焦がしたバターを思わせます。ほんのりと塩気があり、口当たりのまろやかさも合わせてクリームチーズのよう。芳醇なコクを感じますが、余韻は軽快で飲み飽きしない味わいです。

純米酒:恵那山 純米(はざま酒造/岐阜県)

恵那山 純米(はざま酒造/岐阜県)

長野県と岐阜県の間にそびえる恵那山。はざま酒造はその伏流水を仕込みに使用し、2016年からは純米酒のみを醸造しています。「恵那山 純米」は、麹米に精米歩合55%の山田錦、掛米に精米歩合60%の五百万石を使用した純米吟醸クラスの純米酒です。

テイスティングコメント

青々とした果実のような甘みとともに、白米のふっくらとした香りも感じます。口に含むと、果実感のある甘みが広がりますが、バランスの良い酸味と苦味のおかげでキレの良い印象。バナナ、メロン、白桃、スモモなど、さまざまな果物のニュアンスを感じられます。

純米吟醸酒:都美人 太陽(都美人酒造/兵庫県)

都美人 太陽(都美人酒造/兵庫県)

都美人酒造は、淡路島に残る数少ない酒蔵のひとつ。SAKE部門の最高賞「チャンピオン・サケ」に兵庫県の日本酒が選ばれるのは初めてのことです。「都美人 太陽」は、特A地区として知られる兵庫県吉川地区の山田錦を精米歩合55%まで磨き、創業当初からこだわり続ける山廃仕込みで造られたお酒です。

テイスティングコメント

濃厚なバニラを思わせる上品な香りとともに、澄んだ貝出汁のような旨味のある香りも感じられます。味わいにも出汁のようなニュアンスがあり、どこかほっこりするような飲み心地。余韻の苦味がちょうどよく、濃醇でありながらも透明感の高い絶妙なバランスが魅力です。

純米大吟醸酒:東光 純米大吟醸袋吊り 十八(小嶋総本店/山形県)

東光 純米大吟醸袋吊り 十八(小嶋総本店/山形県)

創業は安土桃山時代という長い歴史をもつ小嶋総本店。「東光 純米大吟醸袋吊り 十八」は、山形県が大吟醸クラスの日本酒のために開発した酒米「雪女神」を精米歩合18%まで磨き、圧力をかけない「袋吊り」の手法で自然に滴り落ちたお酒だけを集めました。

テイスティングコメント

トロピカルフルーツなどの果実、さらにユリなどの白い花を思わせる官能的な香りが印象的。ツヤのある絹のような舌触りで、甘みと酸味がバランスよく調和した美しい果実感があります。味わいは穏やかで、心地よい余韻が長く続きます。

本醸造酒:愛宕の松 県内本醸造(新澤醸造店/宮城県)

愛宕の松 県内本醸造(新澤醸造店/宮城県)

昨年の「IWC」では、純米酒と本醸造酒の2カテゴリーでトロフィーを獲得した新澤醸造店。「愛宕の松 県内本醸造」は、1873年の創業当時から造り続けている地元限定の本醸造酒です。精米歩合70%の国産米を用い、マイナス5度の氷温貯蔵による品質管理で、吟醸クラスと遜色ないクオリティを実現しています。

テイスティングコメント

本醸造酒というカテゴリーからは想像できない、青リンゴのような若々しく爽やかな甘みのある香り。蜜のような香りも感じられます。飲んでみると、ほんのりとしたやさしい甘みを芯のある酸味が支え、雑味を感じないまま、余韻は短く切れていきます。

吟醸酒:渓流 150周年吟醸(遠藤酒造場/長野県)

渓流 150周年吟醸(遠藤酒造場/長野県)

近年の「IWC」で高く評価されている長野県の日本酒。2024年は、遠藤酒造場が創業150周年を記念して醸した吟醸酒がトロフィーを獲得しました。吟醸酒ですが、大吟醸酒と同じように丁寧に造られた、地元に愛されている定番酒です。

テイスティングコメント

ビスケットのような香ばしさ、バニラのような甘み、そして味噌や醤油などの発酵調味料を思わせる香り。味わいはバタースコッチのようですが、口当たりは軽やかで、ほんのりと梅のような酸味も感じます。燗酒にしても楽しめそうな一本です。

大吟醸酒:宮の雪 大吟醸(宮﨑本店/三重県)

宮の雪 大吟醸(宮﨑本店/三重県)

全国の居酒屋などで親しまれている「キンミヤ焼酎」の製造元でもある宮﨑本店。実は日本酒も造っています。「宮の雪 大吟醸」は、山田錦を精米歩合38%まで磨き、食前酒としても食中酒としても優れたお酒に仕上がっています。

テイスティングコメント

柑橘系の酸味と小麦のような香ばしさが合わさり、レモンタルトのような印象。口当たりはなめらかで、大吟醸酒ならではの透明感がありながら、しっかりとした旨味も感じられます。アルコールの刺激はほとんどなく、バランスのよい酸味と苦味が心地よいキレを生んでいます。

スパークリング:出羽桜 AWA SAKE(出羽桜酒造/山形県)

出羽桜 AWA SAKE(出羽桜酒造/山形県)

2008年と2016年に「チャンピオン・サケ」を獲得している出羽桜酒造。「出羽桜 AWA SAKE」は、スパークリング日本酒の世界的な普及を目指して設立された「AWA酒協会」の厳格な基準をもとに醸された一本。アルコール度数は13度で飲みやすく、瓶内二次発酵による自然なガス感が特徴です。

テイスティングコメント

レモンや梅のような酸味のある甘い香りと、米の甘みも感じられます。柑橘系の酸味に続いて、わたあめを思わせるやさしい甘みがふわりと広がります。泡がきめ細かく、シャープで心地よいガス感に次の一杯を刺激される、完成度の高いスパークリング日本酒です。

古酒:華鳩 貴醸酒8年貯蔵(榎酒造/広島県)

華鳩 貴醸酒8年貯蔵(榎酒造/広島県)

昨年に続いて、古酒のカテゴリーでトロフィーを受賞した「華鳩 貴醸酒8年貯蔵」。仕込み水の一部に日本酒を用いて醸した「貴醸酒」を、さらに8年間も熟成させた榎酒造の看板商品です。

テイスティングコメント

スパイシーな香りに、干し椎茸、ドライレーズン、カラメルのようなニュアンスを感じます。香りは複雑で重厚感のある印象ですが、飲んでみるとそれほど重たい印象はありません。そのまま飲んでもおいしいですが、アイスクリームなどにかけても楽しめそうです。

熟成酒:NIIZAWA KIZASHI 2019(新澤醸造店/宮城県)

NIIZAWA KIZASHI 2019(新澤醸造店/宮城県)

本醸造酒のカテゴリーに続いて、熟成酒のカテゴリーでも、新澤醸造店はトロフィーを獲得しました。「NIIZAWA KIZASHI 2019」は、約350時間をかけて精米歩合7%まで磨いた契約栽培米・蔵の華を用いた純米大吟醸酒を、マイナス5℃で5年間熟成。毎年異なるアーティストとコラボし、この年は現代美術家・荒神明香さんがラベルを手掛けました。

テイスティングコメント

蜜がたっぷりの熟したリンゴのような力強い甘みのある香り。熟成酒の概念を覆すような澄んだ味わいで、蜜のようなとろみと凝縮した甘みが感じられます。甘みの印象が強いですが、余韻はドライ。エレガントで洗練された味わいの一本です。

「International Wine Challenge 2024」のトロフィー受賞酒

「IWC 2024」のSAKE部門のトロフィー受賞酒は、昨年よりもさらにバラエティに富んだ味わいで、日本酒の魅力のひとつである多様性を感じました。

11月2日(土)に東京都内で開催される「プレミアム日本酒試飲会」では、この記事で紹介した商品だけでなく、リージョナル・トロフィーを獲得した商品も含めた20種類以上の受賞酒を味わうことができます。

いま、世界でどんな日本酒が評価されているのかを実際に体験することができる貴重な機会に、ぜひ参加してみてください。

(取材・文:Saki Kimura/編集:SAKETIMES)

「IWC 2024」受賞酒を楽しめるイベントが、11/2に開催!

「チャンピオン・サケ」に輝いた「都美人 太陽」をはじめ、「IWC 2024」のSAKE部門のトロフィー受賞酒を楽しめる日本酒イベント「プレミアム日本酒試飲会」が、野村不動産の主催で、11月2日(土)に開催されることになりました。このイベントは、今年で通算11回目の開催となります。

当日は各部門のトロフィー受賞酒を中心に、全国の24蔵から25点の銘酒が集結します。この機会に、世界が評価した最高峰の日本酒を飲み比べてみてください。

◎イベント概要

  • 名称:プレミアム日本酒試飲会
  • 日時:2024年11月2日(土)
    ・日本酒トークセッション 12:45〜14:00
    ・第1部 14:00〜15:30
    ・第2部 16:30〜18:00
    ※各部入れ替え制。開始時間の30分前から受付。
  • 会場:YUITO 日本橋室町野村ビル 野村コンファレンスプラザ日本橋 6階
    ※受付は5階。
  • チケット種類(料金)
    日本酒トークセッション&第1部(3,500円)
    第1部のみ(3,500円)
    第2部のみ(3,500円)
    ※前売券のみの販売となります。当日券の販売の予定はありません。
    ※定員に達し次第、締切となります。
  • チケット販売ページ
    ・e+(イープラス):日本酒トークセッション&第1部第1部のみ第2部のみ
  • 注意事項:
    ・20歳未満の方はご参加いただけません。
    ・車でのご来場はご遠慮ください。
    ・出展銘柄など、イベントの内容は変更になる場合がございます。
    ・新型コロナウィルスの感染状況によっては、イベントを急遽または予告なく中止・変更させていただく場合があります。
    ・体調のすぐれない方のご参加はご遠慮ください。
  • 主催:野村不動産株式会社
  • お問い合わせ:03-3277-8200(YUITO運営事務局

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