2021年1月に東洋佐々木ガラスが発売した「水の彩(みずのあや)」シリーズ。透明感のある優しい色合いが美しく、「水が作り出す風景」をガラスの器で表現しています。ひとつひとつが職人の手づくりで、独特の風合いも持ち味のひとつ。
また、優れた機能性をあわせ持っているのも魅力です。お酒を薄めることなく冷やせる「氷ポケット」付きの冷酒カラフェや、食器洗い乾燥機が使えるほどの強度があるグラスは、普段使いにぴったり。
美しく、機能にも優れた「水の彩」。その随所に詰まったこだわりや、開発の背景にある思いを伺いました。
ガラス食器産業のリーディングカンパニー
ガラス製ハウスウェア製品を手がけるトップメーカー・東洋佐々木ガラス。明治時代から日本のガラス食器産業を築いてきた「東洋ガラス ハウスウエア部門」と「佐々木硝子」の2社が統合し、2002年に誕生しました。
同社の大きな特徴のひとつが、マシンメイドとハンドメイド両方の設備が併設された、世界的に見ても珍しい工場を持っていること。高品質な製品を安定的に生産できるマシンメイドと、職人の技を駆使して繊細な製品をつくりあげるハンドメイドを適切に使い分けることで、さまざまなニーズに対応することが可能です。
特に強みを持つのは業務用グラス。国産初の食器用強化グラス「HSハードストロング」は、1967年の発売以来、50年以上の歴史を誇るロングセラー商品です。また、2008年には、世界初の強化クリスタル「ファインクリスタル・イオンストロング」を開発するなど、確かな技術力に基づいた製品をつくり続けています。
"水が作り出す風景"をガラスで表現する
そんな東洋佐々木ガラスが発売した「水の彩」シリーズは、美しいデザインが特徴的な器です。4色のカラー展開で、冷酒カラフェや酒杯、タンブラー、ロックグラスなどがラインナップされています。
今回お話を伺ったのは、「水の彩」の開発に携わったおふたり。営業本部 営業企画部の小澤朋子(おざわ・ともこ)さんと、富樫亜人(とがし・あじん)さんです。まずは開発のきっかけについて、富樫さんは次のように話します。
「キーワードは『水』です。水が注がれたガラスの器に景色が映り込むさまは美しく、ガラスと水は切り離せない関係だと思っています。そして、水は私たちの生活に欠かせないものでもある。そんな水が作り出す風景をガラスで表現できないかと考えたのがスタートでした」
ガラスという無色透明な素材だからこそ表現できるデザイン。それぞれの色には、「空の彩(そらのあや)」「陽の彩(ひのあや)」「森の彩(もりのあや)」「花の彩(はなのあや)」という名前が付けられています。
「カラーバリエーションは『水』に習って自然界から決めました。それぞれの風景が浮かんでくるような、優しい色合いを意識しています」(富樫さん)
実際に水を入れてみると、まるで水面に自然が映り込んで揺らいでいるよう。ここからはデザイン面を深掘り、さらに「水の彩」の魅力に迫ります。
「どうしてもハンドメイドにこだわりたかった」
「水の彩」シリーズの中でも、特に目を引くのは特徴的なデザインの「冷酒カラフェ」。外側にくぼみがあり、そこに氷を入れられる仕組みになっています。お酒と氷が分けられるので、お酒を薄めずに冷やすことが可能です。
一見、近代的にも感じますが、このデザインが生まれたのは40年も前だったといいます。
「当初は白ワインのために生まれたデザインでした。お客様からとても評判が良いので、この40年間で少しずつ姿を変え、さまざまな形で使い続けてきました。ワイン向けだともっと首が長いデザインなのですが、『水の彩』のカラフェは日本酒を酒杯に注ぎやすい形状にしています」と、小澤さんは話します。
4種類のカラー展開にもこだわりが詰まっています。青やピンクなどメインとなる色はありますが、よく見ると、3色を組み合わせてひとつのカラーが表現されています。
例えば、「空の彩」は青・白・紫の3色を絶妙なバランスで組み合わせて、深みのある雰囲気に。富樫さんは「色合いをしっかりと表現しながらも、透明感を出す必要があります。このバランスには悩みました」と、開発当時の苦労を振り返ります。
また、ある程度まとまった数を作ることを前提としていながら、職人による手づくりである点も「水の彩」の大きな特徴です。「水の繊細な姿を表現するためには、どうしてもハンドメイドにこだわりたかった」と話す富樫さん。色の付き方はひとつひとつ異なり、同じ模様はふたつとありません。
「ハンドメイドは独特の風合いが魅力です。ただ、作家さんがつくる一点物とはまた違います。手づくりのよさを伝えつつ、『シリーズもの』としての統一感を出さなければいけません。品質管理には苦労しましたが、こだわりたいポイントでした」(小澤さん)
「日常で気軽に使える器」を目指して
続いて、機能性について伺っていきましょう。「水の彩」は、東洋佐々木ガラスの独自技術である「全面イオン強化加工(カラフェは除く)」と、独自素材の「ファインクリスタル」をかけ合わせた製品です。
「全面イオン強化加工」とは、化学的な処理により、グラス全面の耐久性を大きく向上させる加工。強度が向上し、傷が付きにくくなるほか、温度変化にも強いことから食器洗い乾燥機を使うこともできます(カラフェは除く)。
また、 独自に開発した新素材「ファインクリスタル」は、鉛を含まないクリスタルガラスです。
クリスタルガラスは透明度や屈折率が高いことから、とても美しい輝きが特徴で、バカラなどの高級ブランドでも使われているほど。ただ、鉛を含んでいるために、一般的にアルカリ性洗剤を使うことが多い食洗機で洗うと、アルカリ性洗剤によりガラスが浸食され、表面が白くくもったように見える「白化」が起こります。
一方、「ファインクリスタル」はクリスタルガラスと同様の美しさを持っていながらも、鉛を含まないためにアルカリ性洗剤に強く、業務用の食洗機で4,500回も洗っても白化することはありません。
「とにかく、日常で気軽に使える器を目指しました。どんなに美しくても、割れやすい器だと取り扱いに気を使うので、普段使いには向きません。そこで、『割れにくく、傷がつきにくいガラス』を追求し、たどり着いたのが『全面イオン強化加工』と『ファインクリスタル』だったんです」(小澤さん)
ハンドメイドならではの薄いガラスは、口あたりのよさはもちろん、「思っていたよりも軽い」という声も寄せられているのだとか。繊細な見た目をしていながらも、軽くてタフ。まさに、東洋佐々木ガラスの技術力を結集して生まれた製品です。
「ふだんの食器にこだわりがある方には、ぜひ手にとってみてほしい」と語るおふたり。さらに小澤さんは、「水の彩」のようなこだわりが詰まった、ガラス酒器の開発を続けていきたいと話します。
「ガラス酒器は、もともと嗜好性の高い製品です。お客様の好みも細分化してきているので、これからはもっと多種多様な酒器が必要とされるようになるでしょう。会社としても、お客様が求めるシーンに合った酒器を生み出していきたいですね」
「水の作り出す風景」という形なきものを見事に描き出した「水の彩」。デザインと機能性が相まって、日常に欠かせない存在になってくれるはず。ぜひ手に取って、その魅力を感じてみてください。
◎商品概要
- シリーズ名:「水の彩」
- ラインナップ:冷酒カラフェ/杯/タンブラー/オンザロック
- 材質:ファインクリスタル(クリスタルガラス)
- 原産国:日本製
(取材・文:藪内久美子/編集:SAKETIMES編集部)
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