みなさんにとって「パック酒」の印象は、どんなものでしょうか。「安くて、あまり美味しくないもの」「昔からあって、進化のないもの」「酒飲みのおじさんたちが飲むもの」――こうした先入観から、パック酒を一度も買って飲んだことのない人の数は、少なくないかと思います。

しかし、そんな偏見を払拭し得る、まったく新しいパック酒が誕生しました。その商品は「菊正宗 しぼりたて ギンパック」。酒造りの最新技術が詰め込まれたこのパック酒は、有名地酒や吟醸酒とも肩を並べるほどの出来だといった声も多く、業界内でも話題となっています。なぜ、ここまで品質面で高く評価される酒を、安価なパック酒で実現することができたのでしょうか。

菊正宗酒造の魅力に迫る特別連載の第9回では、「菊正宗 しぼりたて ギンパック」にフォーカスを当てます。菊正宗総合研究所の前所長であり、現在は生産部・生産管理グループ課長を務める高橋俊成さんに、ギンパックの開発背景について、お話を伺いました。

ユーザーテストで、人気地酒と肩を並べた"パック酒"

2016年9月より発売が開始されたギンパックは、パック詰めの普通酒です。参考小売価格(税抜き)は900MLで748円、1.8Lで1480円と、一般的なパック酒とほぼ同様の価格帯となっています。

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「食卓をもっと上質に」というコンセプトで開発されたギンパックの最大の特徴は、“香り”にあります。菊正宗が独自に開発した新酵母「キクマサHA14酵母」を使用することで、豊かな吟醸香を普通酒に残すことに成功。しかも、香気の元となる成分(カプロン酸エチル)の含有量は、ほかの銘柄の大吟醸酒に匹敵するほど。その華やかな香りを生かすために、火入れも1回のみに抑えており、生酒に近い瑞々しい味わいとなっています。

従来のパック酒とは一線を画した、高級感あふれる風味を誇るギンパック。発売前に実施したユーザーテストでは、8割以上の日本酒愛好家が「フルーティーで美味しい」と回答しています。また別の調査ではブラインドテスト(銘柄を隠した上でいくつかの酒のテイスティングをすること)で、パック酒とは倍以上する価格帯の人気地酒と、同等の評価を受けたというデータも出ています。

なぜ、そこまで品質面で評価されている酒を、日常的に飲めるような価格帯で提供できるのか。一般的に、日本酒の値段の高さは、磨きの度合いに大きく左右されます。吟醸や大吟醸のように、高精米になるほど技術力も必要になり、でき上がる清酒の量も少なくなるからです。一方、ギンパックは“普通酒”であり、米の磨きはそこまで大きくありません。今までは米を磨かなければ出せなかった“香り”を普通酒でも引き出せたことが、ギンパックの評価の高さと安さを両立させているのです。

味よりも、香りの方が「美味しさ」につながりやすい

ギンパック酵母開発の中枢を担った高橋さんは「日常に驚きを与えたかった」と、開発動機についてこう話します。

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「私はずっと、日常酒の世界で“これまでにないもの”と模索してきました。毎日ちょっとずつ飲んでもらえるお酒で、消費者をびっくりさせたい。ギンパックは、長年かけて、その思いがひとつの形となった商品です」

高橋さんがギンパックのアイディアを思いついたのは、今から15年前のこと。意外にも着想のきっかけはペットボトルのお茶飲料だったのだとか。

「当時、あるお茶商品のラベルに“おいしさは香り”と書いてあって、『確かに!』と思ったんです。人は美味しさの判断をするのって、最初は目で、次は鼻を頼りにしているんですよね。とりわけ日本酒においては、微妙な味の違いよりも、香りの有無の方が圧倒的にわかりやすい。そこから、『低価格なお酒でも、もっと香りを引き出せたら、美味しく飲んでもらえるのでは?』と考えるようになったのが、ギンパックの出発地点でした」

ここから高橋さんの「磨かなくても香りが出る方法」を模索が始まります。そして、今から10年前に、それを可能にする「キクマサHA14酵母」の親株となる酵母の開発に成功しました。しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。

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「うちの会社では、生酛を始めとした手仕事の“造り”、そこから生まれる“押し味”を重んじています。そこで『味よりも香りが大事』なんて方針でやっていくことは、ある意味タブーだったんです。だから、もう黙々と研究をして、結果で示すしかないなと思って。材料や造りの技と並んで、科学的な技術の革新も、同様に評価されてほしかったんですよね」

新酵母を用いたギンパックの商品化は、5年前から具体的に検討が進められてきました。この酵母の良さを最大限引き出すには、何度でどれくらいの期間発酵させるべきか。米はどれくらい削るとよいのか。工程ごとに途方もなく地道なトライ&エラーが繰り返され、少しずつベストな製造ラインを構築していった、ギンパック開発チーム。その中では、菊正宗が最近リリースした新たなブランド「百黙」の技術も生かされているそうです。

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「百黙は、原材料から造りの細部に至るまで、最高峰を目指そうと立ち上がったブランドプロジェクトです。そこで磨いたろ過の技術が、ギンパックの製造過程でも応用されています。一方はハイエンド狙いで、もう一方はローエンド狙いの商品ですが、『お客様によりいいものを』という気持ちに変わりはありません。正直、百黙の技術開発がなければ、ギンパックは完成していなかったと思っています」

「お米を磨くの、もったいなくないですか?」

一般的なイメージとして「パック酒は美味しくない」という印象を持たれがちですが、瓶の酒と何か違いが出るのでしょうか。高橋さんは「パックと瓶で品質に大きく差が出ることはない」と答えます。

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「たとえば、パックの牛乳と瓶の牛乳で、そこまで大きな味の違いを感じますか? もし、パックで品質が著しく落ちるようなことがあれば、牛乳だって瓶が主流のままのはずですよね。利便性を考えれば、パックの方が瓶よりも温度管理がしやすく、遮光性もあるので、品質への影響は少ないでしょう。パック酒についてネガティブなイメージがついているのは、消費者が“お酒を頭で飲んでいる”側面が強いのかな、と感じます」

お酒を頭で飲んでいる――この指摘を踏まえると、「パックと瓶」にまつわる問題は、そのまま「普通酒と吟醸酒」の関係性についても、同様に考えられそうです。高橋さんは、昨今の吟醸酒の流行や、“削りの競い合い”について、少し疑問を抱いていると話してくれました。

「だって、お米を磨くの、もったいなくないですか?(笑) 個人的に“削る”って行為が、あんまり好きじゃなくて。先週もね、契約している農家さんの田んぼを見に行って来ました。話を聞いたり、作業を見たりすれば分かりますが、お米を育てるのって本当に大変なんです。それを半分とか、7割とか削ってしまうのが、申し訳なく思えてくるんですよ。
普段、私たちが食べている白米は、8%ほどしか削っていない。削ったら、それだけ旨味が少なくなってしまうから。日本酒だって同じです。削れば香りは出ますが、米の旨味は損なわれていきます。だったら『なるべく削らないで、そこに香りを乗せられる方法を考えていきましょうよ』と、私はどうにか伝えたかった。ギンパックが、“米を削る”という行為について、あらためて考えるきっかけになってくれたら嬉しいですね」

酒造りの技術ばかりでなく、その周辺に携わる人々の思いまでくみ取り、日々研究に勤しむ高橋さん。ギンパックの今後の展望について、次のように語ります。

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「まずは、ギンパックが皆さんの手に届くようになって、多くの方々に飲んでいただきたいです。その上で、少しずつ生産の拡大ができたらいいかなと。次の展開は……まだノープランですけど、生酛の技術をうまく取り入れていきたいですね。やっぱり、菊正宗の原点は生酛の酒造りなので。
先日、大隅良典先生がノーベル医学・生理学賞を受賞されましたよね。大隅先生が突き詰められていたことって、ほかに誰もやってこなかった研究領域なんですよ。一方で、iPS細胞の分野は、みんながしのぎを削りながら競い合っている。今の吟醸ブームは、iPS細胞の土壌と似ていると思います。私が目指したいのは、大隅先生のような、オンリーワンの世界です。これからも、最新の技術を柔軟に利用しながら“誰も飲んだことのないもの”を造っていきたいなと思っています」

誰も飲んだことのない、オンリーワンの世界を目指す。高橋さんが見つめるのは、はるか高みにあるようです。

日本酒のプロは「ギンパック」をどう評価する?

最新の技術と熱い思いの下に生まれた、次世代のパック酒「菊正宗 しぼりたて ギンパック」。造り手はこれを、“誰も飲んだことのないパック酒”だと表現しますが、飲み手はどのように感じるのしょう?

今回、"日本酒ファン"の代表として、酒ジャーナリストの葉石かおりさんにギンパックを試飲いただき、その感想を伺いました。

◎葉石かおり(酒ジャーナリスト、エッセイスト)
全国の酒蔵を訪れ、各メディアにコメント、コラムを寄せる。NHK Eテレ「日本酒のいろは」の日本酒講師を務める。2015年より一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。サケ・エキスパートの認定講座を国内外で実施。

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「『菊正宗 しぼりたて ギンパック』を初めて飲んだとき、パック酒の印象が一瞬で変わりました。リンゴやマスカットを思わせるフルーティな香味と、余韻を残しつつスッと引く潔いキレ、そしてリーズナブルでありながら、酒徒をじゅうぶんに満足させるクオリティ。これが実現できたのは、江戸時代から伝承される“生酛造り”を今もなお継続する菊正宗の高い技術力があったからこそ。これを試さない手はありません」

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「フルーティな味わいは、白身のカルパッチョやパプリカのマリネなど、上質なエキストラバージンオリーブオイルを使ったイタリアンとの相性が抜群。それ以外にも『菊正宗 しぼりたて ギンパック』は、ペアリングのストライクゾーンが広く、香味に合わせたフルーツを使った料理とも良く合います。私が合わせたのはいちじくの生ハム巻き。甘酸っぱいいちじくと生ハムの塩気、そしてフレッシュな味わいのギンパックが口中で渾然一体となり、最高のハーモニーを奏でます。グラスはぜひワイングラスで。華やかな香りがよりいっそう際立ち、おいしさがさらにアップしますよ」

"プロの飲み手"ともいえる葉石かおりさんも絶賛するギンパック。読者の皆さんはどう感じるでしょうか? ぜひ一度、ご賞味ください。

(取材・文/西山武志)

 

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