その昔、東海道の宿場町だった滋賀県湖南市の石部で造られる酒は、その美味しさが他人に知られるのが惜しいと、"語らずの酒"として重宝されたといいます。当時から、石部の地酒がいかに愛されていたのかをうかがわせるエピソードです。

そんな石部の地で、140年以上にわたって酒造りを続けてきた竹内酒造。地酒としてのポジションを大事に、地域に根差した酒を届けることにこだわってきました。

竹内酒造の日本酒は、地元の方々にどのように受け入れられているのでしょうか。滋賀県内の飲食店に話を伺いました。

顔が見えるという安心感

最初に訪れたのは、近江八幡市の駅前に店を構える「日本料理 ひょうたんや」。創業70年の歴史ある料亭です。洗練された和の空間でいただく料理の数々にはファンが多く、リピート率はなんと95%!3ヶ月先まで予約が埋まっている人気店です。

「ひょうたんや」の内観

話を聞いたのは、代表取締役の中島和義さん。2代目としてのれんを守りながら、東京や京都に姉妹店「CHIRIRI」を出店し、老舗の味を各地に広めています。名物「つゆしゃぶ」は、薄切りの豚肉を湯がき、五段仕込みの特製つゆに絡めて食べるオリジナル料理。たっぷりの白ネギと柚子唐辛子を加えていただくのが、ひょうたんや流です。

「ひょうたんや」名物の「つゆしゃぶ」

「ひょうたんや」名物の「つゆしゃぶ」

「ひょうたんや」では日本酒のラインナップに、竹内酒造の「香の泉 鳳紋」を欠かしません。中島さんは「『香の泉』に出会って、地酒の認識が変わった」と語ります。

株式会社ひょうたんや代表取締役の中嶋和義社長

株式会社ひょうたんや 代表取締役・中嶋和義

「滋賀県には、宴会の席で酒を返杯し合う伝統があります。お互いに同じ盃で酒を飲み、飲めないと『俺の盃が受けられへんのかい』と、こうなるんです(笑)。『香の泉』でこれを続けていると、盃が自然とねばついてくる。きちんと米で造られた、混じりけのなさがここに表れていると感じました。舌の上で転がすと、ちゃんと米の味がするんです」

それまで、地酒は高価で手に入りづらいものという先入観をもっていた中島さん。竹内酒造の熱心な営業を受けて取り扱いを始めると「アルコールのツンとした感じがない」「飲み続けても悪酔いしない」と、お客さんからの反応も上々でした。日本酒の苦手なお客さんが「これなら飲める」と喜んでくれたこともあったそうです。以来20年にわたって、店の定番酒になっています。

「宴会が増える季節には飛ぶように注文が入りますね。系列店も合わせると、年間4,000本は出ますよ」

竹内酒造の「香の泉」

また、中島さんと竹内酒造の間にはこんなエピソードも。取り扱いを始めた頃、蔵元に直談判し、酒造りを手伝わせてもらう機会を得たそう。蔵人に混じって麹室で作業したことは、酒を扱う上での良い経験になったと中島さんは話します。

「実際に作業して、酒造りがいかに大変かを思い知りました。造った人の顔が浮かぶ酒は、やはり良いもの。顔の見えるお付き合いができることで、私たちも安心してお客さんにすすめることができる。この信頼関係は地域に根差しているからですよね」

地元食材を引き立たせる「唯々」

続いて向かったのは、大津駅前で3年前から営業している「割烹 成」。隠れ家的な雰囲気の店です。若き店主・北村孝生さんが奥様とふたりで切り盛りしています。京都の料亭で腕を磨いた北村さんが手がける正統派の和食に惹かれ、地元の食通も足繁く通うのだとか。

「割烹 成」の外観

「成」では「唯々」を常にラインナップしているほか、季節限定酒も取り扱っているのだそう。竹内酒造との出会いは、懇意にしている酒販店からすすめられたことでした。

「割烹 成」の店主である北村孝生さん

「割烹 成」店主・北村孝生さん

「滋賀県内の地酒をメインで扱っている酒屋さんから『唯々』を教えていただいたんです。試飲してみて、純米大吟醸酒でありながらキレが良く、きれいな酒だなと感動したのを覚えていますね」

それ以来「唯々」を欠かしたことはないとのこと。

「お客さんのほうがよく知っていて、こちらがすすめる前に『唯々』をご指名いただくことが多いです。県内の日本酒を10種類ほど揃えていますが、いくつか飲み比べて『唯々』が一番美味しいとおっしゃる方もいらっしゃいますよ」

「割烹 成」の地元食材を使った料理

「成」では、仕入れる食材のほとんどが地元産。特に天然のスッポンやうなぎをはじめとした琵琶湖の恵みには自信があります。どれも大ぶりで、天然物らしい力強い味わいが特徴です。

地元のものが地元で食べられないのはもったいないし、そういう食材に出会える場所でありたいという思いから、地産地消を店のテーマに据えました。「『唯々』なら、脂がのった食材にも負けない」と北村さん。

「滋賀県の日本酒はどっしりした味わいのものが多いですが、『唯々』はすっきりしていて料理と合わせやすく、かつ飲みやすいと思います。繊細な味わいの料理にはそっと寄り添い、脂がのった料理なら口の中をさっぱりさせてくれるような、そんな酒ですね」

「割烹 成」の内観

京都出身の北村さんは、店に立つたびに滋賀県民の地元愛をひしひしと感じるのだそう。そんなお客さんたちにも選ばれる「唯々」。竹内酒造の実直さが伝わっているのか、まだ新しい銘柄ながら、すでに地酒として愛されています。

「滋賀県の食材をメインで扱っているからこそ感じるのは、その土地の日本酒と合わせることで、料理がよりいっそう引き立つということ。『唯々』だけではなく、料理も楽しんでいただけるよう、私も腕を磨かないといけないですね」

愛されるのは、信頼関係があるから

「単品で美味しい酒も良いのですが、あくまでメインは食事。日本酒は脇役としての仕事をしてくれたらいいんです」

連載第1回で、竹内酒造の武石社長が語ってくれた言葉です。竹内酒造では食中酒であることを日本酒の本質と捉え、奇をてらうことのない酒造りに取り組んできました。今回の取材では、飲食店の方々にもその思いがきちんと伝わっていることがわかりました。

竹内酒造「唯々(ただただ)」のボトル

長きにわたって伝統を継いできた酒蔵と、地元愛をもってお客さんを迎える飲食店。双方ともに信頼しあう関係があるからこそ、竹内酒造の日本酒は地元に根付き、土地の人に愛され、飲み継がれているのではないでしょうか。

(取材・文/渡部あきこ)

sponsored by 竹内酒造株式会社

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