新潟県加茂市にある全量純米蔵「雪椿酒造株式会社」。醸された日本酒の県外出荷量が蔵全体の85%を占めているため、東京のさまざまな飲食店でも、その味わいを楽しむことができるんです。連載第3回となる今回は、雪椿酒造のお酒が実際にどんなお店で愛飲されているかをご紹介します。

手仕事にこだわる雪椿酒造のお酒に、ぴったりと寄り添うお店があると聞きつけ、編集部は東京都武蔵野市吉祥寺に駆け付けました。

"住みたい町"の代名詞として知られる人気エリア・吉祥寺で、地元の人を中心に愛されている「やぐや KICHIJOJI」。家庭的な料理を楽しむことができ、子ども連れの家族から80歳を越えた老夫婦まで、幅広い世代に人気です。

雪椿酒造の「純米吟醸 ゆきつばき」をはじめ、こだわりの日本酒が豊富に揃っているのはもちろん、お店に訪れた人を虜にするのが、スタッフの人柄と居心地の良さ。温かいおもてなしが受けられると評判の「やぐや」で、その魅力を体感してきました。

おもてなしの心が詰まった、家庭料理の店「やぐや」

JR中央線吉祥寺駅の北口から徒歩5分。駅前の喧騒から少し離れたビルの3階に「やぐや」はあります。

お店に到着すると、まず目に入ってくるのは、木のぬくもりが感じられるカウンター席とテーブル席です。

店内はどこからでも目の届く広さ。だからこそ、気持ちの良い接客ができるのでしょう。「遠い親戚の家へ遊びに来たような気持ちになってもらえれば」という想いで設計されたのだとか。

パノラマキッチンに重ねてある器やテーブルに並んだ箸置きなど、食器類は色も形もバラバラ。スタッフの方に尋ねてみると「お客さんがよく譲ってくれるんです」とのこと。「やぐや」がいかに愛されているのか、よくわかりますね。

メニューには人気のチキン南蛮をはじめ、豚の角煮や唐揚げ、コロッケなど、食卓に並んでいたらうれしくなるような、家庭的な料理が目立ちます。

お酒のラインアップも充実。特に日本酒は、メニューに載っていないお酒も豊富に取り揃えているのだそう。リクエストすれば、好みや食べている料理に合わせて、スタッフがおすすめの一杯をセレクトしてくれます。

「スタイリッシュな盛り付けをしようとは思っていません。食べやすさや、みんなで食べるときのシェアしやすさを考えています」

そう話すのは「やぐや」の店長で、その運営会社である「夢追団(ゆめおいだん)」の代表も務める矢口陽介さん。料理長を務めるのは、矢口さんの奥様です。

「僕は家で食べるご飯が一番美味しいと思っています。奥さんが料理長を務めているのも、その方が安心して食べられるから。お母さんが旦那さんや子どもたちのために新しい料理に挑戦したり、彼女が彼氏に作ってあげたりするような、想いのこもった料理を目指しています」

客層のターゲットも特に決めていないという矢口さん。あえて決めるとしたら、"おいしいものを食べることが好きで、人とコミュニケーションを取るのが好きな人"だそう。おじいちゃんやおばあちゃん、お子様、お孫さんといっしょに来ても、みんなの食べたいものがあるお店という意味で、"大人のファミレス"を意識しているといいます。

もともと矢口さんは昭島市の飲食店でアルバイトをしていました。そのときいっしょに働いていたバイト仲間たちとともに「夢追団」を設立。出店先を探していたときにちょうど今の物件を見つけ、2010年3月に「やぐや」をオープンしました。「やぐや」という店名は、矢口さんの考案です。

「僕の名前が『やぐち』なので、『やぐや』は"僕の家"という意味なんです。お店の売りは何かと考えたときに、『こういうお店にしたい』『こういう空間を作りたい』という僕の想いこそが商品なんじゃないかと思って、そのまま僕の名前をつけました。まわりからは反対されていたんですけどね(笑)」

矢口さんが目指しているのは、お店に来た人たちに笑顔で帰ってもらうこと。「みんなに喜んでほしいからやっている。そのためだったら、飲食店という形じゃなくてもいいと思っているくらい」と、熱く語ってくれました。

そしてその想いは、創業メンバーであり、お店の看板娘としていつも笑顔でお客さんを迎える須藤麻美さんも同じだといいます。

「『誰かの幸せが私たちの喜びにつながる』。そんなお店を作りたいという理想が創業当初からあって、それを実現する毎日です。お店に来てくださった方の笑顔が、入店したときよりも帰るときの方がすてきになっていたらいいなと思いますね。

大切な人と過ごす時間をもっと幸せに感じてもらえるためにはどうすればいいかと考えると、私たちの想いを乗せることが一番。それが日々の営業に繋がっているのかな」と、須藤さん。

「『いらっしゃいませ』よりも、『おかえりなさい』という気持ちでお客さんを迎えていますね」と、矢口さんも言葉を繋ぎました。

ほっとするやさしい味!おすすめメニューをご紹介

ふたりの温かいお話からお店の魅力が伝わってきたところで、おすすめの料理を作っていただきました。

まずは、ぐつぐつと煮えた「やぐやの牛すじ豆富」(690円)。

トロトロの牛すじと、表面をカリッと揚げた豆腐の食感が絶妙!濃い味つけに見えますが、毎日食べたくなるような、ほっとするやさしい味わいにしてあるのがポイントです。

続いて「やぐやの豚角煮」(レギュラーサイズ 980円、ハーフサイズ 590円 ※写真はレギュラー)。

豚角煮のイメージとは違う、おしゃれな盛り付けで運ばれてきました。食べやすい形にカットされた角煮の上には、マッシュポテトとフライドガーリック。アメリカンな雰囲気が漂っています。

一口食べてみると、味はたしかに豚角煮。2日間じっくり煮込んだ角煮は、箸がスッと通るほど柔らかく、味もよく染みていました。こちらも見た目の印象よりもさっぱりとした味つけ。「女性にこそ食べてほしい」と、矢口さんイチオシの一品です。

そして、編集部が特に「美味しい!」と絶賛の声を上げたのが「名物!大和芋焼き」(640円)。

大和芋にレンコンとネギを混ぜて焼き目をつけ、ニンニクとシソを漬けた香り醤油でいただきます。大和芋のふわふわとした食感、レンコンとネギのシャキシャキとした食感が楽しい一品!

小さい子どもでも喜んで食べそうな素朴な美味しさに、こだわりの香り醤油が深みを与えていました。

美味しい料理には美味しいお酒がつきものですよね。

ここで矢口さんがおすすめしてくれたのは、雪椿酒造の「純米吟醸 ゆきつばき」。米本来の旨味がありつつも、料理の味を邪魔しないので、どの料理とも相性抜群。箸も杯もどんどん進んでしまいます。

現代と昔の日本酒事情をつないでくれるお酒

「やぐや」のお酒を選んでいるのは、矢口さんと須藤さん。ふたりとも、日本酒が大好きなのだとか。そんなふたりから見て、雪椿酒造のお酒には、どのような魅力があるのでしょうか。矢口さんにお話を聞きました。

「『純米吟醸 ゆきつばき』は何にでも合いますね。冷たい料理といっしょに注文された場合は冷酒で出しますが、温かい料理のときは常温で提供することもあります。かなり幅広い温度帯で飲めるので、重宝していますよ。

香りの強すぎるお酒には料理を合わせにくいですが、『ゆきつばき』の香りは穏やか。お酒といっしょに、自慢の料理をどんどん食べてほしいですね」

そんな矢口さんと「ゆきつばき」の出会いは、お店をオープンしてしばらく経ったときのこと。知り合いの酒屋に紹介され、そのコストパフォーマンスの高さに「これは良いお酒に出会った!」と、すぐにお店で取り扱うことを決めたのだとか。

「実際に『ゆきつばき』を注文されるお客さんは多いです。ラベルに難しい漢字がどーんと書いてあると、特に日本酒初心者の方はとっつきにくいですよね。逆にスタイリッシュでおしゃれなラベルだと、日本酒を飲もうという気持ちを削いでしまうこともあります。その点、『純米吟醸 ゆきつばき』はちょうど良いと思いますね」

矢口さんはさらに「ゆきつばき」の魅力を語ってくれました。「ゆきつばき」は、日本酒ファンを増やすのに一役買っているお酒だというのです。

「雪椿酒造のお酒って、どちらかというと"昔ながらの新潟酒"ではないですよね。でも、そういうイメージで日本酒を注文する方もいるんですよ。現代と昔の日本酒事情をつないでくれるのに、雪椿酒造のお酒はちょうど良い。

『これを美味しいと思えるなら、お客さんが楽しめるお酒はいっぱいありますよ』と、よく言っています。辛口のお酒が好き、すっきりとしたお酒が飲みたいという方も多いんですが、まずはこれから飲んでほしいというラインアップのなかに、『ゆきつばき』は必ず入っていますね」

「やぐや」をきっかけに、日本酒ファンになる人も多いのだそう。お酒と人、人と人をつなぐ場所になっているんですね。

現在、吉祥寺エリアには「やぐや」の姉妹店がもう1店舗あります。今後、お客さんからの要望が増えれば、店舗数を増やしていく予定とのこと。しかし矢口さんは、「飲食店は多くても5店舗まで。飲食以外の他業種にも挑戦してみたい」と話していました。

吉祥寺で愛されるお店として、「やぐや」はこれからも毎日笑顔でお客さんを迎えてくれることでしょう。

各スタッフが付けている名札に描かれた似顔絵は、すべて矢口さんの自作!

以前、雪椿酒造の飯塚杜氏は「幸せな気持ちで造れば、より美味しいお酒ができる」と語っていました。

雪椿酒造がお酒にかける想いと、「やぐや」の想いは、不思議とシンクロしています。お互いに顔を合わせたことはなくても、まさにお酒が人をつないだ瞬間を目の当たりにした気がしました。

どんな料理にも合う雪椿酒造のお酒や、ほっとする家庭料理、そして素敵なスタッフのみなさんに会える「やぐや」。みなさんもぜひ、訪れてみてください。

(取材・文/芳賀直美)

◎店舗詳細

  • 店舗名:「やぐや kichijoji
  • 住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-8-9 ルミナス吉祥寺3F
  • アクセス:JR中央線 吉祥寺駅北口から徒歩5分
  • 営業時間:11:30~14:30 (L.O. 14:00)/17:00~24:00 (L.O. 23:30)
  • 定休日:月曜日
  • 席数:36席(店内完全禁煙)
  • 電話番号:0422-27-2936

sponsored by 雪椿酒造株式会社

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