2024年3月、北陸新幹線が敦賀駅まで延伸し、首都圏から福井県まで最短で3時間弱で行けるようになりました。今、旅行先のひとつとして、福井県が注目されています。

そこで、SAKETIMES編集部は、読者のみなさんに飲んでほしい福井県の日本酒をピックアップ。4週にわたって紹介します。

第2回は、福井県東部の大野市にある南部酒造場の代表商品「花垣 生酛純米」です。

満開の桜並木のような華やかな美酒

南部酒造場は、福井県の中でも特に豪雪地帯として知られる大野市にあります。首都圏から旅行する場合は、北陸新幹線の福井駅から約50分をかけて、JR越美北線(九頭竜線)の越前大野駅へ。駅から徒歩で約10分の街の中心地区に酒蔵があります。

酒蔵に面した七間通りでは、現在まで400年以上も続く朝市が催され、大野藩の城下町としての歴史を感じることができます。南部酒造場は、もともとは大野藩の御用商人として創業し、その後、1901年(明治34年)に酒造業をスタートしました。

試験醸造を繰り返して完成したお酒は華やかな味わいで、「まるで満開の桜並木のようだ」と評判になりました。その豊かな味わいを美しい花の垣根に例えて、「花垣」と命名したのです。

1997年(平成9年)には、全量を特定名称酒に切り替え、現在は製造量の約3分の2が純米酒。目の届く量を手造りでていねいに醸すことを大事に、米の旨味を引き出した純米酒にこだわっています。

温度や時間による変化を楽しみたい一本

それでは、実際に飲んでみましょう。

編集部が最初に驚いたのは、なんとも美しい透明感のある黄金色。「花垣 生酛純米」は、18ヶ月以上の熟成を経て出荷されるそうで、熟成酒に特有の色味がしっかりと出ています。

炊き立ての白米を思わせる豊かな香ばしさ、温かい出汁のような落ち着いた旨味、さらに、油脂を感じるオイリーなニュアンスには、アーモンドなどのナッツ類の印象もありました。さまざまな要素が絡み合った香りです。

飲んでみると、香りと同じように、ほかほかの白米を食べたような旨味と甘味が感じられます。椎茸からとった出汁のような旨味もあり、まるで味噌汁やスープを飲んでいるような感覚になりました。

穀物酢のようなコクのある酸味、ビターチョコレートのような深い苦味、落葉や稲藁のような大地の力強さを感じるニュアンスまで、複雑でありながら絶妙なバランスの一本。ひと口ごとに新しい発見があり、宝探しをしているような気分です。

しっかりとした旨味とコクのある酸味は、燗にするとさらに花開きます。福井県の郷土料理である「さばのへしこ」など、発酵由来の旨味と酸味を備えたおつまみと合わせれば、すいすいと杯を重ねてしまうでしょう。

常温保管にも耐えられる骨太な酒質のため、時間の経過による変化も楽しめるのではないかと思います。

福井県の日本酒はすっきりとした味というイメージがありましたが、「花垣 生酛純米」はその正反対とも言えるような、複雑で力強い味でした。ただ、米どころとして知られる福井県らしく、地元の米を大事に、米の旨味をしっかりと引き出そうとする姿勢は、どの酒蔵にも共通しているのかもしれません。

(執筆・編集:SAKETIMES編集部)

◎商品概要

  • 商品名:花垣 生酛純米
  • 原材料:米(国産)、米麹(国産米)
  • 精米歩合:70%
  • アルコール度数:15%
  • 容量:720mL
  • 購入価格:1,870円(税込)
  • 醸造元:株式会社南部酒造場(福井県大野市元町6-10)