「粕漬け」は、平安時代には既に存在していたという歴史の長い食品です。当時は、貴族の食文化において楽しまれてきた食べ物だったようで、これが庶民の口に入るようになったのは、江戸時代のことだそうです。
冷蔵設備が今ほど充実してなかった時代には、いかに食糧を保存するかが重要でした。魚や野菜をおいしく、そして長く保存する方法として、粕漬けは親しまれてきたのでしょう。
この記事では、酒粕を使ってつくる「豆腐の粕漬け」をご紹介します。
「豆腐の粕漬け」のレシピ
今回用意したのは、「雪の茅舎」を醸す秋田県・齋彌酒造店の酒粕です。東京・有楽町にある秋田県のアンテナショップ「秋田ふるさと館」で購入しました。
1.粕床づくりと下ごしらえ
まずは粕床の準備です。
「酒粕50gに、日本酒小さじ1、みりん小さじ1、塩ひとつまみ」という配分で合わせています。作りたい味や漬けるものによってアレンジしても良いですが、少し水分があった方が床が滑らかになるので、漬けやすいです。
豆腐は重しをして、水をよく切っておきましょう。水っぽさが残ると、味が薄くなる上に保存性も悪くなります。
2.漬け込み
準備ができたら漬け込んでいきます。
豆腐はキッチンペーパーでぴったり包み、その上から粕床を塗ります。きちんと固定したいので、ラップで包みこんだ状態で冷蔵庫に保存しましょう。タッパーやジップロックに入れておくのが良いと思います。
漬けている最中に水分が出るので、時々様子を見て染み出た水を取り除きましょう。
1ヶ月漬けたものを試食してみました。
見た目は、酒粕の色に染められたようで、豆腐の白さはかなりまばらです。香りは甘くねっとりとした香りで、リキュールのような風味にも感じます。今回は塩をあまり入れていないのですが、ほのかに味噌やチーズのようなニュアンスも感じられます。
水分がほとんど抜けているので、ほろっと崩れる食感。
今回使っている酒粕自体がとてもマイルドな甘さを持っているせいもあり、どこかベイクドチーズケーキのようですらあります。熟成した深い味わいが、非常においしい逸品です。
日本酒との相性が抜群
今回は、酒粕自体の甘みがかなり強く、長期間漬け込んだことでコクもあるツマミだったため、吟醸酒のような香りが立つタイプよりは、コクや旨味を感じられるお酒と一緒の方が、おいしく食べられる1品だと思います。
酒粕はあまりポピュラーに使われている調味料とはいえませんが、粕床は、水分を抜き塩を加えることで繰り返し使えます。野菜、魚、肉などを漬け込むだけで、素材の深みを増す優れものなので、みなさんも気軽に使ってみてください。