世界基準のスパークリング日本酒「awa酒(あわさけ)」の普及活動を行う一般社団法人 awa酒協会が、4月13日(木)に八芳園(東京都)で認定式お披露目会を行いました。

昨年11月に設立された同協会は「awa酒」認定の明確な基準を設け、それらをクリアした8蔵9製品に対し、この日、awa酒認定証を授与。日本酒業界の新たな歴史がついに動き出しました。

"世界基準の乾杯酒"を目指すawa酒

シャンパンやスパークリングワインと並ぶ"世界基準の乾杯酒"を目指すawa酒。世界規模で幅広い認知を得るために、その認定基準を明確にすることが重要とするawa酒協会では、商品開発基準と品質基準の2つの観点から「awa酒」の定義を定めています。

商品開発基準では「醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること」「外観は視覚的に透明であり、抜栓後容器に注いだ時に一筋泡を生じること」「アルコール分は、10度以上であること」などの6項目が定められ、品質基準では「常温で3ヶ月以上、香味、品質が安定していること」などが定められています。

この日、awa酒として認定されたのは以下の8蔵9製品。

  • 「南部美人あわさけ」株式会社南部美人(岩手)
  • 「出羽鶴 明日へ」秋田清酒株式会社(秋田)
  • 「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」八海醸造株式会社(新潟)
  • 「MIZUBASHO PURE」永井酒造株式会社(群馬)
  • 「THE MIZUBASHO PURE 2008」永井酒造株式会社(群馬)
  • 「菊泉ひとすじ」滝澤酒造株式会社(埼玉)
  • 「七賢 星ノ輝」山梨銘醸株式会社(山梨)
  • 「CHIYOMUSUBI SORAH」千代むすび酒造株式会社(鳥取)
  • 「天山 スパークリング」天山酒造株式会社(佐賀)

認定されたawa酒には、認証マークがボトルに付与されます。

「日本の地域から世界へ」awa酒協会の理念

認定式お披露目会ではまず、awa酒協会理事長を務める永井酒造株式会社 代表取締役 永井則吉さんが挨拶を述べました。

「awa酒協会は、日本のawa酒が世界の乾杯シーンでシャンパンやスパークリングワインと肩を並べる存在になることを目指しています。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、awa酒をウェルカム乾杯酒として様々な国から訪れる外国人観光客を大いに歓迎したいと思います。

今後、全国各地の蔵元同士が連携を強め、各地の特色ある自然や文化を生かした酒造りに励み、『日本の地域から世界へ』を合言葉に、awa酒を通じて世界の人・場所・文化を繋げていくことに貢献してまいります」(永井酒造株式会社・永井則吉さん)

その後、衆議院議員 公明党党首 山口那津男さんからのお祝いの言葉、日本醸造協会代表理事・会長 石川雄章さんのご発声による乾杯が行われ、たくさんの参加者がawa酒を楽しみつつ、蔵元との交流を深めていました。

他にも、群馬県川場村村長 外山京太郎さん、衆議院議員 自民党青年局長 鈴木馨祐さんからお祝いの言葉が述べられました。さらに、衆議院議員 自民党農林部会長 小泉進次郎さんもご挨拶に訪れ、永井さんや震災復興支援で蔵を訪問し親交を深めたという南部美人の久慈さんとともにawa酒の認定をお祝いされました。

このお披露目会の目玉は、永井理事長から各蔵へのawa酒認定証授与。各蔵元の誇らしそうな笑顔が会場を彩どり、カメラのシャッター音が幾重にも会場に響きました。

awa酒認定に対する各蔵の想い

今回awa酒に認定された8蔵9製品はどのようなお酒なのでしょう。各蔵元に、製品の魅力について伺いました。

「南部美人あわさけ」株式会社南部美人・久慈浩介さん

しっかりとした旨みがあり、爽やかな発泡と吟醸香が感じられる「南部美人あわさけ」。2杯目に日本酒を飲んでもらうことまでを意識したawa酒なのだそうです。

「スパークリングワインで乾杯すると、2杯目は自然とワインを選んでしまう。日本酒の選択肢が出てこないんですよね。でも、awa酒で乾杯すると『じゃあ、次は日本酒を飲んでみようか』となりやすい。そういう日本酒への入口としてawa酒を造りました」と久慈さん。

「出羽鶴 明日へ」秋田清酒株式会社・伊藤洋平さん

「ドライな味で、ハーブなどを使ったスパイシーな肉料理にもぴったりなawa酒『出羽鶴 明日へ』。料理と響き合うような味わいが感じられるスパークリングです」と伊藤さん。

乾杯酒のみならず、洋食とともに楽しむ食中酒として飲んでみたいですね。

「MIZUBASHO PURE」「THE MIZUBASHO PURE 2008」永井酒造株式会社・永井則吉さん

「白ラベルの『MIZUBASHO PURE』は世界中のどんな料理にも合うドライでエレガントなawa酒です。5年間で700回も失敗して、やっと完成しました。黒ラベルの『THE MIZUBASHO PURE 2008』は、白ラベルが完成した2008年に仕込んだawa酒のビンテージです」

そう語る永井さんは、ビンテージのジャンルでも、ドンペリニヨンやモエ・エ・シャンドンといったビンテージ・シャンパンと肩を並べられるawa酒を目指しているそうです。

「菊泉ひとすじ」滝澤酒造株式会社・滝澤英之さん

20年も前から「もろみの発酵途中で生じるピリピリした味わいを製品として再現したい」とスパークリング日本酒への強い想いを抱いていたという滝澤さん。9年前から開発を開始し、2016年8月、ついに「菊泉ひとすじ」が完成したそうです。

「シャンパンに近い、甘味と酸味の調和が感じられるawa酒です。30代~40代の女性にぜひ飲んでいただきたいですね」と話してくれました。

「七賢 星ノ輝」山梨銘醸株式会社・北原対馬さん

「『七賢 星ノ輝』は、米の甘味と旨みが感じられるawa酒です。発泡があるとアルコールを強く感じてしまうことがあるため、実際のアルコール度数は11度に留め、感覚的に13度に感じられるようこだわって造りました」

こう語る北原さん。酒蔵のある山梨県はワインの生産地でもあり、"アルコール度数13度"は醸造にあたっての基準値として土地に根付いているそう。その基準を意識して造ったawa酒は、地元から海外まで広く馴染みそうですね。

「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」八海醸造株式会社・南雲二郎さん

バランスを大事に、食中酒としてのawa酒にこだわったという「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」。awa酒の今後の可能性について、南雲さんは次のように語ります。

「乾杯酒として用いられるスパークリングワインは酸味が強めで食中酒にはあまり向かず、対してawa酒であれば酸味が控えめで、食事と一緒に楽しむ発泡性の飲み物として新しい選択肢になると思います」

さらに乾杯酒としてのawa酒について、「awa酒の認定により、製品がお客様に寄り添い、より自信をもって"日本酒(awa酒)で乾杯"と言えるようになった」と話してくれました。

「CHIYOMUSUBI SORAH」千代むすび酒造株式会社・岡空晴夫さん

甘味と旨みがしっかりと感じられるawa酒「CHIYOMUSUBI SORAH」。"SORAH(ソラー)"には"美しいオーロラ""朝焼けの星"という意味があり、澄み切った幻想的なイメージのこの製品は、ラベルもオーロラをイメージしてデザインされたそうです。

「スパークリングワインやシャンパンを真似するのではなく、"日本酒の範疇"であることを大事にして造りました」と岡空さんは話してくれました。

「天山 スパークリング」天山酒造株式会社・七田謙介さん

米由来のスパークリング酒として、"どのようなチャレンジができるか"を考え「天山 スパークリング」を造ったという七田さん。

「お米本来のピュアな味わいを生かした辛口のawa酒です。きめ細やかな発泡はまさに"日本人らしい泡"。晴れの日に乾杯のお酒として、また食事と共に楽しむお酒としてもご利用ください」と語ってくれました。

awa酒が切り開く、新しい日本酒の可能性

"awa酒"といってもその特徴はさまざま。旨口や辛口といった味わいや、香り、発泡感にもそれぞれ個性があります。また、日本酒を飲みなれない女性や外国人の"入り口"として、さらに乾杯酒だけでなく食中酒としても機能するなどその活躍の可能性はとても大きいのだと感じました。

今後、awa酒協会を中心として各地域の酒蔵が連携していくことで、awa酒の技術普及やブランディング向上、世界中を視野に入れたスパークリング日本酒の市場拡大が期待されます。世界を舞台にした新たなアルコール飲料の選択肢として、awa酒や日本酒が世界中に広まっていくことでしょう。

(取材・文/古川理恵)

関連記事