多種多様な日本酒の中でも、近年「スパークリング日本酒」の人気が高まっています。甘く飲みやすいものから、米の旨味をしっかり残したものまで、さまざまなタイプがあるスパークリング日本酒は、現在の日本酒人気の一旦を担っています。

そんなスパークリング日本酒の魅力を世界に広めるべく、新たな組織が生まれました。それが「一般社団法人 awa酒協会」です。今回は、11月1日に行われた設立発表記者会見をレポートします。

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世界の乾杯シーンで存在感を示したい

設立発表記者会見の案内には、下記のように設立の趣旨が記載されています。

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界で日本酒に注目が集まるなか、蔵元が一丸となって日本の透明で自然発酵したスパークリング日本酒「awa(あわ)酒」を世界に広めるため、このたび「一般社団法人 awa 酒協会」(以下、awa 酒協会)が設立することになりました。(中略) awa 酒協会は、日本の awa 酒が世界の乾杯シーンでシャンパンやスパークリングワインと肩を並べる存在になることを目指し、全国各地の蔵元同士の連携を強めるとともに、awa 酒の認定基準を定めることによる品質向上を図り、普及促進に努めていきます。

特に乾杯のシーンで使われやすいスパークリング日本酒の価値を、シャンパンやスパークリングワインと同等にまで高めようという試みです。

協会への参加蔵元も、日本酒業界で広く名前の知られている銘酒蔵が並びます。

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理事長:永井則吉(永井酒造株式会社 代表取締役)

副理事長:滝澤英之(滝澤酒造株式会社 専務取締役)

副理事長:久慈浩介(株式会社南部美人 代表取締役社⻑)

理事:南雲二郎(八海醸造株式会社 代表取締役)

理事:岡空晴夫(千代むすび酒造株式会社 代表取締役)

理事:伊藤洋平(秋田清酒株式会社 代表取締役)

理事:七田謙介(天山酒造株式会社 代表取締役)

理事:北原対馬(山梨銘醸株式会社 専務取締役)

※敬称略

事務局は、「里山」をキーワードに「UMAMI」「TAKUMI」を世界・未来に届ける活動をしている「株式会社 ima」が担当するそうです。事務局長には同社・代表取締役社長の三浦亜美氏が就任しました。

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「awa酒」の定義とは?

会見のはじめに「awa酒」の定義について説明がありました。

「awa 酒協会」の定める認定基準には「商品開発基準」と「品質基準」の2つがあります。

商品開発基準には以下の6項目があります。

  1. 米、米こうじ及び水のみを使用し、日本酒であること
  2. 国産米を100%使用し、かつ農産物検査法により3等以上に格付けされた米を原料とするものであること
  3. 醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること
  4. 外観は視覚的に透明であり、抜栓後容器に注いだ時に一筋泡を生じること
  5. アルコール分は、10度以上であること
  6. ガス圧は20℃で3.5バール(0.35メガパスカル)以上であること

品質基準は以下の2項目です。

  1. 常温で3ヶ月以上、香味・品質が安定していること。また。火入れ殺菌を行うこと
  2. 炭酸ガスは、配管及び容器内のガス置換の目的で使用するものを除く

各蔵元の協会設立に対する思い

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永井酒造 永井則吉氏

「10年前、スパークリング日本酒の開発で大きな壁にぶつかった時、フランスのシャンパーニュ地方へ行きました。現地で印象的だったのは、地域とメーカーが一体となって活動をしていたこと。日本でも、農家の方々とともに日本酒業界や地域そのものを盛り上げていきたいです。

国内で新しい協会ができたことはとても感慨深いです。世界には乾杯の文化があり、そのシーンで飲まれるお酒はほとんどがスパークリング。イタリアのスプマンテやフランスのシャンパンなどと肩を並べるような商品を造っていきたいと考えています」

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八海醸造 南雲二郎氏

「以前より『日本酒で乾杯』という動きがありましたが、日本酒の前にスパークリングのお酒を飲みたいという声も耳に届いていました。乾杯を演出するスパークリング日本酒を造らなければいけないと感じていた時に、永井さんから声をかけていただき、参画を決めました」

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天山酒造 七田謙介氏

「awa酒を世界に広めていくために、新たな商品の開発を検討しています」

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南部美人 久慈浩介氏

「日本酒の需要は伸びていますが、まだまだ一部の動きに過ぎません。awa酒は海外でも確実に需要があると感じているので、ぜひ乾杯シーンで使っていただきたいです。シャンパンの価値に近い日本酒ということで海外でも理解してもらえるのではないでしょうか」

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滝澤酒造 滝澤英之氏

「8年前から造ってきたスパークリング日本酒が、すでにawa酒の認定基準を満たしています。20年間の酒造りで培ってきた技術力で、他の蔵に負けない酒造りをしたいと思います」

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千代むすび酒造 岡空晴夫氏

「微発泡タイプの生酒はずっと造ってきました。ただ、品質管理の点で、目の届く場所にしか送ることができなかったため、品質が安定したスパークリングを造るべきだと思っています。9月から試験的な造りを始めているので、来年の4月にはリリースしたいです」

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秋田清酒 伊藤洋平氏

「海外での需要を強く感じています。awa酒の基準・理念に基づいた酒を造ることができれば、酒を飲むシーンがもっと豊かになるのではないでしょうか。自社でも新しい製品を開発しており、4月にはリリース予定です。楽しみにしていてください」

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山梨銘醸 北原対馬氏

「スパークリングのお酒は乾杯で使われる需要があります。その需要をなんとか日本酒で満たすことができないかと考えていました。日本産の米を使った酒が世界に広がることはすばらしいこと。品質が安定した状態で提供することができれば、米の生産量アップにも貢献できると感じています」

日本が誇る「awa酒」を世界へ

「awa酒」という名前は、欧米や英語圏の方々も発音しやすく、かつ日本らしい言葉を考えた結果生まれたそうです。ロゴマークも、乾杯しているグラスと日本酒の伝統を表す蛇の目、そして「AWA」という文字を組み合わせてつくられました。

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日本酒のグローバル展開は国をあげての事業となっていますが、スパークリング日本酒についての具体的な展開はこれまであまり見られませんでした。一方で、乾杯シーンでの利用や初心者層の開拓など、スパークリング日本酒のポテンシャルが高いことも事実です。

国内の酒蔵が連携することで、技術力の向上はもちろん、世界へ向けた発信力も高まっていくことが期待されます。来春には、業界関係者や一般愛好者に向けたリリースイベントも開催されるとのこと。「awa酒協会」の今後の動きから目が離せません。

(取材・文/SAKETIMES編集部)