日本酒造組合中央会が運営する、日本の伝統的なアルコール飲料である日本酒・焼酎・泡盛に関する施設「日本の酒情報館」が2016年8月にリニューアルしました。

その成り立ちは、昭和56年。日本酒造組合中央会が、広報拠点として「日本酒センター」を銀座5丁目につくります。その後、平成10年に西新橋の日本酒造組合酒造会館への移転とともに図書室やセミナールームなどを併設した「日本の酒情報館:SAKE PLAZA」に。そして平成28年、酒造会館ビルが老朽化してしまったため、現在の場所で「日本の酒情報館:JSS Information Center」として生まれ変わったのです。

リニューアルした「日本の酒情報館」の魅力

これまでの「SAKE PLAZA」は、日本の酒文化に関する情報を集約して、受信・発信する場でした。そのため、1階のコミュニケーションスペースの他にも図書・セミナースペースを持ち、業界関係者や研究者のための場としても機能していました。
リニューアルした「日本の酒情報館」は、蔵書類の展示スペースはなくなったものの、より消費者に近い目線で日本の酒文化を「見て・触れて・体験」していただくことを新しいコンセプトとしました。かつ、国内のみならず海外からのお客様への情報発信拠点になることも大きなミッションと考えています。

「2020年に向けた国をあげての観光立国化が進む中、日本酒造組合中央会としても海外からのお客様は強く意識しています。リニューアルが決まったタイミングから、『次は外国人向けの場をつくろう』と考えていました。ただお酒のメニューを英語対応させるのではなく、"お酒の文化"そのものに触れてもらえる場ができたと思っています」と、館長の今田周三さんは説明してくださいました。

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「SAKE PLAZA」では壁一面に一升瓶が並んでいましたが、「日本の酒情報館」は和とモダンが調和し、スッキリと洗練された内観。壁面は、漆をイメージさせる朱と黒を基調としたデザインになっています。

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木枡をイメージしたディスプレイには、全国の銘酒はもちろん、さまざまな酒器も陳列されており、お酒そのものだけでなく、周辺文化にも触れられます。将来的には、各ディスプレイに都道府県をひとつずつ割り当て、それぞれの酒文化をアピールしてもらうスペースにしたいのだそう。

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天井には木桶を使った大きな照明が! 店内のいたるところが、日本の酒文化をイメージした装飾で彩られており、空間そのものが文化体験の場となっています。

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半切り桶と「櫂入れ」の工程で使われる櫂棒。外国人観光客の方々はこちらで記念撮影をすることが多いそう。

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館内の設備や酒造りにまつわる情報を検索できるタブレット。英語はもちろん、韓国語や中国語にも対応しています。海外のお客様に、お酒の特徴や製造工程を分かりやすく伝える役割を担っています。

他にも、2台ずつ置かれている60インチのモニターと100インチのスクリーンが、それぞれ「酒」「自然」をテーマにした映像を流すなど、館内のあらゆる面が和酒の体験装置となっている「日本の酒情報館」。ここであれば、国内のみならず海外からの来訪客にも、日本の酒の魅力をじゅうぶんに伝えることができるでしょう。

試飲・販売メニューも充実! 全国47都道府県のお酒がずらり

空間だけでなく、もちろんお酒の提供も充実しています。なんと、全国47都道府県すべてのお酒が試飲できるのです。試飲・販売アイテムは各都道府県のヘッドオフィスである酒造組合と協議して選定しているため、各地の隠れた銘酒がメニューに載ることも珍しくないそう。

ラインアップは、京都・月桂冠酒造「鳳麟」や兵庫・櫻正宗酒造「櫻正宗」などのナショナルブランドから、島根・米田酒造「花かんざし」や佐賀・窓乃梅酒造「窓乃梅」などの東京ではなかなかお目にかかれない銘柄まで。常時、50種類以上の和酒(日本酒30, 焼酎20, リキュール10程度)を取りそろえています。

もちろん、メニューはすべて英語対応!海外のお客様も、安心してお酒を楽しむことができますね。

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有料試飲で提供されるお酒の量は、さまざまな種類を楽しめるように30ミリリットルと60ミリリットル。人によっては物足りないと思うかもしれませんが、少ない量でも長く楽しめるように、グラスに工夫がされています。

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こちらで使われているグラスには独特のくびれがあります。そのため、グラスとクイッと傾けなければ飲むことができません。それによって、一口に含む量が少なくなり、自然と時間をかけてお酒を楽しめるそうです。

今回は、3種類のお酒をいただける「飲み比べセット」を注文しました。

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まずは、宮城・株式会社佐浦の「浦霞 純米大吟醸」から。
マンゴーのような華やかな香りが特徴的でした。それでいて、原料由来の旨味成分もしっかりと感じられる逸品。

次にいただいたのは、愛知・神杉酒造株式会社の「神杉 大吟醸 斗びんどり
吟醸香とともに、ナッツのような香ばしさも感じられます。なめらかですっきりとした味わい。

最後は、大分・株式会社久家本店の「九六位 大吟醸」。都内ではほとんど見かけることができない銘柄ですね。リンゴのようなフルーティーさのある吟醸香が印象的ですが、飲み口はドライでさっぱりとしたお酒でした。

大吟醸クラスの日本酒が3種類も試飲できて500円。これはかなりのコストパフォーマンス!

「和酒の世界への入り口に」 館長・今田さんの願い

リニューアルした「日本の酒情報館」について、館長の今田さんは「見て・触れて・体験できる、お酒文化へのエントランスでありたい」と語ります。

「国内だけでなく、海外のお客様にとっての"入り口"でありたいと思っています。2020年に向けた伝統産業の輸出は国全体の命題ですから、日本酒もその波に乗せて世界中に広げていきたいですね。『日本の酒情報館』は、見ての通り空間全体が和酒文化を体験できるものとなっています。初心者の方、海外から来日された方にとってのコンシェルジュであると同時に、どなたにも楽しんでいただけるミュージアムでもありたいと考えています」

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さらに、今後はイベントなどを通した"情報交換の場"としても活用していくことを考えているそうです。

「せっかくいい空間ができましたから、どんどん有効活用したいと思っています。外国人向けの日本酒セミナーや、サロンなども積極的にやっていきたいです。この場所を拠点に、日本酒好きな外国人のコミュニティができたらうれしいですね。やはり、人と人がつながっていくことが、日本酒の海外進出を後押しするためには大切なことだと思いますから」

和酒文化の発信拠点としての役割を担う「日本の酒情報館」、2020年に向けて、その活動に注目していきたいと思います。

(取材・文/SAKETIMES編集部)

◎施設情報

日本の酒情報館:JSS Information Center

  • 開館時間: 10:00 ~ 18:00
  • 休館日: 土・日・祝日・年末年始
  • 住所: 〒105-0003 港区西新橋 1-6-15 日本酒造虎ノ門ビル 1 階
  • TEL: 03-3519-2091
  • FAX: 03-3519-2094