世界一おいしい"市販酒"を決める日本酒のコンペティション「SAKE COMPETITION 2014」の表彰式が10月29日に行われました。表彰式の概要をお伝えした前編に引き続き、各部門で上位に入賞した日本酒や、これから注目すべき酒蔵などをご紹介します。
受賞結果
各部門の1~3位までをご紹介!
純米酒部門
- 1位 宮泉銘醸株式会社「寫楽 純米」
- 2位 株式会社新澤醸造店「伯楽星 特別純米」
- 3位 有限会社濱川商店「美丈夫 純米酒」
純米吟醸酒部門
- 1位 宮泉銘醸株式会社「寫樂 純米吟醸 備前雄町」
- 2位 酒井酒造株式会社「五橋 純米吟醸」
- 3位 株式会社澄川酒造場「東洋美人 純米吟醸 レトロラベル」
純米大吟醸酒部門
- 1位 株式会社山和酒造店「山和 純米大吟醸」
- 2位 小玉醸造株式会社「太平山 天巧 純米大吟醸」
- 3位 出羽桜酒造株式会社「出羽桜 純米大吟醸 愛山」
Free Style Under 5000部門
- 1位 株式会社澄川酒造場「東洋美人 大吟醸 地帆紅」
- 2位 相原酒造株式会社「雨後の月 大吟醸 月光」
- 3位 平和酒造株式会社「紀土 大吟醸」
Free Style の部門
- 1位 松崎酒造店「廣戸川 大吟醸」
- 2位 月桂冠「月桂冠 伝匠 大吟醸」
- 3位 清水清三郎商店株式会社「筰 クラウン 杜氏特別秘蔵酒」
各部門、4位以下の順位は、こちらをご覧ください。
SAKETIMES編集部の注目酒蔵をご紹介!
受賞蔵の中から純米酒部門・純米吟醸酒部門で2冠に輝いた福島・宮泉銘醸、Free Style Under 5000で1位になった山口・澄川酒造場についてご紹介します。
福島・宮泉銘醸
宮泉銘醸は、日本酒好きの間では有名な「寫樂」の醸造元。この「寫樂」は、4代目蔵元である宮森義弘氏の熱い想いが込められた銘柄です。
もともと「寫樂」は、すでに廃業していた宮泉銘醸の本家筋が醸造していたお酒。2005年に宮泉銘醸が引き継ぐ形で復活した銘柄です。
そんな「寫樂」を大きくリニューアルしたのが宮森氏。大学を卒業し、システムエンジニアを4年間務めたあと、福島県清酒アカデミーで酒造りの基礎を学びました。最初の「寫樂」は、タンク1本からのスタートだったそう。
飲んだときに「日本酒はとても美味いものなんだ」と気付いてもらえるような酒を目指して造られたお酒は、SAKE COMPETITIONで2冠を達成するほどの美酒に成長しました。
今回の表彰式では、福島県産の酒造好適米にこだわった点をはじめ、「福島を大事に表現していきたい」という思いを述べています。全国区になった今でも、根底にある地元愛が伝わってきました。
山口・澄川酒造場
「東洋美人」も日本を代表する銘酒のひとつ。その醸造元がこの澄川酒造場。
蔵は山口県萩市田万川地域に位置しており、2013年7月末に山口や島根を襲った豪雨災害では、酒蔵が濁流に飲み込まれるほどの大きな被害に遭いました。今回の受賞について、4代目蔵元の澄川宜史氏は「こうして酒造りをできることは奇跡」と語っています。この1年の苦労がうかがえますね。
受賞した「東洋美人 大吟醸 地帆紅」に関しては「東洋美人は"稲をくぐり抜けた水"でありたいと思っています。フルーティで日本人の心に響く、米由来の甘味や透明感を感じられるお酒です」と特徴を語っていました。
また、印象的なラベルについては「ラベルは顔。お酒を手にとっていただかなければ、飲んでいただくことすらできません。命を削って造っているぶん、瓶にもラベルにも東洋美人らしく生命を吹き込んでいきたい」と述べています。お酒の味わいだけでなく、瓶やラベルをはじめとした"お酒の見せ方"へのこだわりも強く感じられますね。
(出典:はせがわ酒店、アイコーポレーション)
左:Free Style 部門で1位を獲得した「東洋美人 大吟醸 地帆紅」
右:純米吟醸酒部門3位の「東洋美人 純米吟醸 レトロラベル」
どんな困難にも屈することなく、"東洋美人らしい"お酒をお客さんに届けてようとする努力が、今回の栄光につながったのでしょう。
また、これらの2蔵以外に注目したい酒蔵は、Free Style部門で2位を獲得した「月桂冠」
ナショナルブランドと呼ばれるような大手酒蔵にも、おいしい酒造りが受け継がれていることを証明してくれました。
今後の日本酒業界に与える影響とは
SAKE COMPETITIONは、日本酒の新たなブランディングになりつつあります。
前編でもお伝えしたように、このコンペティションの魅力は、出品されるお酒が一般消費者にも手の届く「市販酒」であること。さらに、国内外へのブランディングにもなっている点で、今後の日本酒業界に与える影響は決して小さくありません。
全国新酒鑑評会のような大会はあくまで業界人向けで、日本酒にあまり興味を持っていない一般の方が関連のニュースを耳にする機会は少ないでしょう。
しかし、本コンペティションは中田英寿氏を筆頭に華やかなプレゼンターが登場し、総合司会にも日本テレビアナウンサーの馬場典子氏を起用、業界内外のさまざまな報道機関も招待されています。日本酒にあまり興味を持っていない一般の方にも情報が届くような工夫や、また日本酒以外の文脈で関心を寄せてもらえるような演出に新たな価値が感じられました。
若い世代の人たちにとって、日本酒はもはや「オヤジ臭いもの」という感覚すらもなく、なんの印象も持っていないものへと変化しつつあります。そんな若い世代に対して「日本酒が、いかにかっこいい嗜好品なのか」を広く伝えることができれば、日本酒に興味を持つ人、そして実際に飲んでくれる人が増えるのではないでしょうか。
国内での盛り上がりを各メディアが報道することによって、国外でもさらに注目を集めることになるかもしれません。
SAKE COMPETITIONは、若者をはじめとする消費者への「日本酒はかっこいい」という新たなブランディングや、「日本酒がいま熱い」という国内外への強いアピールにもつながるという点で、今後の日本酒業界へ与える影響は大きいでしょう。
しかし、コンペティションそのものが単発で終わっては意味がありません。この盛り上がりを維持できるよう、活動を継続していくことが望まれます。
(文/SAKETIMES編集部)