さまざまな企業とコラボし、斬新で革新的な商品を開発する株式会社TRINUSと沢の鶴株式会社がタッグを組んで誕生した日本酒「たまには酔いたい夜もある」(以下「たま酔い」)。

たっぷりの糀で造られた「たま酔い」は、旨みと甘みをしっかりと味わえる純米原酒です。そのままで飲むのはもちろん、好みのドリンクと割って飲むのもおすすめです。仕事や家事、育児などを毎日がんばっている女性をメインターゲットとした商品です。

開発にあたりクラウドファンディングで支援を募っていましたが、無事に目標金額を達成。一般発売決定の感謝を込めて、支援者が参加できる「たまには酔いたいWeb飲み会」が開催されました。その模様をレポートします。

商品化を祝ってひと足先に乾杯!

たま酔いオンライン

「たまには酔いたいWeb飲み会」は、ビデオ会議ツール「ZOOM」を利用して行われました。参加者のみなさんは、4月末に届いたばかりの「たま酔い」と好みの割り材やおつまみなどを用意し、乾杯の時を待ちます。

会は、TRINUSのディレクター・新井さんとプロデューサー・北野さんで進行します。セミナー形式ですが、参加者からの質問やリクエストにチャットで対応してくれるなど、途中で参加者の状況を確認しながらゆっくりと進むため、上手くコミュニケーションを取ることができます。

乾杯の挨拶は、沢の鶴でWebマーケティングを担う矢野さん。

「今とても大変な状況が続いていますが、みなさんと楽しくたま酔いの魅力を探っていきたいと思います。商品化のお祝いと、ここにお集まりいただいたみなさまとの絆に乾杯!」

「たま酔い」への支援と一般発売決定の感謝が詰まった矢野さんの発声とともに、各地からの参加者が一斉に画面に向かって乾杯のポーズ。いよいよ「たまには酔いたいWeb飲み会」のスタートです。

Web飲み会には、神戸の地から、沢の鶴のマーケティング室次長・宮崎紘二さんと、他企業に勤めながらTRINUSのプロジェクトに度々加わり、「たま酔い」の開発ではデザインなどクリエイティブな部分で中心的な役割を担っているプランナーの清水さんも出席。清水さんは大の日本酒好きで、以前から日本酒に関わる仕事をしたいと思っていたところにこの依頼があり、詳細も聞かず二つ返事で引き受けたそうです。

早速、お二人から沢の鶴×TRINUSの共同開発ストーリーをうかがいます。普段なかなか聞くことができない貴重なお話を、自宅で、しかもお酒を飲みながら聞けるのはオンライン飲み会ならではといえるでしょう。

外部の視点だからこそ見つけられたもの

沢の鶴

(画像提供:沢の鶴)

「歴史のある企業だからといって、ヒット商品を生み出せるわけではない。たゆまぬ努力が必要なのです」と話すのは、沢の鶴の宮崎さん。

日本一の酒どころといわれる神戸・灘の地で1717年に米屋によって創業されて以来、日本酒の味わいの決め手でもある「米」にこだわり、灘本流の酒づくりと革新を続け300年の歴史を誇る沢の鶴。おなじみの「※」マークは沢の鶴の商標でもあります。

現在、日本酒の輸出は好調である一方、国内消費量は右肩下がりです。商品開発を担っている宮崎さんは、状況を打破するため、さまざまな商品を開発してきました。しかし、なかなかヒット商品を生むことができず思い悩む中、宮崎さんに転機が訪れます。

宮崎さんがビジネス雑誌を読んでいた時に、TRINUSと製菓メーカー・森永乳業がコラボして新商品を開発したという記事を見つけ、目が釘付けになりました。宮崎さんは「この日のことを忘れもしない」と、振り返ります。

TRINUSの商品開発の手法に感心した宮崎さんは、すぐホームページからメッセージを送ったところ、すぐに代表取締役の佐藤真矢さんから連絡があり、共同開発に向けての歩みが始まりました。

たま酔い

TRINUSの佐藤さん(中央奥)と沢の鶴の宮崎さん (画像提供:TRINUS)

企業のみならず、世の中に眠る技術や素材を活用し、新たな商品をデザインすることで価値を生み出すオープンプラットフォームを運営しているTRINUS。「技術とデザインの化学反応による驚き」をテーマに、創業から5年で、多種多様なコラボ商品を世の中に生み出してきました。

TRINUSは沢の鶴との共同開発なかで、沢の鶴社員へのヒアリングを実施。中でも次の4点に着目したそうです。

  • 糀使用比率が高い純米酒の原酒
  • 「限外濾過(げんがいろか)」による常温流通可能な生酒
  • 社員が一様に美味しいと評価する「生酛・純米・山田錦使用」のお酒
  • 社内に100名以上の唎酒師がいること

「蔵の人間からしてみては酒造りの中で当たり前と思ってきたことも、外から見たら実は興味深く面白い点をTRINUSさんに見出してもらいました。『糀をたくさん使って仕込んだ純米酒の原酒は、カクテルのベースになるのではないか』との着目が、『たま酔い』への開発につながりました」と宮崎さんは振り返ります。

「特別なひと時を過ごしてほしい」

たま酔い会議

プランナーの清水さんからは、開発秘話やネーミング案などの話が聞けました。「たま酔い」はターゲットを女性に絞ったため、本当に売れるのかと不安に思ったそうです。商品名も、オシャレさやかわいさを入れた方がいいのではないかと、いろいろと頭を悩ませたといいます。

「日本酒はアルコール度数が高いため、酔いやすいというイメージがあったのですが、酔えるところをポジティブにとらえられないかと思ったんです。女性にも酔いたい時があるのではないかと。

仕事や家事、育児など、日々多くのことをこなす女性が酔える日はそうない。そんな女性に、ほっと一息ついて、自分へのご褒美としてこのお酒を楽しみながら、特別なひと時を過ごして欲しい。そんなお酒にふさわしいネーミングとは何かと悩みました」(清水さん)

そして、商品の想いがダイレクトに伝わるようにと「たまには酔いたい夜もある」という商品名が生まれました。宮崎さんもこの名前に即決だったそうです。

たま酔い

「たまには酔いたい夜もある」試飲会の様子 (画像提供:TRINUS)

パッケージデザインはいくつかのドラフトを作成し、試飲会でアンケート調査を実施しました。用意したデザイン案の中で、圧倒的な高評価を得たのが現在のデザイン。帰り道にふと夜空を見上げるとたくさんの星に心癒される、そんなイメージを表しています。ラベルはフィルムに印刷されるのですが、このきれいな色合いを出すのにとても苦労したと宮崎さんは振り返ります。

「商品開発の段階で実際に見て選んでもらうプロセスは簡単にできそうですが、沢の鶴ではそこまでできないのが現状です。生の声を聞く大切さを実感し、とても勉強になりました。女性中心の試飲会でしたが、思いのほか男性からも高い評価をいただいて、女性が好むものは男性も好むのではないかという気づきもありました。

さらにデザインに関して、エモいイメージといわれまして。まず『エモい』という意味をネットで調べて、後輩に意見を聞くところから始まりました。できあがったデザインは、パールのように光る素材が下地になっていて、アイシャドウのような光り方をするのですが、これを印刷で出すのが大変でした。印刷工場の方と何度も試行錯誤して、できあがりました」

たま酔い商品

こうして、多くの努力の末に完成した「たまには酔いたい夜もある」。清水さんは、実際に商品を手に取っている参加者の姿を見て、目頭が熱くなると感慨深く語っていました。

好みの割材で割ってみるのもおすすめ

割材とたま酔い

「たま酔い」は、貴醸酒を思わせるような香りと甘みのある濃いめの味わいが特徴です。甘みのある肉や野菜と合わせてストレートで飲むのはもちろん、ロックやカクテルのようにお好みの割材で、割って飲むのもおすすめです。

商品の裏面でおすすめされている割材は、無糖のストレートティーとレモン炭酸水。無糖の紅茶割りは、日本酒の酸味が相まってレモンティーのような味わいになり、レモン炭酸水は、一気にさわやかな味わいになりゴクゴク飲めてしまいます。また、カルピスソーダなど、乳酸系飲料との相性も抜群です。

会でも参加者は冷凍パインを氷代わりにしたり、いちごを入れてみたりと、さまざまなアイディアで楽しんでいました。唎酒師でもある矢野さんも「柑橘系の果物との相性はとてもいいんです。氷代わりに冷凍フルーツ、いいですね!」とフルーツ割りを絶賛。桃との相性も抜群で、桃のジュースで割るものおいしいですが、カットフルーツをそのままお酒に入れれば、食べながら飲むデザート酒が完成します。

たま酔い

TRINUSのプロデューサー・北野さんの推しは、「たま酔い」とアイスの組み合わせ。アイスの実を氷代わりにしたり、アイスクリームにお酒をかけたりすれば、一気に大人の高級スイーツのような味わいに。沢の鶴の宮崎さんは「オレンジジュースで割った『たま酔い』とチョコレート菓子の相性が良い」と話していました。

参加者の方からは「出汁割みたいな感覚で、味噌汁割りにしてもおいしい」という声もあり、オリジナルレシピがどんどんと増えていきます。

「たま酔い」は、通常の2倍以上の糀を使った純米原酒なので、他の味わいと合わせてもお酒の味が崩れにくく、しっかりとお酒の味がします。さまざま割材を試して、好みのマイカクテルを作ってみるのも楽しみ方のひとつですね。

ルールにしばられない自由な飲み方を

宮崎さんと清水さんは「たま酔い」の一般発売に向けた、熱い思いと決意をそれぞれ話します。

「日本酒だからといって、ストレートか燗で飲まないといけないなどのルールに縛られない。お酒はそうあるべきかなと思っています。だからどんな割材で割ってもいい。うれしい時、辛く悲しい時など、たまには酔いたいなと思う時に、家で日本酒を飲んで気分がよくなって、明日もがんばろう!という気持ちになれる体験をしてもらえたらと思っています」(清水さん)

「同感ですね。半分お遊びしながら、そんな中に日本酒があってもいいんじゃないかなと思っています。多くの方にそんな体験をしていただけたらうれしいですね」(宮崎さん)

「たま酔い」の商品開発秘話、そして割材トークで盛り上がった「たまには酔いたいWeb飲み会」。オンラインだからこその醍醐味もあり、今後もこのような機会があればぜひ参加したいと思える、学びあり笑いありの楽しく充実したひと時となりました。

300年の歴史と伝統を持つ沢の鶴と新進気鋭のTRINUSが手を組み誕生した日本酒「たまには酔いたい夜もある」。この商品が新たな日本酒ファンを獲得する、起爆剤になることを願わずにはいられません。

「たまには酔いたい夜もある」は、2020年9月中旬より一般発売予定。180mlの飲みきりサイズとお手ごろ価格で、手に取りやすい商品です。お店で買って楽しめる日がくるのが今から楽しみです。

(取材・文/カナポン)

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