野生の鳥獣が冬に備えて体に栄養を蓄える季節になり、ジビエの旬がやってきました。最近、日本酒と肉料理のペアリングをメインに扱うお店が増え、日本酒の食中酒としての魅力を感じる機会が多くなったように思います。

ジビエとは、"狩猟で得た野生鳥獣の肉を食べること"を意味するフランス語です。一般的にジビエはフランス料理のものとされているため、現在もワインとのペアリングが広く楽しまれています。しかし今は、家畜獣では感じられない旬の味わいを体験できるせっかくの季節。今回は、日本酒が食中酒としての実力を充分に発揮し、かつジビエを心ゆくまで楽しめるお店を訪れ、おすすめのペアリングを紹介いたします。

和ガリコ 神田店 (神田駅 徒歩1分)

「和ガリコ 神田店」は、肉料理を中心としたビストロが経営する、日本酒とジビエ料理中心の居酒屋です。

和ガリコ神田店の外装

神田駅前の居酒屋が立ち並ぶエリアに溶け込むような佇まい。「ちょっと一杯だけ」では終わらないような雰囲気を感じました。

和ガリコ神田店内中央部にあるメニューボード。ジビエを想像させる獣のオブジェがその日のオススメメニューを囲んで掲げられている。

店内の中央には、ジビエを連想させる獣のオブジェがおすすめメニューを囲むように掲げられています。

「獺祭 純米大吟醸スパークリング50」(旭酒造/山口)と雉タタキネギまみれ

このお店のおすすめペアリングは、「獺祭 純米大吟醸 スパークリング50」(旭酒造/山口県)×「雉(キジ)タタキ ネギまみれ」

前身がワインバルということもあってか、グラスに映えるスパークリング日本酒を提供していただきました。「獺祭」のスパークリングは安定して人気があるのだそう。

シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造られたこちらのお酒は、米の旨味や甘味をそのままに、心地よく弾ける酸味と泡がヨーグルトのような爽やかな口当たりを演出するのが特徴です。口の中でいくらか炭酸が落ち着いた後にも甘味が感じられ、長い余韻を楽しむことができます。

雉肉

"雉肉"は、半生の食感が味わえる胸肉ともも肉。これでもかとかかっている刻みネギのほかに、タマネギやミョウガのスライスもたっぷりと載っています。味付けは、だし醤油と岩塩をお好みで。あまりクセがなく淡白な味わいのため、だし醤油がおすすめです。

これらをいっしょに味わってみると「獺祭」のスパークリングが持つ甘味や旨味、ほどよい泡が淡白な肉の香りを包み込み、優しさを感じるひと口を演出してくれました。

◎店舗情報「和ガリコ 神田店」

  • 住所:東京都千代田区内神田3-9-8 神栄ビル1F
  • TEL:03-6206-8883
  • 営業時間:月~木 17:00~24:00、金・祝前日 17:00~翌3:00、土・日・祝日 16:00~23:00
  • 定休日:不定休

ルンゴ (大手町駅 徒歩1分)

ルンゴの店外看板

「ルンゴ」は、大手町駅に直結するオフィスビルの地下街に構える、オープンなバル。場所柄、お客さんはビジネスマンが多いようです。気軽にふらりと立ち寄れるカウンター席が、お忍びでも使えそうなテーブル席を囲むように配置されています。

ガラス張りの外から見たルンゴの店内

佐賀県の地酒がカウンターに並ぶ

佐賀の日本酒にこだわるこちらのお店。ジビエに合わせるのも、もちろん佐賀地酒です。

「岩の蔵 サファイア純米吟醸50」(天山酒造/佐賀)と「しし豆腐」

この店のおすすめペアリングは、「岩の蔵 サファイア 純米吟醸50」(天山酒造/佐賀県)×「しし豆腐」

天山酒造の「岩の蔵」は、もともと県内を中心に流通していたお酒。最近では、佐賀酒に力を入れている都内のお店でも見かけるようになってきましたが、やはり東京で希少なお酒であることは間違いありません。

甘酸っぱい南国フルーツのような爽やかな香りとジューシーな甘味があります。一方で、しっかりとした旨味の長い余韻が特徴的。濃い味付けの料理と合わせても、その個性が発揮されそうです。

甘辛く煮付けた猪肉と、その出汁がしっかりと染み込んだ豆腐。食感のコンビネーションだけでなく、その甘辛くコクのある味わいが、佐賀地酒の甘味と旨味によく溶け合い、それぞれを引き立てています。

日本古来の猟師たちも、もしかしたらこのような料理とお酒で精をつけてきたのかもしれませんね。

◎店舗情報「ルンゴ」

  • 住所:東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル B1F
  • TEL:03-6551-2503
  • 営業時間:月~金 17:30~23:30、土・祝 12:00~21:00
  • 定休日:日曜

山田斉藤 (木場駅 徒歩5分)

山田斎藤の外観

「山田斉藤」は、木場駅から少し離れた住宅街にひっそりと構えている地元密着型の居酒屋です。

山田斎藤のメニューボード。もつ料理とジビエ串を1本からでも気楽に楽しめる。

もつ料理とジビエ串を1本から気楽に楽しめるのが魅力。日本酒は日替わりで、メニューに載っているのは、およそ10種類です。料理に合わせて、メニューにない銘柄を出してくれることも。

「奈良萬 純米生酒 おりがらみ」(夢心酒造/福島)と「熊串」

このお店のおすすめペアリングは、「奈良萬 純米生酒 おりがらみ」(夢心酒造/福島県)×「熊串」

開栓したてのフレッシュな香りがあるため飲みやすいですが、荒々しいくらいのジューシーな舌触りがしっかりとした余韻を残すため、きっと野性味あふれる肉の香りにはぴったりの組み合わせでしょう。

新鮮な熊をそのまま炭火で塩焼きにしたという「熊串」は想像以上に淡白で柔らかく、クセがありません。「奈良萬」の荒々しい余韻が、火を通しても柔らかいフレッシュな肉の旨味に深みを与えてくれました。

肉の香りをより深く楽しむために、香りの穏やかな辛口のお酒を合わせるのもおもしろいかもしれませんね。

◎店舗情報「山田斎藤」

  • 住所:東京都江東区東陽1-27-11 GHC東陽 1F
  • TEL:03-6659-8943
  • 営業時間:月~土 17:30~24:00(L.O.)
  • 定休日:日曜

それぞれのお店には、今回紹介しきれなかったたくさんの日本酒や料理が用意されています。実際に訪れて、好きなペアリングを見つけてみてはいかがでしょうか。

(文/山本清子)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます