「日本酒に合わせる料理は和食」というのは、ちょっと前までのお話。現在は、和食はもちろんのこと、フレンチ、イタリアン、中華と、世界のさまざまな料理と日本酒を合わせて提供するお店が増えてきました。

今回ご紹介する新潟市の「旬菜バル kansichi」も、そんなお店のひとつ。厳選した純米酒と自然派ワイン、それにあわせたおつまみを提供している地元に愛される街のバルです。

バルなのに、おすすめは純米酒の燗酒

「旬菜バル kansichi」の外観

JR新潟駅から越後線で20分。古くからの商店が連なるJR内野駅の駅前に「旬菜バル kansichi」はあります。東京で飲食の仕事をしていたという正木大介さんが、2020年2月に奥様の実家がある新潟市西区内野に開いたお店です。

「旬菜バル kansichi」の看板

店名の「kansichi」は、奥様の実家の屋号に由来するのだそう。鉄製の看板が渋くてかっこいいです。

「旬菜バル kansichi」の内観

店内に入ると、カウンター席とテーブル席がコンパクトにまとまっています。まるで、友達の家に遊びに来たようなアットホームな雰囲気。夜の営業は16時からやっているので、明るいうちからお酒が飲めるのもうれしいポイントです。

「旬菜バル kansichi」のカウンター

カウンターには、新潟県内外の日本酒がズラリ!どれを飲もうか眺めながら考えるのも、また楽しいですね。

「旬菜バル kansichi」の日本酒メニュー

数ある日本酒のなかで「旬菜バル kansichi」では、純米酒の燗酒をおすすめしています。

「なるべくナチュラルなものを、身体に優しい状態で提供したいと思って純米酒を揃えました。食事が進んで身体が温まる燗酒は、飲み疲れないと思うんです」と、正木さん。

「旬菜バル kansichi」の日本酒

新潟県外の日本酒もたくさんありますが、新潟の「鶴の友」だけは必ず置いてあります。

「鶴の友を醸す樋木酒造さんは、新潟市内野の酒蔵で、お店のすぐ近所にあります。『鶴の友』を置いていないと地元のお客様に怒られちゃうんですよ(笑)」

こだわりの銘柄選びのなかにも、地元を応援する姿勢が感じられました。

「旬菜バル kansichi」のフードメニュー

メニューボードには、「串揚」や「蛍烏賊と菜の花の酢味噌あえ」といった和食と、「自家製シャルキュトリー」や「アヒージョ」のような洋食が、ジャンルに囚われずに並んでいます。燗酒なら和洋どちらの料理にも合いますね。

「もう一杯」とお酒がすすむフードメニュー

「前菜と自家製シャルキュトリーの盛合せ」

「前菜と自家製シャルキュトリーの盛合せ」

「旬菜バル kansichi」の一番人気は、「前菜と自家製シャルキュトリーの盛合せ」です。

「佐渡産の牡蠣の燻製」や「鴨の生ハム」など、人気のメニューが少しずつ7種類も盛られたプレートで、これを最初に選ぶお客様が多いのも納得のボリューム。どの前菜も旨味がしっかりとあってお酒がすすみます。

「田村 生酛 純米吟醸」(仁井田本家/福島)

「田村 生酛 純米吟醸」(仁井田本家/福島)

最初に選んだのは、福島県にある仁井田本家のお酒です。蔵がある「田村町」の地名からこの名前が付けられました。

ひとくち飲むと、じんわりやわらかな優しい味わい。米の旨味がしっかり感じられて、どんな温度帯でも楽しめます。

「串揚げ」

「アスパラの肉巻きの串揚」

「旬菜バル kansichi」は、串揚の種類も豊富です。この日は15種類の具材が並んでいました。

こちらはアスパラの肉巻きの串揚です。旨味の強い旬のアスパラは歯ごたえが心地よく、揚げたてをすぐにいただけるので、軽くぺろりと食べられます。

「日置桜 生酛雄町 諸元」(山根酒造場/鳥取)

「日置桜 生酛雄町 諸元」(山根酒造場/鳥取)

鳥取県にある山根酒造場のお酒は、熱燗でいただくと、クセがなく、スッと消えていく印象でした。「しみじみ美味しいなぁ」と感じられます。

「いぶりがっことクリームチーズ」

「いぶりがっことクリームチーズ」

3品目のおつまみは、「いぶりがっことクリームチーズ」。

この組み合わせはよくみかけますが、「旬菜バル kansichi」のものはまるでケーキのような美しさです。クリームチーズの中に、刻んだいぶりがっこがたっぷりと入っています。

酸味控えめのクリームチーズなので、いぶりがっことの相性がとてもよい、日本酒にもワインにも合う一品でした。

「富山湾産蛍烏賊と菜の花の酢味噌あえ」

「富山湾産蛍烏賊と菜の花の酢味噌あえ」

4品目は、「富山湾産蛍烏賊と菜の花の酢味噌あえ」という春らしい食材の組み合わせ。

酢味噌の酸味がやわらかなので食べやすく、これもまた日本酒がすすみます。

日本酒の出汁割メニュー

メニューを眺めてると、「日本酒出汁割」を見つけました。

これは日本酒をおでん出汁で割ったもの。おでんがメニューにない季節は、代わりにカツオの出汁で割ってくれます。ベースとなる日本酒は、熱燗用の日本酒メニューから好きなものを選べるとのこと。

出汁割に選んだ日本酒は「神雷 緑ラベル純米酒 三温至福」。正木さんの出身地である広島県のお酒です。

日本酒の出汁割

「三温至福」は、「冷・常温・燗の3つの温度帯どれでもおいしくいただける」という意味で、その名の通り、熱燗にしても、しばらく置いて燗冷ましにしても、しっかりとおいしいお酒でした。

「神雷」の出汁割は、まるで優しくて美味しいスープを飲んでいるかのよう。添えてある七味を入れると、また違った表情を見せてくれました。

「仏産 シャラン鴨フィレのロースト」

「仏産 シャラン鴨フィレのロースト」

旨味がしっかりとした「シャラン鴨フィレのロースト」は歯ごたえもよく、噛むごとに美味しさが口の中に広がります。こんなしっかりとした洋食にも、日本酒はちゃんと合うんです。付け合わせの芽キャベツがかわいいですね。

「紅ズワイガニと生海苔のパスタ」

「紅ズワイガニと生海苔のパスタ」

本日の〆は、カニの身がたっぷりと入った「紅ズワイガニと生海苔のパスタ」で。生海苔の風味がカニとよく合います。

この組み合わせがあまりにも美味しくて、〆のつもりだったのに日本酒がさらに進んでしまいました。

気取らない料理とお酒で、おいしいひとときを

「旬菜バル kansichi」の正木大介さん

大学時代の飲食業のアルバイトがきっかけで料理の道へ進んだ正木さん。先輩に教わったり、お店に食べに行ったりして料理を独学で学んだというから驚きです。

「料理をつくるうちにどんどん楽しくなって。そのまま一生の仕事にするとは思っていませんでした」

ていねいに作られた料理を「気取らない旬菜」と呼ぶところに、正木さんの謙虚で勉強熱心な一面が垣間見れます。

新潟市郊外にある、じんわりとおいしい燗酒と料理のお店「旬菜バル kansichi」。お酒と一緒に店主のやさしい人柄にも触れてみてください。

(取材・文:茜/編集:SAKETIMES)

◎店舗情報

  • 店舗名:「旬菜バル kansichi
  • 住所:新潟市西区内野町552
  • 電話番号:025-201-8387
  • 営業時間:ランチ/11:30~14:00(火~金)・ディナー/16:00~23:00(月~金)
    ※土曜は11:30~23:00までの通し営業
  • 定休日:日曜
  • 席数:カウンター4席 テーブル3席(2名用×1席・4名用×2席)

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