新潟駅から歩くこと4分。たくさんのお店が立ち並ぶにぎやかな通りから一本入った、落ち着いた場所。鮮やかな紫色の暖簾がかかっているのが、今回紹介する「越後 吉平」です。
「越後 吉平」は、8年前から同じ場所で、夫婦2人で営んでいるお店です。そのお客さんのほとんどが常連だといいます。「吉平」という店名は、佐渡出身の店主・樋口剛さんの屋号。カウンター5席、小上がり2席の小さな店内には、いつもお客さんの笑い声が響いています。
新潟の地酒を中心に、バランスの取れたラインナップ
入ってすぐの場所に置いてある小さな冷蔵庫。見た目からは想像できないほどの一升瓶が入っていました。
新潟県のお酒が多いものの、県内ではあまり見かけないような、日本酒好きにはたまらない銘柄の数々に驚かされます。
これらはすべて、日本酒好きの樋口さんが選んだもの。新潟出身が多い常連のお客さんに人気の「麒麟山」と、樋口さんが好きな「景虎」は必ず常備しています。それ以外は、辛口と甘口のバランスを考えて仕入れています。
素材を生かした四季の料理
樋口さんがみずから書くというおしながき。達筆です。人によって好きなものが異なるため、「おすすめ」という言葉は使いたくないのだとか。新潟県の名物である栃尾油揚焼や佐渡ぶりをはじめ、冬には鍋料理も提供しています。
「派手じゃなくていい。鮮度が大事。お客様が飽きないように、考えておしながきを決めています」と話してくれました。
この日のお通しは、あん肝。これはもう、最初から日本酒でしょう。
まずは新潟のお酒から。名水「杜々の森湧水」を仕込み水に使った、スッキリとキレの良い日本酒です。
こちらは、銀杏焼。香ばしさと日本酒が最高に合います。
脂がのった佐渡産のぶり。贅沢な厚切りでいただきます。
佐賀県の「東一」。自家栽培の山田錦で醸した日本酒です。なみなみと注がれたグラスから、華やかな香りがしてきます。新潟にいながら、遠く佐賀の日本酒が飲めるのはうれしいですね。
ねっとりした里芋とジューシーな鶏肉。大根おろしでサッパリといただきます。
季節限定品の日本酒をいただきました。全国新酒鑑評会に出品するお酒と同じ仕込みで醸されたものを原酒で蔵出ししているという、「越乃景虎」最高峰の大吟醸酒。香りは華やかですが、派手すぎないきれいなお酒でした。
寒い季節には、やっぱり鍋が欠かせないですよね。脂がのった鴨肉を、サッとくぐらせていただきます。
おいしい出汁を最後まで楽しむために、〆の雑炊もお願いしました。
お客さんが喜ぶお酒と料理を
「酒も料理もいっしょ。お客様にちゃんとおいしく召し上がっていただけるか。どちらもバランスが大事なんです。辛いばかりでも甘いばかりでもダメ。自分のやりたいことばかりじゃなくて、お客様に合わせること。食べるってことは奥が深いんですよ」と、樋口さん。
シャイな樋口さんは、口数こそ少ないですが、日本酒や料理について聞くと、うれしそうに話してくれます。お客さんと真剣に向き合い、喜んでもらえるように考える真面目な姿勢が印象的でした。そして、そばにはいつもニコニコと笑顔の奥様がいて、お店を明るく照らしています。
素敵な夫婦のおいしい隠れ家。ぜひ訪れてみてください。
◎店舗情報「越後 吉平」
- 住所:新潟県新潟市中央区東大通り1-6-19 壱番館ビル1階
- 電話番号:025-244-5575
- 営業時間:17:00~23:30(月~土)
- 定休日:日曜・祝日
(文/茜)