近江商人がルーツの老舗蔵
香り高くフルーティーな「陸奥八仙」を醸す八戸酒造は、安永4年(1775年)に初代・駒井庄三郎氏が創業しました。そのルーツは滋賀県からの「近江商人」だといいます。創業時の名前は「駒井酒造店」でしたが、戦前の企業整備令により近隣の酒蔵と組合化して統合し「八戸酒造」となります。主要銘柄は「陸奥男山」でしたが、戦後、組合からの独立の道を模索し、1998年に自分たちの新しい酒造りを開始しました。それが「陸奥八仙」と名付けられ、現在は南部杜氏のもと、若き9代目の長男と次男が中心となり酒造りを行っています。
平成28年度は受賞ラッシュ
酒質がどんどん向上している同蔵ですが、とくに今季の活躍は目を見張るものがあります。2016年5月の平成27酒造年度全国新酒鑑評会で陸奥八仙ブランドの「大吟醸」が金賞受賞。同7月の「SAKE COMPETITION 2016」の純米酒部門で「特別純米」が銀賞受賞。「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2016」の大吟醸の部で「大吟醸」、吟醸酒部門で「ピンクラベル 吟醸」が金賞を受賞しました。また「平成28年度 東北清酒鑑評会」でも「華想い40 純米大吟醸」が純米部門で優等賞に輝いています。
スパークリング酒のような発泡感
「どぶろっく」は毎年、同酒造の新酒第一弾として登場する、活性にごり酒です。醪を混ぜる前の瓶を見るとわかりますが、醪成分が瓶の1/3以上詰まっています。
まさに商品名のように「どぶろく」みたいです。瓶の裏は開栓注意!と書いてありますが、慎重にゆっくりと栓を開ければ1度で開けられます。開栓すると元気に発泡しますが、吹き出すことはありません。精米歩合は69%と「ろっく」にかけているようですね。
口に含むとピチピチとした炭酸ガスの発泡感が心地よく、もろみ成分のクリーミーさと、上品な米の甘味が感じられます。数々の活性にごり酒の中でも発泡感が強いほうで、にごり酒の甘さよりスパークリング並みのドライさが際立ちます。まさに、タンクでプツプツと発酵している醪をそのまま瓶詰したような印象です。
冷やして飲むのが一般的ですが、蔵元が推奨するようにオンザロックで飲むと、発泡感が弱まり醪成分のクリーミーさがより表に出てきて甘く優しい味わいに。瓶内でも発酵力がなかなか衰えないようで、開けてから3日後に飲んでも、ピチピチした発泡感は健在でした。
単体で呑むのも良いでしょうが、サラダやスナック菓子などの軽食に合わせても良いでしょう。もちろんパーティーの乾杯酒などに使っても、開栓時の発泡で盛り上がりそうですね。