ペリー提督来航の翌年に創業
寒紅梅酒造の創業は安政元年(1854年)。前年にペリー提督が浦賀に来航、幕府の鎖国政策が瓦解し、幕末の動乱の大きなきっかけとなった年です。
現在は蔵元7代目・増田明弘氏を中心に酒造りを行っています。生産石高はわずか250石。創業以来、普通酒中心の地元消費が圧倒的に多かった蔵でしたが、現在は少しずつ全国にその名を知られてきています。
1990年代の梅酒ブームに乗り、最高級の完熟梅を使った日本酒仕込みの梅酒も人気を集めています。銘柄名には、「冬に咲く紅梅のようにふっくらと優しい酒を醸したい」という想いが込められてます。
理想の酒求め「東一」の勝木氏に師事
寒紅梅酒造が全国市場に出るきっかけとなったのは、平成22年(2010年)でした。梅酒の好業績で余裕ができたため、普通酒以外に自分たちが理想とする高級酒を造ろうと決心。現蔵元・増田明弘氏は一念発起し、九州を代表する銘酒「東一」を醸す五町田酒造(佐賀県)の製造責任者・勝木慶一郎氏に弟子入りします。酒造りの洗米や蒸しなど、原料処理の大切さを学び、23BYから新生・寒紅梅が誕生しました。初年度はほぼ地元の特約店のみの販売でしたが、次年度からは東京などにも進出しています。
また、三重大学と提携し、産官学共同の酒造りも行っています。同大学が開発した酒米「弓型穂(ゆみなりほ)」を使用し、学生が杜氏の指導の元に醸したお酒を「三重大学」という銘柄で販売しています。
山田錦のやわらかくやさしい味わい
本品は、三重県産の山田錦を50%まで磨いた贅沢なスペックです。「遅咲き火入れ」とは、「ひやおろし」と同じ過程の1回火入れでしょうか。香りは農醇な完熟フルーツのようなコクを感じます。口に含むと山田錦特有の丸みを帯びた旨み甘味がふんわりと広がり、やわらかく優しい味わいです。シルクのような舌触りで呑んでいてホッとする印象。後口はやさしい余韻を残しながらスーっと消えていく感覚です。
適度な華やかさと落ち着きが同居し、甘口の白ワインのような味わいなので、タコのカルパッチョや貝系のピザ、ハード系チーズなどイタリアンに合いそうです。女性受けしそうな味わいでもあり、今後の歩みに期待します。