本格的な夏になりました。夏バテ気味の方もいらっしゃるでしょうか。
そんなみなさんにオススメするのが甘酒です。冬に飲むイメージが強いですが、江戸時代には夏バテ防止のために飲まれていたそうです。買って飲むのも良いですが、手づくりしてみるのもまた一興。
板粕を使った簡単甘酒レシピ!
甘酒の製法は2種類あります。「酒粕を使う簡単タイプ」と「麹を使う本格タイプ」です。
酒粕タイプは文字通り酒粕を使うのですが、スーパーに行くと酒粕が2種類売っているのはご存知でしょうか。板状で白い板粕と、やわらかく茶色がかっている練り粕(押し粕)があります。甘酒には板粕を使いましょう。
板粕は、アルコール発酵を終えた醪(もろみ)を搾って清酒を漉し出すときに残る固形物を切り分けたもの。そのため、若干のアルコールが含まれています。アルコールを1%以上含む飲料の製造は酒税法に触れるので、酒粕から甘酒をつくるときはアルコールは飛ばすようにしましょう。
酒粕ベースの甘酒づくりはとてもシンプル。水を雪平鍋などに沸かし、酒粕を入れます。水500ミリリットルに酒粕200グラムくらいが良いでしょう。65度前後にするとアルコールが飛びはじめます。しっかりとアルコールを飛ばし、塩や砂糖で味を調整して冷やせば完成です。簡単ですね。
それではおもしろくないという方には、麹を使った本格タイプをご紹介しましょう!
麹を使って本格的な甘酒をつくってみよう!
スーパーに行くと漬物コーナーに麹が売っていますが、漬物麹と清酒麹は、麹という分類では同じですが、求められる性質がちょっと違います。
お酒造りに求められる麹の性質は、掛米を溶かせる程度のほどよい酵素が含まれていること。しかし、酵素はただ出れば良いというものでもありません。雑味が出ないように、米がよく溶けるように、逆に溶けを抑えるように、モヤシ(種麹)の品種もさまざま変えていますから、実は甘酒に向かないものもあります。
ですから、酒蔵で甘酒を製造する場合は、甘酒専用の麹を用意します。甘くなればなるほど良いので、酵素をたくさん出すようにし、米もやわらかめの蒸しあがりになるよう蒸し担当にお願いします。
さて、実際につくってみましょう。
まずは容器を洗って、アルコールを塗布して殺菌します。菌がむやみに繁殖しては困りますからね。ステンレスのポットを使いますが、梅酒瓶でもいいかもしれません。冷蔵庫にも入りやすい2~3リットル容量のものが使い勝手が良いでしょう。
およそ50度の湯を用意し、麹と湯を入れます。麹1キログラムに対し、湯2リットルが基本です。あとで水を足すので、この時点では大甘濃厚につくります。
麹の温度が常温の場合、湯温はあまり下がりませんが、冷凍麹など冷たい麹の場合は、湯温が下がります。スプーンなどで撹拌して温度を確かめてください。
酵素の作用で麹が溶けて、甘酒ができるのですが、酵素は温度によってよく働いたり働かなくなったりします。甘酒の場合は45度前後が適温です。55度以上で酵素が失活し、30度を切ると鈍くなってきます。
この温度を8~10時間キープすると美味しい甘酒ができます。温度を保つことが、難しいところです。炊飯器の保温モードでもできるという話もありますが、あまりエコではないですね。
酒蔵では、暖気(だき)瓶を使います。何のことはない、酒の空き瓶を湯でよく洗って、60度程度の湯を入れただけのものです。これを入れておけば、かなりの時間、保温してくれますよ。
ちょうど、酒母の暖気樽と同じ原理です。甘酒も水と麹でつくりますが、酒母も水と麹、それから掛米を入れますね。違いは分量と酵母、乳酸の有無くらいで、甘酒と酒母はほとんど相違ないのです。
あとは、布で覆っておけば夏場はOKでしょう。だいたい4時間経過したら一度中身を混ぜて、暖気が冷えていたら湯を替えます。
大甘濃厚の甘酒はアレンジの可能性無限大!
8時間ほど経過したら暖気瓶を取り出して、甘酒は冷蔵庫で冷やしましょう。
そのままでは大甘濃厚なので、冷たい水で薄めるとさらっとした良い飲みごこちになります。砂糖も入れていないのに、がっつり甘い!アミノ酸も豊富で、健康にも美容にも良い!
米麹の粒が気になる人は、ミキサーに30秒程度かけて、粗めのザルで濾せばスムージー風になって飲みやすいですよ。ミキサーにかけすぎると、デンプンの作用でドロドロになりますのでご注意を。
この濃厚甘酒の良いところは、いろいろなもので割る楽しさです。水で割るのを前提にしてあるので、氷を入れても薄くなりません。
ミキサーに氷を入れてシェイク風にするならば、バナナを加えても美味しいです。紅茶やコーヒーにも意外と合います。単純に、バニラエッセンスを垂らすのも良いですよ。あえてお酒で割るのもおもしろいでしょう。リンゴリキュールを入れても美味しかったです。
自由にアレンジできるのが楽しい「麹を使う本格派タイプ」の甘酒。他にもいろいろな楽しみ方ができるでしょう。どうぞお試しあれ!
(文/リンゴの魔術師)