名水の地で270年近い歴史を誇る老舗蔵
山梨銘醸の創業は、寛延3年(1750年)といいますから270年近い歴史を誇る老舗蔵です。
初代蔵元の中屋伊兵衛が、酒造業を営んでいた北原家から分家。白州の「甲斐駒ケ岳の雪解け水」の水質の良さにほれ込み、当地で酒造りを始めました。国産ウイスキーで有名なサントリーの白州蒸留所、天然水南アルプス白州工場などもあり、名水の地として評価されていることから、初代の先見の明がうかがえます。
天保6年(1835年)、五代目・北原伊兵衛信重氏が蔵の母屋新築の際、御用酒屋を務めていた高遠城主により竣工祝いに「竹林の七賢人」の欄間一対をいただきました。これが銘柄「七賢」命名の由来となったそうです。大正14年(1925年)には現在の「山梨銘醸」名で株式会社化しています。
戦後も着実な歩みを続け、昭和57年(1982年)には普通酒の生産を廃止し、この時代では珍しい全量を特定名称酒の醸造を開始しました。平成11年(1999年)には農業法人(有)大中屋を設立し、自ら酒造好適米の栽培を始め、真の地酒蔵を目指しています。
5年の歳月をかけた“本物”のスパークリング
今回のスパークリングは日本酒の可能性を探求し、開発に5年の歳月をかけた蔵元渾身の一品です。日本酒のスパークリングも増えてきましたが、人口的に炭酸ガスを注入したものが中心で、ワインのような瓶内で二次発酵させるタイプはなかなか見当たりません。
二次発酵とは、瓶の中でお酒を発酵させること。酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解する際に自然発生した二酸化炭素(炭酸ガス)を瓶内に閉じ込めます。ワインの主成分ブドウには豊富な糖分があり、二次発酵のための糖分添加も認められていますが、日本酒はもともと、糖分がないためデンプンを糖化するひと手間が必要。麹を作り、酵素を作り、糖分を生む行程と、発酵を同時に行う「並行複発酵」がタンクの中で行われています。ワインのような糖分追加も認められていないので、同蔵も試行錯誤を続けて、時間をかけて商品化にこぎつけました。
元気でドライ&旨みもしっかりのパーティー酒
コルク蓋は慎重に開けることが必要ですが、吹きこぼれることはありませんでした。上立ち香はほのかな吟醸香を感じますが一瞬で消え去ります。口に含むと数あるスパークリングでもトップクラスの発泡感を感じますが、泡はきめ細やか。ドライフルーツのようなコクのある含み香も感じ、単にドライだけではなくお米本来の甘味や酸味も口に残しながら最後はズバッと切れていきます。シャンパン瓶を使用しているのでホームパーティーの乾杯酒としておしゃれですが、もっとカジュアルな屋外バーベキューで焼肉などに合わせても面白いかと。海鮮ものでは牡蠣や白子などミルキーな味わいのものと相性が良さそうです。