壱岐焼酎「ちんぐ」を醸す九州の小さな焼酎蔵

壱岐は、九州の玄界灘に浮かぶ人口3万人余りの小さな島。その南端にあり、昔ながらの木製の甑で米と麦を蒸し、甕仕込を行う小さな蔵が、重家酒造です。創業は大正14年。焼酎ファンならご存知だと思いますが、「ちんぐ」のヒットが記憶に新しい壱岐焼酎の蒸留蔵です。

ここで壱岐焼酎を簡単に説明します。壱岐焼酎とは地理的表示のひとつであり、確立された製造法や文化を保護しようと、WHT世界貿易機関が定めたブランドです。日本ではこのほかに熊本県球磨地方の「球磨焼酎」、沖縄の「泡盛」などが認定されています。

壱岐焼酎の特徴としては、(1)原料を米麹3分の1に対して大麦3分の2を使用する製法。(2)島内の水で仕込むこと(3)蒸留から瓶詰まで島内で一貫しての生産。この3つが挙げられます。味わいとしては麦のインパクトの後に米麹由来の甘味やふくらみを感じます。骨太ながらやさしさも同居する滋味あふれる味わいです。

銘醸蔵を借りて壱岐の日本酒を復活

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麦焼酎の地・壱岐ですが、かつては日本酒も仕込まれていたそうです。明治35年には焼酎蔵38蔵に対し、日本酒専門蔵も17蔵あったと言います。重家酒造も平成2年(1990年)まで日本酒を醸造していたとか。当時の杜氏が高齢化のため、日本酒の醸造は途絶えていましたが、現4代目社長の横山雄三氏と太三氏の兄弟が「いつか復活を」と願っていました。その思いを実らせたのは、平成25年のこと。佐賀県の「東一」を醸す五町田酒造に修業を兼ねて泊まり込みで酒造りを行い、特別純米「確像」を醸造し、日本酒造りを復活させました。

そしてこの「横山50」は、「東洋美人」を醸す澄川酒造(山口県萩市)に泊まり込んで造った日本酒です。設備等の関係で、壱岐ではまだ醸造を行っていないようですが、近い将来、蔵内での醸造復活を目指し、研鑽を続けています。焼酎と日本酒で壱岐島の魅力を発信したいという若き蔵元の思いが込められています。

温度が上がるにつれて真価を発揮する旨口酒

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この純米大吟醸酒は兵庫県特A地区山田錦、山口県産山田錦を50%まで磨いた純米大吟醸酒です。名前は蔵元の名字と精米歩合から採っています。

香りはライチのような密度の濃い果実香、口に含むと米の甘味とフルーティーさが同居したきれいなお酒という印象です。山田錦の純米大吟醸にしては細さを感じますが、常温になるにつれて、隠れていた米の膨らみと凝縮した旨みが表に出てきます。繊細な味わいですが、壱岐焼酎のような奥深さも感じます。キンキンに冷やしてワイングラスで香りと切れ味を楽しむのもよいですが、常温での太い味わいもあなどれない魅力があります。玄界灘の生鯖、鯵、イサキなどのお刺身や、英虞(あご、トビウオ)のみりん干しなど、甘口な食事にも合いそうです。

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