こんにちは、SAKETIMES編集部、最年少酒匠の山口奈緒子です。

2011年3月に起こった東日本大震災は、本当に未曾有の災害でした。しかし、このように甚大な被害を乗り越え今でも私たちにおいしいお酒を届けてくれている酒蔵があります。

今回はそんな震災にも負けず復興に向けて取り組む3蔵をご紹介します。

 

1. 鈴木酒造店

震災前、福島県の浪江町にあった「磐城壽(いわきことぶき)」を造る鈴木酒造店は大漁を祝う祝酒として多くの漁師に愛されていたお酒でした。蔵の眼前には太平洋が広がっていたのですが、東日本大震災での津波で蔵のすべてを流されてしまいました。さらには福島第一原発の10km圏内であったために浪江から避難するしかなかったのです。

しかし、酒造りにとても重要な「酵母」が県の試験上に分析のため預けてあったのが残っていたのです。「酵母があれば磐城壽は復活できる」と、震災後初めは南会津の酒造会社の施設を借りて酒造りをしました。そして、その後、跡継ぎ不足で廃業考えていた山形県長井市の「東洋酒造」を買い取り、現在も「鈴木酒造店長井蔵」として酒造りを続けています。

また、都内で開かれる日本酒イベントにも鈴木大介専務みずから足を運び、現在も精力的に活動しています!

 

2. 酔仙酒造

岩手県の陸前高田に位置する酔仙酒造は震災によって敷地全体が大津波にのまれ、木造4階建ての倉庫を含む全ての建物が水面下に沈み、壊滅・流失してしまいました。また、この震災に対して、酔仙酒造のHP上では「酔仙酒造は7名の大切な従業員を失った。この7名の命が奪われたことが、酔仙酒造にとって 何よりもつらい被害だった。」とも語られています。

震災のあと、一時的な休業を余儀なくされましたが、県内の酒蔵の協力を受け醸造設備を確保し、復興への道をたどっていきます。そして、2012年8月には大船渡蔵が完成し、酒造りを続けています。しかし、新工場はあるものの、今後は陸前髙田への復興を目指していくそうです。

そんな酔仙酒造ですが、2014年9月には、アメリカでも純米酒が販売が開始するなど、今もおいしいお酒を日本中のみならず世界に届けてくれています!

 

3. 新澤酒造店

「伯楽星」で有名な新澤酒造店は、震災で宮城県大崎市にあった蔵が全壊してしまいました。

新澤醸造店は1873年創業で140年もの歴史を誇る酒蔵です。しかし、2000年を迎える頃には、普通酒が全生産量の90%以上を占め、厳しい経営環境におちいっていました。そんな中、五代目となる新澤巌夫氏が宮城県最年少杜氏として戻り、2002年には究極の食中酒というコンセプトの「伯楽星」という銘柄を立ち上げました。2009年には伯楽星はJALのファーストクラスにも採用されました。

2011年の震災では大きな被害を受け、大きな借金をして元あった蔵から75km離れた場所に製造蔵を購入しました。そのような厳しい環境下におかれながらも、これまで契約を結んでいた酒米農家さんから3割増で契約を結び、75kmもの通勤を強いられる従業員6人には車の支給をするなど、周りの人への配慮も手厚くおこなったのです。

現在の伯楽星の愛されっぷりは、言わずもがなご存知だと思いますが、今後も新しい蔵での挑戦に目が離せませんね!

 

以上です。

いかがでしたか?
震災による被害の全てを完全に修復することは難しいことなのかもしれません。けれど蔵元が復興と更なる発展を目指しているのなら、私達もこれまで以上の想いで、その活動を応援していきたいですね。