こんにちは、SAKETIMES編集部、酒匠の山口奈緒子です!
岩手県陸前高田市にある老舗造り酒屋「酔仙酒造」が6月27日に「KIBO(希望)」という純米酒をアメリカに向けて出荷を開始しました!東日本大震災で津波の被害を受けた酔仙酒造ですが、この「KIBO(希望)」というお酒にはどのようなメッセージが込められているのでしょうか?
1. 酔仙酒造について
岩手県の気仙郡(岩手県沿岸の最南端!)には、もともと8軒の酒蔵がありました。そして戦時中にはこの8軒が1つにまとまり「気仙酒造」を設立しました。8軒の中には200年の歴史を誇る酒蔵もあったそうです。この気仙酒造が「酔仙酒造」の前身です。
その後「酔仙酒造」となったのですが、この「酔仙」という名前は、地元出身の画家・佐藤華岳斎がこの酒をこよなく愛し「酔うて仙境に入るが如し」と讃え、銘柄を「気仙」から「酔仙」へ改めるよう勧めたことが由来だそうです。 その名の通り「地元の風土に合った美しい酒」「芳醇にして呑み飽きしない酒」を目指し、陸前高田の地で酒造りをしてきました。
しかし、2011年3月11日の東日本大震災で甚大な津波の被害を受け、もとの陸前高田の蔵では酒造りができなくなってしまいました。
そのような困難にも負けず、今では岩手県大船渡市に蔵を移し、おいしいお酒を造り続けています。
2. 「KIBO(希望)」の純米酒、海外へ出荷を開始
この酔仙酒造は6月27日から純米酒「KIBO(希望)」(180ml缶)をアメリカに向けて出荷を開始しました。
輸出専用で造られており、原料米には岩手県産のものを使用しています。また缶の表面には岩手県でも水揚げされる「鮭」が描かれており、裏面には酔仙の被災状況などが英語で説明されています。
アメリカへの輸出は初めてで、これから半年間で約4万本を出荷する予定だそうです。
この輸出が決まったのも、昨年3月に千葉で開かれた「FOODEX JAPAN(フーデックス ジャパン)」に出店したことがきっかけになりました。FOODEX JAPANとは、アジア最大級の食品・飲料専門展示会として1976年から毎年開催しているイベントです。ここでアメリカの卸業者と商談が進み、輸出がきまったのです。
6月27日は約4,600本を出荷しました。酔仙酒造の社長金野氏は「日本酒以外にも三陸にたくさんあるおいしいものを発信していくきっかけにしたい。まさに希望を込めた商品だ」と大いに期待している様子です。
3. 岩手県の日本酒の輸出量
岩手県酒造組合によると、県内の日本酒輸出量は増加傾向にあるといいます。
2008年7月~09年6月は48.2kl(1升瓶換算で約26,700本)だったものが、2012年7月~13年6月には85.4kl(1升瓶換算で約47,400本)と2倍近くに増えました。そのうち株式会社南部美人の「南部美人」が45kl、株式会社あさ開の「あさ開」が38klで、この2社が大半を占めています。主な輸出先は、アメリカ、中国、韓国、台湾だそうです。
また、酒造組合は「国内だけで日本酒の消費量を伸ばすことは難しい。酔仙は、復興のためにも積極的に日本酒を世界に広めてほしい」と述べています。
4. ひとこと
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)というワインのコンテストでも日本酒部門が設立されたり、和食のユネスコ世界無形文化遺産登録などもあり、世界でも日本酒人気の気運が高まっています。
【わかりやすいSAKEニュース】アメリカ・カナダで盛り上がりを見せる日本酒市場の現状とは?では、
「海外でも日本酒が造られており、新たな文化として広まりつつある」というお話をしましたが、私はこれと同時に「日本産のSAKE」も世界中で楽しんでもらいたいと思っています。世界で愛されている醸造酒であるワインも、日本ではフランス・イタリア・チリ・カルフォルニア、そして国産ワインと、さまざまな国で造られたワインが飲まれています。
このように世界の各地で造られた個性あるSAKEが増え、それらの日本酒が世界の至るところで根付いていくとともに日本産のSAKEも一緒に楽しんでもらえたらよいですね!
今回は以上です!では、また次回♪