「わかりやすい!すぐに話せる!用語解説」シリーズ第4弾。今回は吟醸造りについてご説明します。
吟醸・・・よく聞く言葉ではありますが、「それは何?」と聞かれると明確に答えられる人はおそらく少ないでしょう。
そもそも「吟醸造り」とは?
吟醸造りの日本酒ってどんなお酒?と質問すると、「果実みたいなフルーティな日本酒」や「高級なお酒」という回答が聞こえてきそうです。
国税庁の吟醸造りの定義は「吟醸造りとは、吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造することをいいます」
一説によると「吟醸」という言葉は大正時代ころに使われだしたと言われています。そもそも「吟味して造られたお酒」を意味しており、日本酒の価値をより高める修飾語のひとつだったようです。
では今の時代ではどうでしょうか。何を吟味してどう醸せば「吟醸造り」と呼べるのか?明確な規定はあるのか?
今回は「精米の吟味」「酵母の吟味」「造りの吟味」にスポットを当てて説明していきます。
精米の”吟味”
一般的に、原料となる米をどの程度精米するかによって、日本酒の特定名称にも違いが生じます。
精米歩合とは「玄米を削り、残った部分の割合」ですが、「吟醸」を名乗るためには精米歩合が60%以下でなければなりません。国税庁の定義でいう「よりよく精米した」はここに当たります。
しかし、日本酒好きの方からはこんな声が聞こえてきそうです。
「この特定名称のルールによると、精米歩合50%の大吟醸も”吟醸”って名乗れちゃうんじゃないの?」
60%以下というルールですから、精米歩合50%以下で規定される大吟醸酒は吟醸酒でもあると言えます。
ややこしい部分ですが、まさにそこが「日本酒は特定名称でなく、銘柄や造り手で考えるほうがわかりやすい」とされる所以なのかもしれません。
酵母の”吟味”
国税庁の定義では「吟醸造りには特有な芳香(吟香)を有するように醸造すること」と記載されています。
そこで日本酒の香りを決める大きな要素の一つとして、酵母で考えてみましょう。
実は、"特有な芳香”と記述がありますが「○○酵母を使わなければならない」という規定はないのです。一般的に果実や花のような芳香を生む酵母として、9号酵母やアルプス酵母などがありますが、必ずしもこれらを使う必要はありません。
蔵元の造りの方向性によって酵母も多分に変化するので、「特定名称は同じ吟醸酒なのに、香りの強さや質が全然違う!」ということもしばしばあります。ある意味「飲んでみるまでわからない」のが日本酒のいいところかもしれません。
造りの”吟味”
最後は「造りの吟味」です。
「白米を低温でゆっくり発酵させ・・・」とありますが、たとえば「低温とは一体何度のことなのか?」「”ゆっくり”とは何分、何時間、何日のことなのか」数値的な基準はありません。
ただ、これまで一般的に「吟醸造り」の日本酒といえば、「香り高い」「上質」「蔵元の渾身の酒」「新酒鑑評会に出されるような酒」など、飲み手と造り手の間に共通認識がありました。
しかし、昨今では「低温でゆっくり発酵させ、吟味して醸したお酒」でも、あえて純米酒で統一して販売したり、独自シリーズを展開して、これまでの吟醸造りにないようなオリジナル色を出したりしている場合も多くみられます。
このことからも、「吟醸造り」というキーワードから一様に判断するのではなく、蔵元の公式WEBサイトや酒販店で、蔵元の方向性や造りのこだわりの情報を得て選ぶといいでしょう。
「吟醸造り」をまとめると・・・
1. ラベルに「吟醸」と表記するためには「精米歩合60%以下」という規定が存在する (その他の規定もある)。
2. 使用酵母や造りの方法には明確な統一規定が存在しない。蔵元の基準で吟味して醸されたものが吟醸造りである。
「吟醸造り」という手法は、ある程度自由度が高く、商品ごとで味や香りがまったく違った印象になる可能性があります。
ただ、本来の「吟味して醸す」という定義どおり、「蔵元の技術を結集させたお酒」であることは間違いなさそうです。
(文/sake_shin)