みなさんこんにちは!
SAKETIMESライター兼名古屋で"焼肉と日本酒"という日本酒の新しいシーンの提案をしております「和牛焼肉じろうや 介」の渡邉貴都です。
今回は久野九平治氏に伺ったお話の第4弾です。
前回までは日本酒造りにおける麹の重要性、お米の大切さについてご紹介いたしました。今回は前回までのお米の大切さを踏まえた上でお米のセパージュ(品種)のお話をご紹介いたします。
「早生(わせ)」と「晩生(おくて)」とは?
セパージュ(品種)の違いは大きく分けて「早生」と「晩生」に分かれます。
「早生」と「晩生」とは何か。それは、田植え・稲刈りの時期の違いです。
早生は田植えを4月、稲刈りを8月下旬に行う品種。一方、晩生は田植えを6月、稲刈りを11月に行うものを指します。
その対比がわかりやすいのが「山田錦」と「五百万石」なのです。
早生:「五百万石」(主産地・新潟)
晩生:「山田錦」(主産地・兵庫)
お米は身が膨らんでいく段階で昼夜の温度差が必要です。
温度差があることにより身が大きく膨らみます。
「早生」のサイクルでは昼夜の気温差があまり生まれません。
本来は稲のサイクルは「晩生」でした。つまり本来、稲は"西の作物"だったのです。
しかし、昭和30年以降の高度経済成長に伴い、人口が増加しました。
人口分の食を満たすことができるよう、早く寒くなるためにお米の栽培に適さない北の地域でもお米を作りたい!という発想になり、工業・科学のメスが入り品種改良が行われました。その代表が「コシヒカリ」です。
実は、今の米どころのイメージは昭和30年以降につくられたものだったのです。
本来の米どころは兵庫から西だったのです。
そのため、京都や兵庫に歴史のある大手蔵元が多いのですね!
「早生」「晩生」それぞれの特徴
特徴の違いについて久野九平治氏は「みかん」を例にご説明されました。
実はみかんにも「早生」「晩生」があります。
みかんは10月ごろからスーパーに並びますが、その時期のみかんには「小さい・硬い・あまり甘くない」といったイメージを抱きます。
しかし年明けごろに並ぶみかんには「大きい・柔らかい・甘い・みずみずしい」といったイメージを抱きます。
これをお米に置き換えると、
五百万石(早生) → 小さい・硬い・甘味が弱い・水気が乏しい
山田錦(晩生) → 大きい・柔らかい・甘い・みずみずしい
となります。
山田錦の評価が高い理由はここにあるのです。
晩生の山田錦は大きく、柔らかく、甘く、みずみずしい。
つまり、溶けやすく、酒造りのガソリンになりやすいのです。
また、麹はカビでありカビの栄養素は水分です。よって、晩生の方が麹も繁殖しやすいのです!
「早生」と「晩生」がもたらす日本酒の味わい
農家さんたちの言葉に「親戻り・先祖帰り」という言葉があります。
先ほど申し上げた通り、「早生」の稲は品種改良がなされています。
品種改良は、地域の気候に合わせたお米をつくるために、異なる品種を掛け合わせます。
「親戻り・先祖帰り」とは、時間の経過と共に”親の特性”が顔を出してくることを指します。地域の気候に合うお米を目指して作ったとしても、長い時間のなかで親の品種に似た性質があらわれてしまう、という意味です。
この親戻り・先祖帰りは日本酒になってからも生じます。
早生の品種の日本酒は、お米が早くできる分、早く型崩れを起こすように思われます。つまり、造られてからすぐに飲むのが一番おいしくお召し上がりいただけると思われます。逆に、晩生のお米は熟成に適しやすいということになります。
お料理とのマリアージュであらわすと、早生のお米でできた日本酒は薄味、晩生のものは濃い口の料理と合います。
九平治氏は「早生は初々しいほっそりタイプの女性、晩生は酸いも甘いも経験したグラマラスな女性」と表現されていました。しかし「あくまで早生、晩生による違いはベースであり、各酒蔵さんの個性、目指す方向性により様々な味わいの商品がリリースされています」ともおっしゃっていました。
今回はお米のセパージュ(品種)についてのお話でした。
個人的な感想ですが、今回の「早生」「晩生」のお話は日本酒やお米だけでなく様々な物事に置き換えられるような気がしました!
次回が久野九平治氏インタビューの最終回です!お楽しみに!
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