ミス日本酒(Miss SAKE)」は、日本酒と日本文化の魅力を日本国内外に発信する、美意識と知性を身につけたアンバサダーです。

応募総数約2,000名の中から、「2021 Miss SAKE」グランプリの8代目に選ばれたのは、愛知代表 松崎未侑(まつざき みゆ)さんです。現在、大学生の松崎さんは、醸造の文化が古くから続いている愛知県半田市出身。ポルトガル留学の経験があり、英語とポルトガル語の通訳ができる国際派です。

そんな松崎さんに、グランプリ受賞直後の気持ちとこれからの展望についてお聞きしました。

「自分らしく学び、自分らしく発信していく」

─ 「2021 Miss SAKE」グランプリの受賞、おめでとうございます。

「ありがとうございます!グランプリに選んでいただいてとても光栄なことだと感じています。これも周りのお力添えがあってこそ。愛知代表として送り出してくださった愛知県酒造組合をはじめとするスポンサーのみなさま、家族や友人、Miss SAKE愛知ファミリー、応援してくださったみなさまへの感謝の気持ちでいっぱいです」

松崎さんが「同志」と話す2021 愛知大会ファイナリストたちとの1枚。コロナ禍でなかなか会えない中でもファイナリストとの交流は大会後も長く続いているのだそう。

松崎さんが「同志」と話す2021 愛知大会ファイナリストたち。コロナ禍でなかなか会えない中でも交流は大会後も長く続いているのだそう

─ 松崎さんを支えてくださった「Miss SAKE 愛知ファミリー」とは、どのような方たちでしょうか?

「Miss SAKE 愛知大会で出会ったファイナリストのみなさん、酒蔵や事務局のみなさんを、敬愛の念を込めてこう呼んでいます。酒蔵見学の時にファイナリストのひとりが『みんなでお酒を楽しみたいから』とバスを手配してくれて、遠足みたいな時間を一緒に過ごせました。それがきっかけでファイナリスト同士で仲良くなれたと思います。みんな個性的で、お互い学び合える、尊敬できる同志です。

着付けやナレーション、発酵や日本酒講座などの講師を務めてくださった、2020年の愛知大会ファイナリストの先輩方はお姉さん。コロナ禍に配慮しつつ最終選考会に向けて激励会を開いてくださった愛知酒蔵組合の青年部・愛醸会のみなさんは、私にとって日本酒のことを教えてくださるお兄さん。愛知事務局の方々は、まるで両親のようにのびのびと学べる環境を整えてくださいました。私にとって、まさに暖かい家族のような存在です」

松崎さんが愛知の地酒の魅力を他都道府県から参加したファイナリストに共有できたという関谷醸造での酒蔵見学。(最後列の左から2人目が松崎さん)

松崎さんが愛知の地酒の魅力を他都道府県から参加したファイナリストに共有できたという関谷醸造での酒蔵見学。(最後列の左から2人目が松崎さん)]

─ 「Miss SAKE」は、どのようなきっかけで応募されたのですか?

「Miss SAKEは、2020 Miss SAKE 愛知グランプリの髙田百子さんがSNSで紹介していたのを偶然見かけたのがきっかけです。小学生のころは、わりと大人しい子だったのですが、海外留学をしたり、カポエイラを習ったりするなかで、積極的な部分が出てきて、何事にもチャレンジする学生生活を送っていました。そんなときにMiss SAKEのことを知り、日本酒が好きな私にピッタリ!と思って、すぐに応募を決めたんです。

私は海外留学中に日本酒を友人にプレゼントして、すごく喜んでもらった経験があるんです。その時に國酒としての日本酒の魅力に気づきました。当時はこんなにもたくさんの種類や味わいがあると知らなかったのですが、今はその違いを楽しむのに夢中です。

個人的にはお米の旨味を感じる少しボディのしっかりとしたお酒が好みです。芳醇な味わいに加え、乳酸っぽいすっきりとした酸味が合わさっているお酒だと、杯が止まらなくなります」

ファイナリストお披露目会(前列左から4人目が松崎さん)

ファイナリストお披露目会(前列左から4人目が松崎さん)

─ 最終選考会の直前はどのような心境でしたか?

「2021年3月に行われたファイナリストお披露目会では、これまで8年間も続いているMiss SAKEという大役を前にして、私が本気で挑めるのだろうか?という不安を感じていました。責任とプレッシャーで夜も眠れない日々が続いたこともあったんです。あの時は『私が愛知代表でいいのかな?』と自信が揺らいでいました。

でも、その後に行われたナデシコプログラム(Miss SAKE ファイナリストが日本酒や日本文化について学ぶ講座)に参加して、その様子をSNSを通して発信すると、さまざまな方から感想や励ましのコメントをいただきました。そこで、『自分らしく学び、自分らしく発信していくだけでも意味がある。このことを応援してくださっている方にちゃんと届けていきたい』と、受け止めることができました」

ナデシコプログラムで参加した手漉き和紙体験(写真左)と、江戸切子の作成

ナデシコプログラムで参加した手漉き和紙体験(写真左)と、江戸切子の作成

─ 選考中、心がけていたことはありますか?

「私が日常的に意識しているのは、『自分の直感に従うこと』『何事も興味を持って取り組むこと』『今しかないこの時間を楽しむこと』の3つです。

振り返ってみれば、Miss SAKEへ応募する以前も、ポルトガル語やカポイエラを学び、海外留学や海外留学生の就労支援インターンシップなど、新しいチャレンジに取り組んできました。それぞれ身近にある物事だったり、きっかけとなる出来事に出会ったりしたときに、先の3つを意識していることで、結果的に自分のものになったと思います。

長い時間をかけて悩んでいても、行動しなければ何も起こりません。どんなことも積極的に楽しむこと、そして、その中で自分が感じる気持ちを大事にしていけば、徐々に進むべき道が見えてくるという感覚がありますね」

「日本酒は日本人のアイデンティティ」

ナデシコプログラムを通じてともに学び合いをしたファイナリストの面々。

ナデシコプログラムを通じてともに学び合いをしたファイナリストの面々

─ 松崎さんが目指す「Miss SAKE像」について、教えていただけますか?

「自分がなりたいMiss SAKEの在り方は、まだ模索中ですね。歴代のMiss SAKEの方々とつい自分を比べてしまうのですが、同じMiss SAKEという立場でも、それぞれ違うMiss SAKE像をお持ちで、その違いも魅力的なんです。日本酒と日本文化のアンバサダーという役割は同じでも、担う人によって体現することが異なる、という感じなのかなと捉えています。

母に相談したら『立場が人を作るということもあると思うから、まずは未侑らしく行動しては?』と言ってもらいました。

私の強みは、海外の経験を通じて外から見た日本という視点を持っていることだと思います。これまでに培ってきた海外の友人・知人との関係性を活かしながら、Miss SAKEとして行動に移していきたいですね」

─ 松崎さんにとって目標とする方はいらっしゃいますか?

「ナデシコプログラムの講義でお会いした平出淑恵(ひらいで としえ)さんが、とても印象的でした。元・国際線客室業務員として従事するかたわら、ソムリエの資格を取得され、その知識を活かして日本酒の普及活動をされていらっしゃる第一人者です。酒サムライコーディネーターやIWCのアンバサダーを務めるような方なので、お会いする前は、さぞパワフルな方だろうと想像していたのですが、まるで正反対の物腰の柔らかい女性でした」

松崎さんが「こんな女性になりたい!」と語っていた平出さんとの1枚。その温かい人柄の虜になったそう

松崎さんが「こんな女性になりたい!」と語っていた平出さんとの1枚

─ 平出さんのどんなところに惹かれたのでしょうか?

「平出さんは、その場にいるすべての方が彼女の想いに共感し、一緒に取り組みたいと思わせてしまうような方です。これまでは、何かを進める上で議論や対立といった局面は少なからずあるものと思っていたのですが、対話と共感を通じて一緒に作っていく、まさに"共創"ということを間近に見ることができたよい経験でした。

私はポルトガル留学中、友人に日本酒をプレゼントしたことがあります。そしたら、宝物のように喜んでくれたんですね。ちょうど自信を失っていた時期だったんですが、友人の笑顔をみて、日本人であることに誇りを感じ、アイデンティティを取り戻せました。日本酒が人の気持ちに大きな影響を与えたり、自己肯定感を高めたりすることに気づけた大事な経験です。

平出さんも『日本酒は日本人のアイデンティティである』という考えをお持ちです。平出さんのお話をうかがってから、海外への日本酒・日本文化の普及という役割を担うことで、『日本酒が日本人のアイデンティティであることに気づいてもらい、アイデンティティを意識することで、自信を持った行動につながる』ことを、伝えられる女性になりたいと考えるようになりました」

「コロナ禍でもできることを」と、海外中継で現地の日本酒事情を紹介する動画を作成し、Miss SAKE Channelで公開。海外の友人と松崎さんの掛け合いから日本酒が学べるところも面白い。

「コロナ禍でもできることを」と、海外の友人と松崎さんの掛け合いで現地の日本酒事情を紹介する動画を作成し、Miss SAKE Channelで公開

─ 最後に、8代目の「Miss SAKE」としての意気込みや想いなどがあれば教えてください。

「コロナ禍で世界が分断を余儀なくされる中ではありますが、そんな中でも、日本酒を通じて人と人のつながりや、古くから大事にされた日本文化の良さをあらためて感じます。まだ海外渡航などは難しい時期が続きますが、一緒に戦った同志でもある2021 Miss SAKEファイナリストとともに、SNSなどを活用しながら、アンバサダーとして日本酒や日本文化の魅力を伝えていきたいですね。

その中で、私らしい"Miss SAKE"としての姿を模索して、“共創”を起こせるように精進してまいります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします!」

インタビューを終えて

左から順に、「2021 Miss SAKE」準グランプリの長野代表・糟谷 恵理子(かすや えりこ)さん、「2021 Miss SAKE」グランプリの愛知代表・松崎さん、「2021 Miss SAKE」準グランプリの宮城代表・斎藤 百香(さいとう ももか)さん。

左から順に、準グランプリの長野代表・糟谷 恵理子(かすや えりこ)さん、グランプリの愛知代表・松崎さん、準グランプリの宮城代表・斎藤 百香(さいとう ももか)さん

「2021 Miss SAKE」8代目の松崎さんは、まだ大学生とは思えないほど自分の価値観をしっかりと持ち、周囲への感謝を忘れない素敵な方でした。日本酒や日本文化について、彼女がどのような言葉で世界に伝えていくのか楽しみです。

松崎さんの活動は、Miss SAKE公式BlogやYoutube「Miss SAKE / ミス日本酒 Channel」などから知ることができます。ぜひフォローしてみてください。

(取材・文:spool/編集:SAKETIMES)

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