2024年1月1日、石川県の能登半島を震源とした、最大震度7の大地震が発生しました。この「令和6年能登半島地震」では、能登地方を中心に、建物の倒壊や商品の破損など、複数の酒蔵が被害を受けています。
さまざまな企業や団体が復興支援に取り組んでいるなか、能登地方の酒蔵も含め、石川県内のほとんどの酒蔵が加盟している「石川県酒造組合連合会」も、支援活動に注力しています。
県内の酒蔵をとりまとめる酒造組合として、これからどのような支援に取り組んでいくのか、2024年5月に新たな会長に就任した、石川県白山市の車多酒造(代表銘柄「天狗舞」)の代表取締役社長 車多一成(しゃた・かずなり)さんに話を伺いました。
「酒蔵の復興は、長い長い戦いになる」
北陸地方を代表する日本酒の銘醸地として知られる石川県。県内の地域は「奥能登」「中能登」「金沢近郊」「加賀・白山ろく」の4つに分けられ、異なる自然環境や文化のもとで、個性の豊かな日本酒が造られています。
地元の酒蔵をとりまとめる酒造組合も、地域ごとに「金沢酒造組合」「白山酒造組合」「小松酒造組合」「七尾酒造組合」「鳳珠酒造組合」の5つに分けられ、それらを統括しているのが「石川県酒造組合連合会」です。石川県の日本酒の魅力を普及させるために、SNSを活用した情報発信やイベントの開催など、さまざまな施策に取り組んでいます。
2024年5月に、石川県白山市の車多酒造の代表取締役社長 車多一成さんが、新たな会長に就任。直後のFacebookの投稿では、石川県酒造組合連合会として、「能登の酒蔵の復興支援を第一に取り組んでいく」という表明がありました。
「能登町の数馬酒造は、4月に自社醸造を再開することができましたが、その他の酒蔵については、地震から半年以上が経過しているにもかかわらず、瓦礫(がれき)の撤去さえも始まっていないところもあります。まだまだ手付かずの状況で、私も愕然としています。酒蔵の復興は、長い長い戦いになりそうです」
石川県酒造組合連合会では、被災した酒蔵の支援を目的とした義援金口座を開設し、これまでに2億円を超える義援金が集まりました。3月には、石川県の18酒蔵が共通のラベルデザインの日本酒を販売し、その売上の一部を被災した酒蔵に還元する支援プロジェクト「つなぐ石川の酒」を企画しました。
BSフジの番組「小山薫堂 東京会議」による全面協力のもと、ラベルデザインは、CMディレクターのなかじましんやさんが率いるチーム「パッケージ幸福論」のメンバーが担当しました。
酒蔵の一致団結や復興を願う想いを表現するために、石川県の形が一片の折り紙でデザインされています。
「『つなぐ石川の酒』の各商品については、すでに完売している酒蔵もありますが、車多酒造も含め、これからも販売を続けていく酒蔵もあります。継続的な取り組みとなるように、第2弾も検討しています」
さらに、石川県酒造組合連合会のサポートによって、被災した酒蔵が県内・県外の酒蔵とともに共同醸造を行うなど、まだ少しずつですが、能登の酒蔵の日本酒が流通し始めています。
「能登の酒蔵の日本酒は地元流通がほとんどでした。ただ、地元での販売が難しい現状を考えると、いかにして県外のお客様に飲んでいただくかが重要になると思います。実際に石川県に来ていただくことももちろんうれしいですが、県外にいながらでも、被災した酒蔵の日本酒を飲んでいただければ、本当に大きな支援になります」
「その一方で、地震から約半年が経った現在でも、被災した酒蔵の復興はほとんど進んでいません。さらに、能登の状況を伝える情報はどんどん少なくなっていると感じています。石川県酒造組合連合会として、被災した酒蔵の支援につながる情報発信に、さらに注力していきたいと考えています」
復興を支援する取り組みのひとつとして、毎年10月に金沢市内で行われている、石川の地酒と美食の祭典「サケマルシェ」が今年も開催されることになりました。2024年のテーマは「復興に向けて」に決定し、能登の酒蔵も参加する予定です。
いま、必要な支援とは
被災した酒蔵の復興にかける想いについて、車多さんは以下のように話してくれました。
「酒蔵を復興さえるためには、とにかく資金が必要です。国や自治体から出る補助金もありますが、自分たちでまかなわなければならない分は決して少なくありません。被災した酒蔵からは、新たに借金をしてまで続ける必要があるのかと、廃業を考えたという話も聞きました。
ただ、人間の力ではどうしようもない天災で酒蔵がなくなってしまうのは、同じ業界の仲間として非常に悔しい。だからこそ、私は『地震になんか負けてたまるか』『絶対に復活させる!』という想いで、支援活動を続けています。
「酒蔵の復興は本当に長い戦いになりますが、石川県の日本酒にとって、今回の地震はいろいろな意味で大きなターニングポイントになるのではないかと考えています。復興支援の活動を通して、能登の酒蔵の魅力を、これまで知らなかった方々に広く伝えていくことが、私の役割だと思っています」
インタビューの最後に「悪いことはそんなに長く続かないので、これからは良いことが起こりますよ」と話してくれた車多さん。被災した酒蔵の復興にはまだまだ時間がかかりますが、こうした前向きな言葉や姿勢を持ち続ける人々の存在があるからこそ、少しずつでも復興が進んでいくのだと感じました。
義援金の受付情報
現在、能登半島地震からの復興を目指して、石川県酒造組合連合会と日本酒造組合中央会が、義援金を受け付けています。
石川県酒造組合連合会
- 銀行名:北國(ホッコク)銀行
- 支店名:金沢城北(カナザワジョウホク)支店
- 口座種別:普通
- 口座番号:036977
- 口座名義:石川県酒造組合連合会(イシカワケンシュゾウクミアイレンゴウカイ)
- 注意事項:寄付金控除の対象にはなりませんので、ご了承ください。
石川県酒造組合連合会は、被災した組合員支援の為、義援金口座を開設致しました。
この義援金は被災された酒蔵支援のみに使わせていただきます。
皆様の温かいご支援賜りますようお願い申し上げます。北國銀行 金沢城北支店
普通 036977
石川県酒造組合連合会— 石川県酒造組合連合会【公式】 (@sake_ishikawa) January 10, 2024
日本酒造組合中央会
- 銀行名:三井住友銀行
- 支店名:日比谷支店
- 口座種別:普通
- 口座番号:8646691
- 口座名:日本酒造組合中央会 義援金口 会長 大倉治彦
(ニホンシュゾウクミアイチュウオウカイ ギエンキンクチ カイチョウ オオクラハルヒコ) - 備考:
・寄付金控除の対象にはなりませんので、ご了承ください。
・法人からの義援金については、損金算入限度額の範囲内で損金算入の対象となりますので、ご留意ください。
・義援金に対する受領証が必要な場合は、別紙の様式で日本酒造組合中央会までご連絡ください。
日本酒造組合中央会では、令和6年度能登半島地震で被害を受けた蔵元に対する義援金の受付を開始しました。
皆様の温かいご支援をよろしくお願いいたします。
詳しくは当会HPをご覧ください。https://t.co/5K70CoWmVz#日本酒造組合中央会 #國酒 #日本酒 #義援金 #能登半島 #被災 #能登半島地震 #支援 pic.twitter.com/sOjI2UnTlB— 日本酒造組合中央会(公式) (@JapanSakeShochu) January 10, 2024
地震から半年が経過し、被災した酒蔵の状況を伝える情報が少なくなっていますが、SAKETIMESは今後も支援を続けていきます。日本酒ファンのみなさんも、継続的な支援をよろしくお願いします。
(取材・文:SAKETIMES編集部)