2020年4月9日、国税庁は、新型コロナウィルスの影響を受けている飲食店への救済措置として、「期限付酒類小売業免許」を付与すると発表しました。

飲食店がお酒のテイクアウト販売をするためには酒類小売業免許が必要ですが、この免許を取得すると、最大6ヶ月間、飲食店は在庫酒類のテイクアウト販売をすることが可能になります。

通常、一般酒類小売業免許の取得には、申請受理から免許交付まで通常2ヶ月ほどかかりますが、「期限付酒類小売業免許」では、特別措置として免許付与後に審査が行われ、手続きを迅速に完了することができます。免許の有効期限は、取得日から6ヶ月間で、申請期間は令和2年6月30日(火)まで。

「期限付酒類小売業免許」で販売できる種類は、日本酒・ビール・焼酎・スピリッツ・リキュールなど、開封・未開封のものも含めたすべての酒類が対象ですが、既存の取引先から仕入れた酒類の販売に限ります。

販売方法は「テイクアウト」だけでなく、「都道府県を越えない宅配(デリバリー可)」や、消費者が希望する量だけ販売する「量り売り」も可能。しかし、インターネット等を利用して、2都道府県以上の広範な地域を対象として酒類を販売することはできません。別途で通信販売酒類小売業免許を取得する必要があります。

本記事では、この制度を利用して「期限付酒類小売業免許」を取得した飲食店の方に、お話をうかがいました。

海鮮居酒屋MARU (東京都墨田区)

海鮮居酒屋MARU 外観

錦糸町駅から徒歩2分。市場で仕入れた新鮮な魚介と、全国から厳選した日本酒60種、焼酎150種類以上を楽しめるお店です。

チーフの丸満竜太さんにお話をうかがいました。

海鮮居酒屋MARUのチーフの丸満竜太さん

─ 税務署の窓口は混雑していましたか?

朝一番に電話をしたおかげか、すぐにつながりました。13:00に税務署に行ったときは、何名も同じ要件で来署している方がいましたね。担当の方も朝からこの件での問い合わせが殺到し、とても忙しいとおっしゃっていました。

─ 免許申請から実際に酒類の販売ができるようになるまで、どのくらいの期間が必要でしたか?

【申請を決めてから、申請するまでの期間】

4月9日に発表されてからすぐに詳細を調べ、翌朝10日、税務署が始まる8:30に電話をして、13:00に訪問のアポを取りました。

できることなら、その場で手続きを終わらせたいと思っていたので、営業許可証や履歴事項全部証明書(謄本)、印鑑証明書(実際には使いませんでした)など、あらゆる書類を準備して税務署へ持って行きました。担当者に指導を受けながら書類に記入して、その場で申請書を提出しました。

【申請から免許取得までの期間】

4月10日に税務署に申請書を提出し、14日に「書類の確認ができたので、明日、免許通知書を発送する」と連絡がありました。16日に簡易書留で免許通知書が店舗に届きました。

日本酒飲み比べセット

【免許取得から実際に販売するまでの期間】

免許が届いたのですぐに販売したいと思い、準備がまだしっかりと整っていませんでしたが、SNSで告知しました。その日は、2組ほどお客様が来店してくださり、バタバタしながらも販売することができました。

─ 免許申請をスムーズに行うために気をつけたポイントはありますか?

申請書類の記入方法をまとめたので、興味のある方はご覧ください。税務署によって見解が異なる可能性もありますが、基本的にはこの通りに記入すれば問題ないと思います。

─ 今後、どのように酒類を販売していく予定ですか?

店頭での「量り売り」を中心として、希望する方には未開封の瓶のまま販売します。また、現在はおつまみとお酒を別々に販売していますが、そのうちペアリングセットも販売したいと考えています。

「量り売り」とは、お客様にお酒を選んでいただき、その場で別の容器に移し替えて販売する形式です。お客様が持参した容器に移し替えることもできますし、お店で用意した容器を購入していただき、それに移し替えることも可能です。90ml、180ml、360mlの容器を用意しています。

「紀土」の詰め替え販売

混同しやすいのですが、「量り売り」と「詰め替え」は異なります。「詰め替え」は、あらかじめ一升瓶などから小瓶に移し替えて用意しておく販売形式。この場合は、別途「酒類の詰替え届出書」を提出しなければなりません。

デリバリーに関しては準備中です。実施するとすれば未開封の瓶の販売をメインとして、飲み比べセットの販売もしたいですね。デリバリーの体制が整ったら、あらためて申請を考えています。

大衆すし居酒屋 ジャポニカ (大阪市北区)

大衆寿司居酒屋 ジャポニカ

梅田駅から徒歩3分。京橋の人気店「京橋 二刀流」の姉妹店であり、海鮮や寿司を中心とした料理を、日本各地の日本酒とともに楽しめます。

オーナーの渡邊蓮也さんにお話をうかがいました。

大衆寿司居酒屋ジャポニカの藤岡さん

─ 税務署の窓口は混雑していましたか?

いえ、あまり混んでいませんでした。

─ 免許申請から実際に酒類の販売ができるようになるまで、どのくらいの期間が必要でしたか?

【申請を決めてから、申請するまでの期間】

1日間です。

【申請から免許取得までの期間】

3時間です。

※特に短期間で取得できたケースのようです。

免許取得から実際に販売するまでの期間

7日間です(商品開発をしていたり、梱包容器などが届くまでに時間がかかったため)。

大衆すし居酒屋 ジャポニカでテイクアウト販売をしている様子

※ラベルシールの著作権については酒蔵から許可を取得済み。

─ 免許申請をスムーズに行うために気をつけたポイントはありますか?

申請に必要な書類や準備するものについて、事前に税務署に電話で問い合わせました。

─ 今後、どのように酒類を販売していく予定ですか?

店頭やデリバリーにて、日本酒やワインの詰め替え販売を予定しています。ただ、各メーカーごとにラベルの使用許可を取得中ですので、販売開始までには少し時間がかかると思います。

「期限付酒類小売業免許」の申請は所轄の税務署まで

「期限付酒類小売業免許」の申請について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。申請先は、所轄の税務署となります。不明点は、酒税やお酒の免許についての相談窓口まで。

現在、各地の税務署に飲食店からの問い合わせが殺到しているそうで、税務署の職員の方々も必死に対応していただいています。問い合わせの際は、ひとことでも「労い」「感謝」のことばをぜひお伝えしてください。

SAKETIMESは、日本酒産業をはじめ、飲食店業界のみなさまがこの苦境を乗り越えられるよう、メディアの立場から支援につながる取り組みを続けていきます。

(文/SAKETIMES編集部)

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