「あずきバー」で知られる総合食品メーカーの井村屋による新しい日本酒ブランド「福和蔵」。
2021年の醸造開始からわずか1年で、全国新酒鑑評会の入賞、全国燗酒コンテストの金賞、三重県新酒品評会の優等賞と、堅調に実績を積み上げています。
これまでは地元の三重県を中心に流通していましたが、昨秋から、都内での販売を本格的にスタート。日本酒ファンから支持されている「名酒センター」「はせがわ酒店」「和酒の店 藤小西」「伊勢五本店」での取り扱いが始まりました。
全国の銘酒が集まる東京都の酒販店から見て、福和蔵にはどんなポテンシャルがあるのでしょうか。各店を取材し、その魅力について話を聞きました。
名酒センター「三重県らしさを伝えやすい日本酒」
ディープなセレクションが味わえる有料試飲で人気の「名酒センター 御茶ノ水店」。神田明神のすぐ近くにあるため、観光客から常連客まで、幅広い層に愛されています。
「約35軒の酒蔵から、150〜200種類の商品を取りそろえています。福和蔵は、ほんのりフルーティーで、甘すぎも辛すぎもせず飲みやすいので、日本酒を飲み慣れていない人にもおすすめしやすいですね」
そう話してくれたのは、専務取締役の今正光(こん・まさみつ)さん。福和蔵のスタイリッシュなラベルについても、「文字情報が少ないおかげか、『どんな日本酒なんだろう?』と手に取るお客様もいらっしゃいます」と評価します。
「三重県の日本酒は、果実味を感じられるポップな酒質が多い印象です。福和蔵もまさにその特徴を押さえているので、三重県の日本酒の代表として紹介しやすいですね。
また、『純米酒』『純米吟醸酒』『純米大吟醸酒』という各特定名称に対して、消費者が求めるイメージにまっすぐ応える味わいに仕上がっている点も良い。それぞれのカテゴリーの特徴を押さえるのが上手いので、今後、しぼりたてやひやおろしなどの季節商品にも挑戦してほしいと思っています」
はせがわ酒店「日本酒業界に良い刺激を与えてほしい」
東京都の亀戸に本店を構え、麻布十番やグランスタ東京など、幅広く店舗を展開している「はせがわ酒店」。店舗での日本酒の取り扱いは約600種類というこの酒販店でも、福和蔵の取り扱いが始まりました。
「毎日、全国の酒蔵から『新しい商品を試飲してほしい』と依頼があり、日本酒の資格を持つ社員たちが厳密にテイスティングしています。福和蔵は、フレッシュでやわらかく飲みやすい点が高評価で、取り扱いを決めました」
広報担当の後藤みのりさん曰く、酒質だけでなく、井村屋が地元の老舗酒蔵・福井酒造場の酒造りを継承したという背景にも強く共感したのだとか。
「厳しい状況が続いている日本酒業界にとって、他業種からの参入はとても喜ばしいこと。日本酒業界を盛り上げていきたいと思っている私たちにとって、同じ考えを持つ食品メーカーがいることを心強く思っています。今回の取り扱いには、こうした新規参入の動きを歓迎したいという応援の意味もあります」
さらに、「ものづくりに対する、食品メーカーならではの姿勢や考え方も、日本酒業界に良い影響を与えてくれるはず」と後藤さん。
「日本酒は昔ながらの手造りの文化が根付いているので、機械の導入など、現代に合わせた変革には時間がかかります。井村屋のような食品メーカーは、新しい技術を取り入れるスピードが速く、衛生管理への考え方が優れていて、良質な商品を作り続ける再現性も高い。そういう面でも、日本酒業界に良い刺激を与えていただきたいですね」
和酒の店 藤小西「独自のポジションを築いてほしい」
京王線笹塚駅から徒歩3分ほどの住宅街に佇む酒販店「和酒の店 藤小西」。焼酎をメインに扱いながら、厳選した20蔵ほどの日本酒も販売しています。
かつて、「獺祭」の旭酒造が全国区になる前から特約店として取引していたというこの酒販店。これから人気が出るお酒を見極める目利きの店主・石田藤男さんによると、福和蔵を取り扱う決め手となったのは製造規模だとか。
「日本酒は、日本の伝統工芸品のようなものですし、ひとつひとつの酒蔵さんとのつながりを大切にしたいので、なるべく小さな酒蔵と取引をしています。そういう蔵のストーリーを伝えることが、自分の仕事だと思っているんです」
井村屋が酒造りを始めると聞いて興味を持ち、事業開始後まもなく問い合わせたそうですが、そのころはまだ都内での販売はありませんでした。その後、半年ほど経ったある日、井村屋の担当者がお店を訪問。
石田さんは、食品メーカーとして大きな販路をもつ井村屋が、福和蔵の販売にはあえて既存のネットワークを使わず、地道に営業活動をしていることに感心したと話します。
「最近は甘酸っぱい日本酒が流行っていますが、福和蔵は違います。特に純米吟醸酒は味わいが軽すぎず、充分な個性があります。当店のラインナップの中でも、オンリーワンだと思いますよ。日本酒業界に新しく飛び込んできたんですから、これから独自の立ち位置を築いていってほしいと期待しています」
伊勢五本店「安定した品質で、食中酒として万能な一本」
バランスの良い品ぞろえで、飲食店などのプロフェッショナルや日本酒ファンから熱い支持を受ける「伊勢五本店」。本店である千駄木店の店長・長谷部匠平さんは、井村屋の拠点である三重県と同じ東海地方の出身だからこそ、日本酒事業への参入を聞いたときは驚きを隠せなかったそうです。
「全国的にはあずきバーが有名ですが、東海地方では、コンビニの肉まんといえば井村屋というほど、親しみのあるメーカーなんですよ。2022年、日本酒イベントに出展されていた商品を試飲してみたら、本当に美味しくて、取り扱いを決めました」
福和蔵の味わいについては、「酒米に神の穂や五百万石を使うことで、綺麗でシャープな味わいになっています。三重県の酵母ならではの、カプロン酸エチル由来の華やかな香りも特徴」と評価。「当店には、香りが華やかなタイプの日本酒を求めるお客様が多いので、そのニーズに応えてくれていますね」と微笑みます。
「純米吟醸酒は香りが魅力なので、まずは日本酒単体でお試しいただきたい。和食なら刺身、洋食なら前菜など、軽めの料理と合わせても良いですね。純米酒は甘みがより強いので、出汁を使った煮物や鍋と合わせるのがおすすめです。ぬる燗程度に温めるとさらに美味しいですよ」
最後に、今後の福和蔵に期待することを聞きました。
「少量生産なので、まずは純米酒や純米吟醸酒などのレギュラー商品が途切れることなく供給されることが、いちばん大切なのではないでしょうか。その結果、飲食店の方々に愛されるようになって、お客様にもどんどん認知されていってほしいです。
最初にいただいたサンプルから、現在の商品までクオリティが安定しているので、その点については心配していません。これからも、この酒質を維持していただきたいですね」
福和蔵のこれからに期待!
東京への進出が本格的に始まった福和蔵。いち早く取り扱いを決めた4軒の酒販店の話からは、食品メーカーを背景とする高い品質への信頼や、他業種からの新規参入に対する期待が見えてきました。
多彩な日本酒がそろう東京で、福和蔵はどのように愛されていくのでしょうか。まったく異なるジャンルから日本酒業界に飛び込んだ井村屋の挑戦は、まだまだ続きます。
(取材・文:Saki Kimura/編集:SAKETIMES)
Sponsored by 福和蔵(井村屋グループ株式会社)