「あずきバー」で知られる総合食品メーカーの井村屋は、2019年に三重県伊賀市の酒蔵・福井酒造場を継承し、2021年に日本酒ブランド「福和蔵」を立ち上げました。

福和蔵が掲げるコンセプトは、"三重のテロワール"。酒造りに用いる米・水・酵母は、すべて三重県産です。日本酒造りはまだ始まったばかりですが、2022年4月に発売した純米大吟醸酒が令和3酒造年度全国新酒鑑評会に初出品で初入賞するなど、着実に成果を上げ始めています。

前々回の記事では、浅田剛夫会長にインタビューし、井村屋が酒造りに挑戦する理由をお聞きしました。また、前回の記事では、三重県多気町の酒蔵を訪れ、現・酒造部長の安田裕幸さんに、酒造りをする上でのこだわりをうかがいました。

ふたりの話に共通していたのは、「三重県の素材を使い、地元の食材に合う『食中酒』づくりにこだわっている」という点です。

そこで今回は、三重県の景勝地である鳥羽湾を一望できるリゾートホテル・鳥羽国際ホテルで総支配人を務める惣明福徳(そうみょう ふくのり)さんと、同ホテルのフレンチレストラン「シーホース」のソムリエ・浦口健太郎さんに、福和蔵の造る日本酒をテイスティングしていただきました。

鳥羽国際ホテル 総支配人の惣明福徳さん(写真左)と、フレンチレストラン「シーホース」のソムリエ・浦口健太郎さん

鳥羽国際ホテル 総支配人の惣明福徳さん(写真左)と、フレンチレストラン「シーホース」のソムリエ・浦口健太郎さん

三重県の食材に精通する鳥羽国際ホテルのふたりは、福和蔵の日本酒からどのようなインスピレーションを受けるのでしょうか。

鳥羽国際ホテルのレストラン

テイスティングは、鳥羽国際ホテル内の和食レストラン「もんど岬」にて行いました。

福和蔵の日本酒に合わせたい三重県の食材は?

テイスティングしたのは、「純米酒 生酒」「純米酒 1回火入れ」「純米吟醸酒 生酒」「純米吟醸酒 1回火入れ」「純米大吟醸酒 火入れ」の5種類。それぞれのお酒に寄り添う、三重県の食材を使った料理のアイデアをいただきました。

福和蔵 純米酒 生酒

「福和蔵 純米酒 生酒」

酒米は三重県産の五百万石を使用。バナナやメロン、白桃のようなフルーツ香があり、米本来のまるい甘みとふくよかな旨味を感じられる1本です。

テイスティングコメント

浦口健太郎さん(以下、浦口さん)「三重県産の真鯛をマリネして、仕上げに粒マスタードを添えたカルパッチョが合いそうです。粒マスタードとビネグレット(ビネガードレッシング)がもつ酸味と、生酒の甘みがうまく調和するでしょうね」

惣明福徳さん(以下、惣明さん)「少し時間をおくと、香りがワインのように華やかに開く印象を受けました。お米由来の甘さが、濃厚で甘みのある伊勢海老に寄り添ってくれるように感じます。軽く蒸して、バターやクリームを使ったコクのあるソースと絡めても良さそうです」

料理のイメージ

料理のイメージ(写真提供:鳥羽国際ホテル)

商品情報

福和蔵 純米酒 1回火入れ

「福和蔵 純米酒 1回火入れ」

同じく五百万石を使い、1回火入れした純米酒。ほんのりとした柑橘の香りと、白胡椒のようなスパイシーなニュアンスがただよいます。飲み口はドライで、すっきりとした酸味があり、生酒よりもキレの良さが際立つ味わいです。

テイスティングコメント

浦口さん「火入れしたことで感じられるキレと酸味が、白ワインのテイストと似ています。柑橘の香りは、熊野市で収穫できる青みかん『新姫(にいひめ)』みたいですね。ヒラメのような繊細な味わいの白身魚に、塩と新姫を少し搾っていただくような、シンプルな料理が合いそうです」

惣明さん「浦口さんのおっしゃるように、素材の良さを生かした料理も良いですが、対極的に、チーズのようなコクのあるものを合わせても、お酒がうまく絡め取ってくれそうだなと感じました」

商品情報

福和蔵 純米吟醸酒 生酒

「福和蔵 純米吟醸酒 生酒」

三重県産の酒米・神の穂を使った純米吟醸酒の生酒。わずかにガス感があり、グラスに注ぐと繊細な泡が立ちます。香りは、パイナップルのようなフルーティーさがあるかと思えば、青々しく爽やかなニュアンスも。とろみがあり、酸味の余韻が長く続きます。

テイスティングコメント

浦口さん「福和蔵のある多気町で収穫したたけのこを出汁で炊く『若竹煮』を思いつきました。やさしい出汁の味わいを受け止めてくれそうですし、木の芽を添えれば、お酒のもつ青いハーブのようなニュアンスとも重なりそうです」

惣明さん「酸味が長く残るので、酢の物を合わせると良さそうです。生わかめをさっと火にかけて、三重県の近海で獲れる真ダコと合わせる『たこ酢』なんていかがでしょうか」

商品情報

福和蔵 純米吟醸酒 1回火入れ

「福和蔵 純米吟醸酒 1回火入れ」

同じく神の穂を使用した純米吟醸酒の火入れ。乳酸由来のヨーグルトのような酸味と、まろやかなコクを感じられます。純米酒と同様、生酒よりもキレが良く、余韻は短めです。

テイスティングコメント

浦口さん「ニュートラルな味わいで、食中酒として最適な印象です。合わせる料理は、桑名市で獲れる『ハマグリの酒蒸し』をイメージしました。お酒のまろやかな風味とハマグリの旨味、磯の香りがミルキーなお酒と絶妙にマッチしそうです」

惣明さん「カプレーゼとも合うでしょうね。モッツァレラのコクとミルキー感、トマトの酸味、バジルのさわやかさと重なる要素がお酒に含まれているので、きっとぴったりですよ」

商品情報

福和蔵 純米大吟醸酒 火入れ

「福和蔵 純米大吟醸酒 1回火入れ」

最後にテイスティングしたのは、三重県産の山田錦を使用した純米大吟醸酒の火入れ。マスカットのようなジューシーな香りの中に、青々としたボタニカルな風味が溶け込んでいます。口あたりはなめらかで、凝縮された旨味が心地良く広がります。

テイスティングコメント

浦口さん「薄造りした志摩市の『あのりふぐ』に、ポン酢を軽く付けて、もみじおろしやねぎといっしょにいただくと良さそうですね。ボタニカルなニュアンスが、大根の辛味やねぎの青々しさとリンクしそうです。また、伊勢神宮のそばを流れる宮川の上流で獲れるアユを刺身にして、同じく宮川のわさびを添えていただくのも贅沢ですね」

惣明さん「魚料理にもぴったりですが、香りが華やかなので、ワイングラスに注いで肉料理との相性も楽しめそうです。松阪牛の赤身を使ったローストビーフに、西洋わさびを添えていただきたいですね」

料理のイメージ

料理のイメージ(写真提供:鳥羽国際ホテル)

商品情報

  • 商品名:福和蔵 純米大吟醸 火入れ(数量限定仕込み)
  • アルコール度数:15-16度
  • 精米歩合:40%
  • 販売価格:3,300円(720mL・税込)

三重県の豊かな食材に優しく寄り添うお酒

三重県を代表する総合食品メーカーである井村屋と、長く深い交流を重ねる鳥羽国際ホテル。「井村屋が日本酒事業を始めると聞いたときは驚きました」と惣明さんは話します。

鳥羽国際ホテル 総支配人の惣明福徳さん

「最初は『どうして和菓子屋が日本酒を造るんだろう?』と思いましたね。しかし、同じく歴史ある三重県の酒蔵の伝統を受け継ぎ、さらに、他の酒蔵で酒造りを学んでいるといった話を聞いてからは、井村屋の酒造りにかける真剣な想いが伝わりました」(惣明さん)

今回、初めて福和蔵の全ラインナップをテイスティングしたふたり。味わいは商品によってさまざまですが、すべて「米のやさしい甘みを上手に引き出した日本酒」という点で共通しているといいます。

「和菓子屋が造る、クリーンでやさしい日本酒だと思いました。また、共通項はありつつも、それぞれの味わいの違いも明確に感じられて、いろいろなペアリングのインスピレーションが浮かびました」(浦口さん)

伊勢海老や松阪牛など、海の幸と山の幸の両方に豊富な食材があふれる三重県。惣明さんは「地形が南北に伸びた細長い形をしている三重県は北部と南部で気候が異なるので、本当にさまざまな食材が楽しめるんですよ」と、土地の豊かさに胸を張ります。

フレンチレストラン「シーホース」のソムリエ・浦口健太郎さん

「三重県の海では、滋養が豊富で身の締まった魚介類が獲れる一方で、内陸では平地や高地を活かして栽培した野菜や果物が多く採れます。だからこそ、食材を生かした幅広い料理を提案できるんですね」(浦口さん)

最後に、これからの福和蔵に期待することを聞きました。

「三重県といえば、あわびが有名ですが、当ホテルの名物料理が、クリームソースとバターを絡めたあわびステーキなんです。そんな濃厚な味わいの料理にも負けない日本酒が出たらうれしいですね。前回の記事で、コハク酸を出しやすい三重県の酵母を使った酒造りに挑戦したいとの話を聞いたので、実現を楽しみにしています」(浦口さん)

「井村屋は、今回の日本酒事業への参入に限らず、新商品の開発など、和菓子のカテゴリーに留まらない新しい挑戦を続けている印象があります。以前、浅田会長が『変化しなければ駄目なんだ』と話してくださいましたが、その言葉のとおり、これからもいろいろなチャレンジをされるでしょうし、日本酒業界に新たな風を吹きこんでくれることを期待しています」(惣明さん)

「福和蔵」の日本酒ラインナップ

福和蔵のラインナップは、豊かなバリエーションを誇る三重県の食材にやさしく寄り添います。さまざまな料理と合わせながら、"三重のテロワール"を感じてみてください。

(取材・文:近藤ゆうこ/編集:SAKETIMES)

sponsored by 井村屋グループ

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