日々、新たな商品が生まれる日本酒ですが、当然その数と同じだけのラベルデザインが存在します。筆で描かれた力強いデザインのものから、最近では瓶に直接模様を印刷するものまで、その形は様々です。
しかしながら、日本酒は味や香りなどに言及されることは多いのですが、「ラベルデザイン」について語られることはあまりありませんでした。

宏和日立酒造が挑戦する新銘柄「Any.」の開発を追うドキュメンタリー連載第3回は、「Any.」のデザインについて掘り下げていきます!

コンセプトから生まれるデザイン

ラベルデザインといっても、デザイナーが1から作り始めるわけではありません。
まずは、どんなお酒でありたいか、どんな人に、どんな時に飲んでもらいたいかを話し合います。

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「Any.」という商品名が決まった時、宏和日立酒造のメンバーは「Any.」はこんな酒であって欲しいと考えました。

飲む場所、飲む人、飲むタイミング。
これらを限定せず、いつでも、どこでも誰とでも飲めるお酒でありたい。
Anyは飲む人を選ばない、どんな日本酒よりも、優しいお酒にしたい。

「Any.」という言葉の優しさ、そしてこのコンセプト。
これらを元に、デザインが行われることになりました。

「多くの人に愛されるお酒でいてほしい」

デザインを担当したのはデザイナーのShingo Kurono氏。

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1985年生まれ。2006年フランスへ渡りデザインを学ぶ。帰国後国内のデザイン事務所で経験を積み、2015年独立デザインスタジオhumar.(ユーモア)に参加。ジャンルレスにデザイン活動をしている。作る側とそれを使う側の新しいコミュニケーションを模索するTHE HOTEL LINKSや、お茶ブランドTheThéを運営。

黒野さんに、「Any.」のデザイン制作秘話を伺いました。

「制作の話を受けたときは、新しい切り口の日本酒が生まれるんだとワクワクしましたね。『Any.』という名前を聴いて、"佇んでいる"柔らかな印象を受け、デザインにもそれを反映させたいと思いました。」デザインを決める上で、その銘柄の語感も大事にしたいと語る黒野さんは、宏和日立酒造に実際に足を運びました。

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「蔵に行った時に、タンクに手書きで製造過程の文言が書いてあったんですよね。そのシズル感を大事にしたいと思いました。造りの現場を見たことで、デザインを先行させすぎることなく、商品そのものを自信を持って打ち出したいと考え、派手なデザインにはせずにボトルに直接手書きでロゴを書くことにしました。お酒自身に自信があるからこそダイレクトに中身が見えるものに。力強いデザインのラベルが多い中、引いて引いて引くからこそ、シンプルさで逆に目立つデザインにしようと思いました。」

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黒野さんが蔵でみたタンクの写真

シズル感を最大限に表現した、透明感のあるデザイン

そうして黒野さんから宏和日立酒造に出された提案書がこちらです。

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宏和日立酒造の方の反応は・・・!

■ 社長:長岡泰山氏

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「紙のラベルが貼られていない洗練されたデザインのため、店舗の棚に並べたときに「これは何だろう」という好奇心からボトルをついつい手に取ってしまう斬新なデザインだなと感じました。しかしその反面、周囲に溶けこむデザインでもあります。スルーされてしまい、手に取ってもらえないのではないか?という不安も正直ありました。しかし今回はこれまでにない新しい消費者の開拓という目的があるため、どうせやるなら思いきり振り切ろうと思い、このデザインにしよう!と決めました。

紙のラベルを使わずにカッティング技術のみで「Any.」らしさを表現するというのは、宏和日立酒造にとっても初の試みでしたが、新たな挑戦としてこの提案書を承諾し、制作に移りました。

本邦初公開の「Any.」ボトルデザイン

「Any.」という名前が決まってから四ヶ月。ついにデザインが完成しました。

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現代の食卓にも映え、飲み終えてもボトルそのものがインテリアとして使えそうな透明感を持っていますね。なお、瓶がほぼ透明なので、配送時には紫外線カットの袋にいれて管理を行います。

SAKETIMESでも多くの日本酒を見てきましたが、これほどまでに洗練されたデザインのものは見たことがありません。これまでと違うことを行うのは、思っているよりも難しいことです。宏和日立酒造には「二人舞台」という既存のメインブランドがあり、国内外問わず高評価を得ているわけですから、あえて”新しい挑戦”をする必要はないのです。

しかし、宏和日立酒造の方々は「もっと多くの人に日本酒の魅力を感じてもらうためには、自分たちからお客様に提案しつづけなければならない」という考えのもと、誰よりもお客様のために今回の「Any.」のプロジェクトをスタートさせたのです。コンセプトの段階から、お客様目線でいるということは簡単なことではありません。


現在「Any.」は宏和日立酒造にて仕込みを行っており、4月ごろに完成の予定です。

次回は、宏和日立酒造の蔵のレポートと造りの責任者である長岡常務のインタビューをお伝えいたします!


(取材・文/SAKETIMES編集部)

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