こんにちは!SAKETIMESライターの三浦 環です。
今回は9月26日から公開となるドキュメンタリー映画「一献の系譜」をご紹介します。
映画を観に行かれる方はこちらの記事をご覧いただくと映画への理解がさらに深まりますよ!

「一献の系譜」はどんな映画?

この映画は、日本酒を造る職人であり、その蔵の酒造りの最高製造責任者である「杜氏」と能登の酒造りを追った作品です。監督は石井かほりさんナレーションは女優・タレント等で活躍されている篠原ともえさんが担当されています。

杜氏のなかでも特に「能登杜氏」と言われる、能登の地域で受け継がれている酒造りの伝統の技を持った人々に焦点が置かれ、杜氏や蔵人の酒造りに対する情熱や仕事の厳しさが淡々と、そしてまっすぐに伝わってくる作品です。雪を踏む音、風の音、波の音、自然とその中で暮らす人々の生活の音がリアルに感じられることもこの映画の醍醐味の1つであると思います。

「一献の系譜」は4月に金沢上映が行われ異例の大ヒットを記録しました!最終日には準備されていた90席が満員、補助席を使うほどの大盛況だったようです。9月26日からは東京での上映がスタート、更に全国上映へと展開されます。

sake_g_cinema_ikkonnokeifu1 (1)

能登杜氏四天王全員を師とする永遠の挑戦者 坂口幸夫杜氏

sake_g_cinema_ikkonnokeifu2 (1)
初の女性能登杜氏の藤田晶子さん

・プレス試写会にて

8月末に東京にてプレス試写会・一般特別試写会・能登フェスというイベントが同日に開催されました。一般試写会では15組30名限定で多数の応募のなかより抽選で参加者が選ばれました。

sake_g_cinema_ikkonnokeifu3 (1)

監督 石井かほりさん

~監督 石井かほりさん~プレス試写会の挨拶より

映画を撮るきっかけ

 2009年、石井さんは能登を舞台としたドキュメンタリー映画 「ひとにぎりの塩」を完成させた後、能登の現地ツアーを組み、能登自体を知ってもらおうという活動をされていました。それを知った奥能登の酒蔵関係者の方が、映画という切り口の中で地域を照らすことができるのだと感じ、「もう一度、映画で能登に光をあててください。」と依頼したことでこの 『一献の系譜』 は制作されることとなりました。

厳しさを乗り越えた撮影

 撮影は2012年から2年半かかり、撮影時間は300時間に及びました。体力がなかなかついていかなかったというほど日本酒造りは大変な現場で、下見の現場で倒れたことも、と語る石井さん。酒造りにかける杜氏さんたちの命懸けの作業の中で、少しずつ作品づくりにおいてもその精神性が乗り移ったかのようになり、負けてたまるか、という気迫で撮られたとのことです。

sake_g_cinema_ikkonnokeifu4 (1)

1人1人の生き方を見つめる目線

 能登杜氏四天王と呼ばれる4人の有名杜氏を中心とし、その4人全員を師として技を継ぐ現役トップの2人の杜氏、その下に続く若手杜氏、そして蔵の後継者や若き蔵人などの1人1人の言葉や考えなどをまっすぐに追った目線で撮影されています。それぞれの生き方が映し出され、思わず自分の生き方も考えさせられてしまう、それほどの気迫を1コマ1コマから感じました。

sake_g_cinema_ikkonnokeifu5 (1)
能登杜氏四天王全員を師とするミスターパーフェクト 家 修(いえ おさむ)杜氏

映画を見る前に…知っておくとより理解が深まること

能登杜氏

 代表的な杜氏集団の1つで、能登流と言われる流派に属しています。全国には他にも特定の地区を発祥とする杜氏集団が多数存在します(三大杜氏として南部杜氏・越後杜氏・丹波杜氏が有名)。その杜氏を名乗るのにはその土地でしかお酒を造れないというイメージを持たれた方もいるかもしれませんが、流派と認識すると分かりやすいかと思います。その流派の独自の技術を受け継がれ、杜氏として認められて他県の蔵で活躍している方もいらっしゃいます。

能登杜氏四天王と銘柄

中三郎(なかさぶろう)氏・・・「天狗舞(てんぐまい)」石川県
三盃幸一(さんばいこういち)氏・・・「満寿泉(ますいずみ)」富山県
波瀬正吉(はせしょうきち)氏・・・「開運」静岡県
農口尚彦(のぐちなおひこ)氏・・・「菊姫」、「常きげん」、「農口(のぐち)」
石川県
波瀬正吉氏はこの映画の撮影の前に亡くなられており、映画の中では写真で登場します。切ない気持ちにもなりましたが関わり合ってきた方々からその暖かい人柄が伝わってきました。

能登の文化・自然

「あえのこと」・・・見えない田の神があたかもその場にいるかのようにして、家に迎えて食事や入浴などでもてなし、1年間の労をねぎらう行事です。

sake_g_cinema_ikkonnokeifu6 (1)

こちらは映画の中であえのことを映し出す一場面

能登の里山里海・・・そこに生活する人々の手が入りながら、能登の自然は豊かに保たれており、世界農業遺産にも認定されています。
能登の文化などの参考に能登酒蔵学校のレポート記事もどうぞご覧下さい
第1回奥能登酒蔵学校に参加しました!

この映画は自分の生き方、仕事に対する自分の向き合い方、ふるさとの良き部分を見直すきっかけともなることでしょう。日本酒に詳しくない方も映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか?

「一献の系譜」公開情報

9月26日より、新宿武蔵野館(東京JR新宿駅中央東口近く)にて公開!
新宿武蔵野館HPはこちらから→ http://shinjuku.musashino-k.jp/

 

◎「一献の系譜」HPはこちらから→ http://ikkon-movie.com/

 

【関連】奥能登清酒の魅力を解説!6銘柄を飲み比べてみた
【関連】【石川県奥能登酒蔵学校】奥能登清酒の魅力を発信!

日本酒の魅力を、すべての人へ – SAKETIMES