こんにちは、日本酒指導師範&酒伝道師の空太郎です。

最近、日本酒を造る際に使う酵母に清酒用酵母ではなく、あえてワイン用酵母を使って新商品をリリースする酒蔵が増えています。

商品化しているのは、

・仙禽(せんきん)
・鳳凰美田(ほうおうびでん)
・陸奥八仙(むつはっせん)
・鏡山(かがみやま)
・三井の寿(みいのことぶき)
・福千歳(ふくちとせ)

など本来の日本酒でも人気を確立している酒蔵が多いのが特徴です。

しかも、売れ行きは好調。
ワイン酵母酒はちょっとしたブームとなっています。

その背景を探ってみたいと思います。

90年代にも存在していたワイン酵母酒

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実はワイン酵母を日本酒造りに採用する試みは1990年代にも相次ぎました。そのなかには今をときめく「獺祭」で売り上げを伸ばしている山口県の旭酒造の名前もありました。

1992年に酒米の最高峰の山田錦とワイン酵母の組み合わせで発売したのです。

ほかにも神南酒造(愛媛県)、太冠酒造(山梨県)、御代桜醸造(岐阜県)などが続々と商品化しました。

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しかし、そのときはどこの酒蔵のお酒も売れ行きは芳しくなく、今ほど大きなブームにはなりませんでした。

この時期、日本酒人気はワインや焼酎ブームに押され気味でした。

そんな状況を打破すべく投入された新商品の1つがワイン酵母酒でした。

さらに、当時、淡麗辛口の日本酒が主流であったため、酸味が特徴のワイン酵母酒は消費者には好まれなかったようです。

2000年以降に再び息を吹き返したワイン酵母酒

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2000年以降、若い蔵元後継者たちの活躍と台頭で、日本酒は息を吹き返してきました。

特に2005年を過ぎてからは、次々と登場する意欲ある酒蔵たちが、いろいろな造りに挑戦することで日本酒の酒質を多彩なものにしてきました。

酒質の多様化により飲み手の選択肢が増えました。それが最近の日本酒人気の理由の1つです。

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特に新しいタイプの日本酒として大きな流れになっているのが酸味と甘味のバランスで個性をアピールする甘酸っぱい酒です。

酵母というのは糖分を摂取することでアルコール(エタノール)と炭酸ガスを発生させますが、それだけでなく、香気成分や有機酸(酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アミノ酸)もつくります。

清酒酵母も温度管理などの工夫によって酸味を増やすことができます。

しかし、より多彩な酸を求めるのであればワイン酵母の方が便利です。

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実際に各蔵のワイン酵母酒を飲んでみると、多彩な酸味と甘味の抜群な相性により、より個性的な日本酒に仕上がっています。

ワイン酵母は低温に弱く、一方で温度が上がってくると発酵が急速に活発になるなど、清酒酵母とは随分性格が違いますが、酒蔵の努力と経験により、狙い通りの酒質の酒ができあがるようです。

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新商品の多くは小ぶりの瓶に詰めて、ラベルも“日本酒らしくない”印象です。

多くはアルコール度数もワイン並み(12~13度)なので、アルコールのビギナーである若い人たちに受け入れられやすいと思います。

洋食にも合いますので、イタリア料理やフランス料理のお店にも置いていただきたい。

空太郎は自宅でピザを食べるときは必ず、甘酸っぱい日本酒と合わせています。

是非、ブームにとどまらず、ワイン酵母酒が日本酒の1つのラインナップとして定着してほしいと願っています。

 

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