こんにちは、日本酒指導師範&酒伝道師の空太郎です。

本日は長野県の酒販店3軒の意欲的な挑戦をご紹介したいと思います。

3軒の店主さんたちは、「長野で日本酒を売っているんだから、売るのは県外の酒ではなく、地元長野のお酒を発掘して、お客様にどんどんアピールしていきたい」との考えで意気投合して、すでにいろんなコラボレーションをしています。

仕込みタンク1本をまるごと買い取り

そして今回は、酒蔵に、「仕込みタンク1本まるごと買い取るので、美酒を造ってほしい」と頼みました。

売れ残りのリスクは承知のうえで、「我々の地酒への熱い思いを伝えていきたい」と決断し、この春からスタートしています。

今回の挑戦に至るまでの経緯や今後の意気込みについて、3軒の店主さんとお酒を造った酒蔵さんにお話を伺いました。

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長野の酒販店3軒がスクラム

主役は、地酒屋 宮島酒店(上田市)の宮島国彦さん、酒乃生坂屋(千曲市)の若林数矢さん、酒舗清水屋(小海町)の小山英浩さんの3人です。

そして、お酒を醸したのは古屋酒造店(佐久市)の蔵元杜氏、荻原深さんです。

今春デビューしたお酒の銘柄は「信州醸熱タンクシリーズ 和和和」です。

仕込みタンク一本分を買い取ったことをラベルに表現しようと、表ラベルは瓶をぐるっと一周し、色は仕込みタンクと同じ深緑色。

さらには仕込みタンクの清酒の取り出し口である「呑み」や製造番号、メーカー名なども入っており、眺めていると段々、本物の仕込みタンクの前にいるような錯覚を起こしそうです。

さらには裏貼りには次のような文句が。

熱く醸す。それが醸熱。その酒を、タンク丸ごと情熱で伝える。ならば、熱く喰らおう!その酒を。「冷やでもヤケドするぜ!」

3人の燃え盛る情熱が伺えますよね。

仕込みの規模は一升瓶換算で350本ですので、単純に計算して1軒で120本近くを売らなければならないので、販売力に自信がないとできないと思われます。

造ったお酒は3つに分けて、3月に活性純米酒を発売。続いて4月下旬に純米無濾過生原酒を売り出しています。

期待以上の反響で売り上げも順調だそうです。

最後に9月には1回火入れのひやおろしを販売する予定でいます。

地元の地酒蔵への熱き応援に注目

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3人は10年以上前から、「地元の人に長野のお酒の良さを知ってほしい」と酒蔵と一緒に活動を展開しています。

7年ほど前には「信州醸熱和酒の会」という集まりができ、3人も加わって、活発な情報交換をしています。

そんな活動の中から誕生したのは、3軒が共同企画する「秘密の酒 頒布会」です。

2010年から始まった頒布会は、地元長野の酒蔵に、「市販酒とは別にひと手間かけてもらったお酒」を提供するようにお願いし、快諾してくれた14軒(各1本)のお酒を春から暮れにかけて予約した人に頒布するというものです。お客はお酒が届くまで、どこの酒蔵のどんなお酒がやってくるか、わからないので、わくわくドキドキしながら到着を待つという趣向です。

評判は上々で、年々注文数が増えています。

3軒が酒蔵にさんに趣旨を伝えるメッセージの中には、長野への熱い思いが並びます。

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「信州地酒のファンの方へのスペシャルサンクスな1本にしたい」

「信州以外の地酒がお好きな方に信州地酒の凄さ・良さを再認識していただきたい」

「飲食店さんに信州地酒を更に取り扱って頂くきっかけにしたい」

「同業他社にも信州地酒の拡売につながる刺激剤にしたい」

「信州地酒が日本酒の頂点と言われるような評価や機運を醸成していきたい」

頒布会は今年で6年目になり、軌道に乗ってきたことから、「次なる挑戦」として選んだのが醸熱タンクシリーズだったのです。

第1弾のお酒はどこの蔵に頼もうかとなった段階で、宮島さん、若林さん、小山さんの意見は「和和和」のブランドで実績のある古屋酒造店で意見は一致。

荻原さんも彼らの熱い提案に快く応じました。

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ただし、今回のお酒に求める酒質のイメージは、

3人それぞれまったくバラバラでした(笑)」と荻原さん。

でも、そこはプロ。

3人の要求の最大公約数をチャレンジタンクとして造りに着手。

1月に造りを始め、3月12日に搾りました。

荻原さんは「思ったよりも酸が出ましたが、米の膨らみをうまく引き出せて、期待に応えられたと思います」と話しています。

3人も、

「期待通り。特に活性純米は理想に近かった」(若林さん)、

爽やかで瑞々しいあじわい」(小山さん)

と、納得の表情でした。

まだ、ひやおろしが発売になっていないので、今回の企画の総括には早いかもしれませんが、3人は十分手ごたえを感じており、

「僕たちの目的を達成するには、秘密の頒布会に加えて、信州醸熱タンクシリーズを広めることも重要だと思います。今後は古屋酒造店さん以外にも頼んで、シリーズを増やしていきたい」(宮島さん)

と意気込んでいます。

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こうした試みが長野の地酒好きをさらに増やしていくことにつながるといいですね。

空太郎も呑んで、応援します。

みなさんも是非ご賞味あれ。

 

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