愛知県に住んだ人なら誰もが一度は耳にしたことがある、「つけてみそかけてみそ」のCM。「♪豆腐、味噌カツ、つけてみそ かけてみそ」という軽快な音楽をご存知の方も多いのではないでしょうか。

名古屋ではおなじみの味、株式会社ナカモの「つけてみそかけてみそ」は、じっくり寝かせたコクのある赤だしをベースに、上品な甘さに仕上げた味噌ダレ。味噌カツ、みそ田楽、焼きナスなどにこれをかけると、あっという間に甘辛い名古屋の味になるという万能調味料です。

加藤清正と水野専務

そんな「つけてみそかけてみそ」に合う日本酒が、金虎酒造の「KCT2020」です。

このお酒は、金虎酒造の「KCT(キントラチャレンジタンク)」として造られたもの。毎年チャレンジテーマを設定して、従来の金虎酒造のラインナップとは異なるコンセプトや製造手法の日本酒を限定で製造するシリーズのひとつです。

味噌ダレと日本酒、その不思議な組合せが生まれた背景からKCTにかける酒蔵の想い、そして「2020KCT」の味わいまでお伝えします。

歴史ある日本酒蔵と味噌蔵のコラボレーション

170年の歴史を持つ名古屋市・東区の金虎酒造は、「名古屋を醸す」をモットーとしている蔵。今年の全国新酒鑑評会では、4年連続金賞を受賞した実力のある酒蔵です。その名前には、「虎の毛が美しく生え変わる様に変革を続ける日本酒に」という想いが込められています。

また、地元のみなさんに日本酒を楽しんでいただくため、ジャズイベントや日本酒と食事の組み合わせを紹介するイベントを開催するなど、地域貢献も行っている蔵でもあります。

そんな金虎酒造とコラボしたのが、約180年余りの歴史を持ち、主に赤味噌を取り扱う株式会社ナカモ。その始まりは麹屋で、最初は名古屋の味・味噌煮込みうどんの隠し味である甘口の白味噌づくりが主体でしたが、徐々に赤味噌も手掛けるようになった醸造会社です。

イベント

株式会社ナカモが、日本が誇る発酵食品「みそ」の伝統を守りつつ、より多くの方々に楽しんでいただけるようにと開発したのが、「つけてみそかけてみそ」です。

じっくり寝かせた赤味噌をベースに上品な甘さが特徴的で、どんな料理もすぐ名古屋風な味わいにします。豆腐や味噌カツに始まり、ふろふき大根、焼きナス、おでんとどんなレパートリーも一気に名古屋の味にしてくれる味噌ダレ調味料です。

名古屋の食文化に合わせた食中酒を目指して

名古屋人にはなじみのある金虎酒造の日本酒とナカモの「つけてみそかけてみそ」ですが、なぜ、この2社がコラボレーションすることになったのでしょうか。その経緯について、金虎酒造 専務の水野さんにお話を伺いました。

蔵にて

─ 株式会社ナカモさんとコラボされたきっかけは?
「名古屋市内の酒蔵として、名古屋を真正面から捉えた日本酒を醸したいという想いがありました。毎年1度、金虎チャレンジタンク(KCT)と称して、テーマ性を持ち、普段とは異なる製法で醸す少量仕込みにチャレンジしているんですが、その中で地元の食文化に合わせた食中酒、ということで検討を始めました。

『名古屋といえば?』といろいろと議論する中で、私たちの慣れ親しんだ『つけてみそかけてみそ』に行き着き、先方へご相談したらあっという間にコラボが決まりました。何かご縁があったんでしょうね。またナカモさんに加え、この酒づくりには『名古屋おもてなし武将隊』の加藤清正公も参画いただきました。こちらも4年ぶりのコラボです」

─  地元の食の中でも、とてもめずらしい組み合わせですね。
「普通なら『味噌に合う』や『甘辛い味に合う』という、もう少し幅広い合わせ方をすると思います。ですが、我々の場合はこのチャレンジタンクが学びの場でもあるので、毎年杜氏とも相談してやりたいことやってみる、というのが基本なんですよね。

こんな尖った組み合わせも少量仕込みだからこそできるアプローチかなと思います。やはり定番商品のものより手が掛かりますし、味や評判が良くても『正直、お酒を醸すのが大変過ぎて心が折れそうになるので、同じものは造れない、造りたくない!』と思うこともあります(笑)。

でも、毎年チャレンジタンクを待っていてくださる方々がいらっしゃいますし。もっと日本酒の可能性を広げたいというチャレンジ精神で、毎年違うテーマでチャレンジタンクを続けています」

─ 過去のチャレンジタンクから商品化されたものもあるそうですね。
「2019年のチャレンジタンクでお披露目した『2019a』というお酒が評判が良く、今では季節限定の定番商品となりました。テーマは、食中酒に合う低アルコール日本酒でした。白麹仕込みでお米の甘みとクエン酸の酸味が爽やかなものに仕上がりました。商品化するにあたり、ラベルもネーミングも一新しています」

KCT2019

─ チャレンジタンクのラベルも美しいですね。デザインへのこだわりは?
「こちらは三重の画家・佐藤肇さんが運営するアトリエ・エレマン・プレザンで、ダウン症の方々が描かれたものなんです。毎年違う方が描かれた作品から、その年のチャレンジタンクのイメージに合うものをラベルとして使わせていただいています。

金虎酒造の看板商品である『虎変(こへん)』の題字も、同じくダウン症で紺綬褒章受章者の書家・金澤翔子さんのものです。絵も書のどちらも、ダウン症の方々が生み出す作品は誰にも真似できない稀有なセンスと人々の心に訴えかけるものがあると感じます。

私たちも酒造りを通じてお客様に想いを発信している立場ですが、同じように彼らの素晴らしい才能をより多くの方に知っていただける機会になると思い、ラベルをお願いしています」

常に世の中にとって新たな幸せを提供できることを考え、地元を巻き込み、楽しみながらチャレンジされているのが印象的でした。

「つけてみそかけてみそ」と日本酒のペアリング体験

2020年1月8日(水)〜1月14日(火)には、名古屋三越の地下1階にある「ラ・カーブ」のイベントスペースで「KCT2020試飲試食会・販売会」と題したイベントが開催されました。会場は、落ちついた洋酒・和酒売り場の中で、お酒が楽しめるスペースです。

おでんとKTC2020

金虎チャレンジタンク「KCT2020」を「つけてみそかけてみそ」をかけたおでんとあわせていただきます。

「KCT2020」は、華やかな香りに続き、お米のしっかりのした味わい。余韻が長めで、単体でいただくとかなりしっかり強めな主張のあるお酒という印象。

それが「つけてみそかけてみそ」をかけたおでんと一緒にいただくと、みその甘辛さに負けない甘み、出汁ともしっかりマッチしていて後キレもよく感じます。

KCT2020ラベル

麹米に使用されているのは愛知県の酒造好適米「若水」。この甘みの秘密は仕込み中の麹の使用比率(麹歩合)を通常の2倍にすることだそうで、濃醇な味噌に負けない味わいが引き出されています。

「KCT2020」に合わせて楽しめそうな他のお料理や食材を水野専務に伺うと、おすすめは「生チョコ」。しっかりした濃厚さ、ゆっくり溶ける口溶けとも合うそうです。

会場パネル

会場には「KCT2020」完成までの軌跡を示したパネルも用意されました。少量仕込みと言えど、醸すお酒の方向性を決めるまで悩み、愛知食品工場技術センターに何度も足を運び試作を繰り返したのだとか。妥協せず酒質を作り上げた経緯を感じることができます。

イベント期間中には、酒造りに携わった加藤清正公のトークショーも行われました。

イベント意見メモ

「KCT2020」を飲んだお客様からのコメントが会場の壁面にどんどん貼られていきます。そのコメントを見て、満足気な笑みを浮かべる金虎酒造の水野専務。

「お客様から直接ご意見をうかがえて、みなさんがチャレンジタンクを堪能されている姿を見られるのはリアルイベントならではですね。こうしてチャレンジタンクを待ち望んで下さる方々がいて、この声を聞いてまた来年のKCTはどんなお酒を醸そうかを考えるのはとても楽しいです。地元の酒蔵としてもっと名古屋を賑やかにしたいきたいですね」

加藤清正米掘り

名古屋の懐かしい味わいを真正面から捉えて醸した金虎酒造の「KCT2020」。みなさんも一度味わってみませんか。

◎商品概要

(取材・文/spool)

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