2016年で13回目の開催となる「長野の酒メッセ in 東京」。信州のお酒も認知度が高くなり、年々、来場者数が増えてきました。今年も大盛況となったこのイベント、蔵元の話も交えて紹介します。

酒メッセをきっかけに、信州の良さを広めたい!

イベント立ち上げからPRを担当している田中隆太さんにお話を伺いました。

もともと長野県内で行われていた日本酒のイベントを、もっと大きく県外へアピールしたいと思ったのが開催のきっかけだそう。準備に2年をかけて企画し、初めは小さな会場を借りてスタート。30蔵ほどの参加でしたが、それでも600人の来場者がありました。

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「東京でもできる!」と実感した田中さんは、酒造組合に予算を組んでもらい、翌年から都内のホテルで開催するようになりました。今年は品川プリンスホテルでの開催。会場も広くなって、蔵元の方々も最初は戸惑っていたようですが、はじまってみると会場は大勢の参加者で埋めつくされました。

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長野県酒造組合会長の今井用一さん

信州は小さな蔵がほとんどですが、全国的にも蔵数は多く、82の酒蔵があります。しかし、山間部では限界集落が増え、県内の人口も減少。地元に依存せず、エリアを広げていくことが命題となりました。とおっしゃっていました。信州は農産物が豊富であり、加工品も多い。「地元の食材を使って地元でつくった完成品を出せるのは信州の強み。イベントを通じ、日本酒も信州の商品も知ってもらえれば」と語ってくださいました。

信州61蔵が参加!話題の「SAKU13」も大集合

今回参加したのは61蔵。全部は紹介しきれないので、いくつかピックアップいたします。

田中屋酒造店

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PR担当の田中さんが蔵元である田中屋酒造店の銘柄は「水尾」。「基本的に新しいものよりも、毎年同じものを同じように造り続けていく」という方針だそうです。

ただ、常に同じ味のお酒を造っても、実はに同じ味と認識されず、「今年のお酒はいつもと違う」とわれてしまうのだそう。確実に美味しさを上げていかないと、同じ味と納得してもらえないのでしょうね。毎年同じ商品を提供していく難しさもあるでしょう。今年は冷蔵施設を新たに導入したので、保存環境が上がったそうです。その分「今年のお酒も変わらず美味しいね」と言ってもらえるのではないでしょうか。

佐久の花酒造

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杜氏の井上さん。「今年のお酒の出来はまずまず」とおっしゃっていましたが、自信に満ちた顔をしています。銘柄が多い佐久の花酒造なので、苦労も多いと思いますが、佐久の花らしい香り高くすっきりキレのよいお酒が並んでいました。

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今年の新作は「八重原産ひとごこち」で醸した純米大吟醸。ひとごこちは信州の酒米で、使用している蔵も多いですが、八重原産の出来がとても良く、粒が大きく仕上がっていたため、大吟醸で仕込んでみたそうです。

伴野酒造

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伴野酒造の蔵元・伴野貴之さん。1996年に発売した「ミッシェル」が大人気となり、東京で「澤の花」を置くお店も増えました。少人数で造っているため、仕込み量が増え、仕込み日数も長くなったことでしょう。今年の出来はどうですかとお聞きしたら「来年はガツンといきますよ」という返事でした。今年はその助走だとか。これは次の造りが楽しみですね。

宮坂醸造

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信州のお酒と言われて、まず思い出すのは宮坂醸造の「真澄」という方が多いでしょう。東京でも目にする機会は少なくありません。若き蔵元、宮坂勝彦さんおすすめの新作「みやさか 美山錦」は2005年に発売されたみやさかシリーズを2016年にリニューアルした一品。7号酵母の原点に帰り信州の美山錦で醸すお酒は、熟成されるとさらに美味しくなっていくでしょう。

SAKU13

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佐久市にある13の蔵がいっしょに酒造りをするという企画が行われています。その「SAKU13」と名付けられたお酒は今年で3回目。初回は「澤の花」の伴野酒造、翌年は「明鏡止水」の大澤酒造、そして2016年は黒沢酒造に集合して造られました。

今はこうして蔵同士の交流もあり、若い世代が新しい企画をしていく。日本酒の消費量が落ちている現状がありますが、こうして若い蔵元たちの顔を見ていると、日本酒の未来も悪くない!と確信します。

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SAKU13のイベントが、6月4日(土)に銀座NAGANOで行われるそうなので、お出かけしてみてはいかがでしょうか。

長野のゆるキャラ・アルクマも登場!

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信州のキャラクター「アルクマ」。必ずザックを背負って歩くクマ、なんだそうです。毎回いろいろな被り物をして登場してくれるので、この日はお猪口や徳利の被り物をして欲しかったなーと思ったり。

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これだけの信州のお酒が並ぶと圧巻です。

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芙蓉酒造のおすすめはラベルもネーミングも可愛い「よよいの酔」。純米原酒ですが、原酒の割には飲みやすくて香り高い、旨みのあるお酒です。

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「信濃鶴」は、全量純米酒で醸している酒蔵。「今年は大きなトラブルもなくスムーズに酒造りができた」と蔵元杜氏の北原さんはおっしゃっていました。今回は、新酒のしぼりたてが提供されていました。発泡していてフレッシュさがあり、それでいて「信濃鶴」の良さが滲み出ているお酒です。

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岡崎酒造がご夫婦で醸す「亀齢」は、銘柄名と酒質が一致するお酒。上品で透明感がある、美しいお酒です。

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イベント前半は飲食店や流通関係者限定の参加ですが、17時以降は一般の方も参加されます。こうなるともう、あちらこちらで千鳥足の方も出てきて、大きな盛り上がりとなってきました。

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終盤は、気に入ったお酒を燗にして、ずっと呑んでいる方も。一般参加者が自分のスタイルで楽しめるのも、このイベントならではですね。

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品川プリンスホテルでの初めての開催でしたが、充実した内容の濃いイベントでした。特に小さい蔵は、蔵元ひとりで準備や提供などすべてを行わなければならず、とても大変そうでした。しかし、参加者のみなさんは楽しみながらも熱心に、お互いの交流を深める良い機会となったようです。

これを機に、信州のお酒もさらに盛り上がり、そして日本酒業界全体が大きく飛躍するよう願います。

(文/まゆみ)

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